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第五十五話 人気店?
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「美味しいわぁ、このミルクのアイスクリームもコクがあるし、ミンティー茶が入っている方も後味が爽やかね。特にこのレッドベリーのジャムが入ったアイスクリーム。甘酸っぱさとミルクの優しい甘さととっても合ってる」
「これ、カリンちゃんが考えたんでしょ? 王都にもこんな氷菓子無いわよ」
「本当だね。僕もこんな美味しいの王都でも食べたことがないよ」
フランさんとエミュウさんがアイスクリームを食べて絶賛した。何故かカーティスさんも交ざってまた食べているけどお腹は大丈夫なのだろうか?
少しすると見覚えのあるお爺さんが顔を出した。ゼフィロ爺さんだ。
「ほうほう、ここが嬢ちゃんの店か。一番端っこのせいで椅子がないんだな」
みんなが立ってアイスクリームを食べているのを見てゼフィロ爺さんが言った。
「ごめんなさいゼフィロ爺さん。そうなの、ここには椅子がないのよ。中央の飲食スペースまでも遠いし、だから持って帰って食べても良いわよ。直ぐに溶けないようになっているから大丈夫だと思うの」
「なるほどな。どれ、嬢ちゃん、ちょっと待っておれ」
そう言ってゼフィロ爺さんは広場の中央に向かって足早に歩いて行った。
あれ? 行っちゃった。どうしたんだろう?
私が不思議に思っているとゼフィロ爺さんは直ぐに戻ってきた。しかも後ろには椅子や丸テーブルを抱えたガッシリとした男の人が三人。
「ほれ、この嬢ちゃんの店の前にそのテーブルと椅子を置いてくれ。そうだな、あと2セットは必要だな」
その声に反応するように男の人達は次々とテーブルと椅子を設置して行く。
先ほどよりも強くなってきた太陽の日差しが容赦なく降り注いでいる。そのせいか、作業を進める彼らの額には汗が滲み次第に頬や首を伝って流れて行くのが見えた。
男の人達が立ち去った後には私の店の前に三つの丸テーブルとそれぞれに四脚ずつの椅子がセットされていた。その上には太陽の日差しを遮るための四角いパラソルもちゃんと設置されている。
「あの……ゼフィロ爺さん、これいいんですか?」
「ああ、いいんだ。あやつらは役場の人間で儂の孫達だ。こういう時に使わんでいつ使う。嬢ちゃんの店にはテーブルと椅子があった方がいいだろう?」
ゼフィロ爺さんの言うとおりだ。広場の中央には屋根付きの飲食スペースが設置されているが、私の店からはちょっと遠い。
この店の前にも少しでもいいから椅子ぐらいあれば良いのにと思っていたところだ。
折角だからゼフィロ爺さんの好意はありがたく受け取ることにした。本当にこの町の人達は良い人ばかりで嬉しくなってくる。
「あの……ありがとうございます、ゼフィロ爺さん。取り敢えずアイスクリーム、食べていって下さい。さっきのゼフィロ爺さんのお孫さん達にも良かったらどうぞ」
私は、さっき汗を流しながらテーブルや椅子を設置してくれたのを思い浮かべ、お礼をしたいと思って言った。
ゼフィロ爺さんは私の言葉を聞いて直ぐにさっきの男の人達を呼びに行った。
「おーいお前等、嬢ちゃんがお前等にも氷菓子をご馳走してくれるって言っているぞ」
ゼフィロ爺さんの声にさっきの男の人達が小走りで戻ってきた。
彼らは、アイスクリームを一口食べると目を丸くして驚いた様だったが、美味しいと言ってとても喜んでくれた。
良かった。良かった。喜んで貰えると私も嬉しい。
その後には、八百屋のガンスさん、シェリーさん夫妻が子供達を連れて食べにきた。ゼフィロ爺さんに誘われたらしい。二人には子供が四人もいるようだ。野菜をたくさん持って来てくれたので私もみんなにアイスクリームを振る舞った。
四人の子供達は5才~12才で男の子三人に一番下が女の子だった。もしかしたら、女の子が欲しくて四人目まで頑張ったのかも知れない。前世でもそんな話はよく聞いたものだ。
と言っても、四人も子供がいる家は珍しかったけどね。
子供達は大きな声で「美味しい、美味しい」と言いながら夢中で食べている。
私はその様子を見て、子供達の素直な声は宣伝になることに気付いた。
だって、その声を聞いた周辺の人達が徐々に集まってきたのだから。
こうして私の店はまるで人気店の様に人で溢れた。
そのお陰で色々な物も集まった。
靴のオーダー券、干し果実、刺繍入りハンカチ、お茶、陶器など出店するそれぞれの店主が自分の店で売る物とアイスクリームを交換してくれた為だ。
私が作ったアイスクリームを幸せそうに食べる面々。
そう、こういう顔が見たかったのだ。だから前世でも今世でも美味しいものを提供するお店を開きたいと思ったのだ。
「嬢ちゃん、このアイスクリームとやらは初めて食べたが驚くほど上手いな。これを嬢ちゃんが作ったとは、嬢ちゃんは天才だな」
「ありがとう、ゼフィロ爺さん。あの、私の名前はカリンって言います」
「おお、すまんすまん。カリン、上手いアイスクリームをありがとな」
「はい、こちらこそさっきは美味しいソーセージご馳走様でした」
「おお、上手かったか、そうかそうか」
ゼフィロ爺さんは私が言うと嬉しそうに頷いていた。
「あら、ショウじゃない? ねぇ、そうでしょ。やっぱりショウよね」
快活な声の響きに導かれ、顔を向けるとショウに話しかける若い女性が目に入った。
きっとショウと同年代だろう。
緩やかなウェーブのかかった鮮やかな赤髪に薄黄色のカチューシャをした綺麗な女性は親しげにショウに話しかけていたのだった。
「これ、カリンちゃんが考えたんでしょ? 王都にもこんな氷菓子無いわよ」
「本当だね。僕もこんな美味しいの王都でも食べたことがないよ」
フランさんとエミュウさんがアイスクリームを食べて絶賛した。何故かカーティスさんも交ざってまた食べているけどお腹は大丈夫なのだろうか?
少しすると見覚えのあるお爺さんが顔を出した。ゼフィロ爺さんだ。
「ほうほう、ここが嬢ちゃんの店か。一番端っこのせいで椅子がないんだな」
みんなが立ってアイスクリームを食べているのを見てゼフィロ爺さんが言った。
「ごめんなさいゼフィロ爺さん。そうなの、ここには椅子がないのよ。中央の飲食スペースまでも遠いし、だから持って帰って食べても良いわよ。直ぐに溶けないようになっているから大丈夫だと思うの」
「なるほどな。どれ、嬢ちゃん、ちょっと待っておれ」
そう言ってゼフィロ爺さんは広場の中央に向かって足早に歩いて行った。
あれ? 行っちゃった。どうしたんだろう?
私が不思議に思っているとゼフィロ爺さんは直ぐに戻ってきた。しかも後ろには椅子や丸テーブルを抱えたガッシリとした男の人が三人。
「ほれ、この嬢ちゃんの店の前にそのテーブルと椅子を置いてくれ。そうだな、あと2セットは必要だな」
その声に反応するように男の人達は次々とテーブルと椅子を設置して行く。
先ほどよりも強くなってきた太陽の日差しが容赦なく降り注いでいる。そのせいか、作業を進める彼らの額には汗が滲み次第に頬や首を伝って流れて行くのが見えた。
男の人達が立ち去った後には私の店の前に三つの丸テーブルとそれぞれに四脚ずつの椅子がセットされていた。その上には太陽の日差しを遮るための四角いパラソルもちゃんと設置されている。
「あの……ゼフィロ爺さん、これいいんですか?」
「ああ、いいんだ。あやつらは役場の人間で儂の孫達だ。こういう時に使わんでいつ使う。嬢ちゃんの店にはテーブルと椅子があった方がいいだろう?」
ゼフィロ爺さんの言うとおりだ。広場の中央には屋根付きの飲食スペースが設置されているが、私の店からはちょっと遠い。
この店の前にも少しでもいいから椅子ぐらいあれば良いのにと思っていたところだ。
折角だからゼフィロ爺さんの好意はありがたく受け取ることにした。本当にこの町の人達は良い人ばかりで嬉しくなってくる。
「あの……ありがとうございます、ゼフィロ爺さん。取り敢えずアイスクリーム、食べていって下さい。さっきのゼフィロ爺さんのお孫さん達にも良かったらどうぞ」
私は、さっき汗を流しながらテーブルや椅子を設置してくれたのを思い浮かべ、お礼をしたいと思って言った。
ゼフィロ爺さんは私の言葉を聞いて直ぐにさっきの男の人達を呼びに行った。
「おーいお前等、嬢ちゃんがお前等にも氷菓子をご馳走してくれるって言っているぞ」
ゼフィロ爺さんの声にさっきの男の人達が小走りで戻ってきた。
彼らは、アイスクリームを一口食べると目を丸くして驚いた様だったが、美味しいと言ってとても喜んでくれた。
良かった。良かった。喜んで貰えると私も嬉しい。
その後には、八百屋のガンスさん、シェリーさん夫妻が子供達を連れて食べにきた。ゼフィロ爺さんに誘われたらしい。二人には子供が四人もいるようだ。野菜をたくさん持って来てくれたので私もみんなにアイスクリームを振る舞った。
四人の子供達は5才~12才で男の子三人に一番下が女の子だった。もしかしたら、女の子が欲しくて四人目まで頑張ったのかも知れない。前世でもそんな話はよく聞いたものだ。
と言っても、四人も子供がいる家は珍しかったけどね。
子供達は大きな声で「美味しい、美味しい」と言いながら夢中で食べている。
私はその様子を見て、子供達の素直な声は宣伝になることに気付いた。
だって、その声を聞いた周辺の人達が徐々に集まってきたのだから。
こうして私の店はまるで人気店の様に人で溢れた。
そのお陰で色々な物も集まった。
靴のオーダー券、干し果実、刺繍入りハンカチ、お茶、陶器など出店するそれぞれの店主が自分の店で売る物とアイスクリームを交換してくれた為だ。
私が作ったアイスクリームを幸せそうに食べる面々。
そう、こういう顔が見たかったのだ。だから前世でも今世でも美味しいものを提供するお店を開きたいと思ったのだ。
「嬢ちゃん、このアイスクリームとやらは初めて食べたが驚くほど上手いな。これを嬢ちゃんが作ったとは、嬢ちゃんは天才だな」
「ありがとう、ゼフィロ爺さん。あの、私の名前はカリンって言います」
「おお、すまんすまん。カリン、上手いアイスクリームをありがとな」
「はい、こちらこそさっきは美味しいソーセージご馳走様でした」
「おお、上手かったか、そうかそうか」
ゼフィロ爺さんは私が言うと嬉しそうに頷いていた。
「あら、ショウじゃない? ねぇ、そうでしょ。やっぱりショウよね」
快活な声の響きに導かれ、顔を向けるとショウに話しかける若い女性が目に入った。
きっとショウと同年代だろう。
緩やかなウェーブのかかった鮮やかな赤髪に薄黄色のカチューシャをした綺麗な女性は親しげにショウに話しかけていたのだった。
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