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番外編 逃がさないけどね ~一ノ瀬君side~ その7
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「こんな時間に突然来んなよ!もし彼女が泊まりにでも来てたら、どうするつもりだったんだよ!」
「いや。それはねーだろ。だってお前、ここ二年近く彼女いないじゃん」
「わかんねーだろ?もしかしたらお前が知らない間に、運命の出会いがあったかも知れねーじゃん!」
「…運命の出会い?ってか、ヤマケンって、そんなロマンチストだったっけ?」
「うっせー!俺は生まれた時からロマンチストだ!」
俺の悪友。『ヤマケン』こと『山本 健太郎』が俺の目の前でがなっている。
ヤマケンと俺は、高校・大学と一緒。所謂腐れ縁の仲だ。
互いに大学時代から同じ場所に住み続けているから、俺の家からヤマケンの家まで地下鉄で一駅。徒歩なら15分もしないで着く。
俺は自分の部屋を出てすぐにLINEで「今夜泊めてくれ」とヤマケンにメッセージを送った。しかし、なかなか既読がつかない。何度か電話したが、繋がらない。だから最終手段として俺はヤマケンの家まで行き、インターフォンを連打して、ドラマを観ながら寝落ちしていたというヤマケンを叩き起こした。
「んで、どうしたんだよ?急に泊めろって」
「……あのまま同じ部屋にいたら、彼女に何するか分かんなかったから」
「彼女って…。前に話してた、他の女とは次元が違うくらいイイ女だって言ってた彼女?つーかお前、彼女が来てんのに俺んとこ来たわけ?大切な彼女を置き去りにしてきたのかよ。酷くね?喧嘩でもしたのか?」
「……喧嘩できるような仲だったら、こんなに悩んでないつーの。喧嘩にもならんわ」
ヤマケンは「なんだそりゃ」と呟いた後、「良く分かんねーけど、落ち込んでんなら自棄酒付き合うぞ」と言ってキッチンに向かい、テキーラと岩塩、串切りにした檸檬を持って戻ってきた。
「これ。先月メキシコ出張に行った同僚から土産にもらったやつ。プレミアムテキーラだぞ!まあブランコだけど」
ヤマケンは自慢げにそういうと、透明の液体が入ったボトルを自慢気に見せてきた。ボトルには確かにテキーラの原料であるアガヴェ100%と書いてある。間違いなくプレミアムだ。ミクストではない。
因みに、ブランコは樽熟成をさせない無色透明の若いテキーラ。マルガリータを代表とするテキーラベースのカクテルなどに使われたりする。
樽熟成を二ヶ月以上一年未満させたものがレポサド。一年以上のものをアネホという。
若いブランコは無色透明で、原料であるアガヴェの香味が強い。逆にアネホは熟成期間が長い為、樽からうつった香味が強く、琥珀色をしており、若いウイスキーのような味がする。
その色合いからブランコはシルバー、アネホはゴールドと呼ばれる。勿論、値段はアネホの方が高い。
「テキーラなのにライムじゃなくて、檸檬かよ!」
「馬鹿だな。檸檬でも十分旨いんだっての。そういや昔、罰ゲームでよくテキーラ飲んだな。まあ今日は罰ゲームじゃないけどよ」
ニカッと笑ったヤマケンに勧められ、俺も檸檬を齧り、塩を舐めて、メキシコの伝統的な飲み方でテキーラを楽しんだ。
人は酒が回ると饒舌になる。
多分に洩れず、気が付くと俺もヤマケンに全て吐き出していた。
彼女に捨てられるかも知れない。俺がそうこぼすと、ヤマケンはザマァねーなと腹を抱えて笑い出した。
一頻り笑った後、ヤマケンは難しい顔をして顎を擦り、「なんだか随分と面倒くさそーな女だな?そんな手のかかりそうな女、さっさと別れた方がよくね?」などと信じ難い発言をした。
そんな簡単に手放せる相手じゃないんだ。例え彼女が嫌がったとしても、手放す気なんかない!そう反論すると、ヤマケンは訝し気な顔をして「お前って、そんな女に固執するようなキャラだっけ?」と首を傾げ、手に持ったテキーラを呷った。
その後、俺達は明け方近くまで飲み続けた。目が覚めた時は既に翌日の夕方。辺りが暗くなり始めた頃だった。
「いや。それはねーだろ。だってお前、ここ二年近く彼女いないじゃん」
「わかんねーだろ?もしかしたらお前が知らない間に、運命の出会いがあったかも知れねーじゃん!」
「…運命の出会い?ってか、ヤマケンって、そんなロマンチストだったっけ?」
「うっせー!俺は生まれた時からロマンチストだ!」
俺の悪友。『ヤマケン』こと『山本 健太郎』が俺の目の前でがなっている。
ヤマケンと俺は、高校・大学と一緒。所謂腐れ縁の仲だ。
互いに大学時代から同じ場所に住み続けているから、俺の家からヤマケンの家まで地下鉄で一駅。徒歩なら15分もしないで着く。
俺は自分の部屋を出てすぐにLINEで「今夜泊めてくれ」とヤマケンにメッセージを送った。しかし、なかなか既読がつかない。何度か電話したが、繋がらない。だから最終手段として俺はヤマケンの家まで行き、インターフォンを連打して、ドラマを観ながら寝落ちしていたというヤマケンを叩き起こした。
「んで、どうしたんだよ?急に泊めろって」
「……あのまま同じ部屋にいたら、彼女に何するか分かんなかったから」
「彼女って…。前に話してた、他の女とは次元が違うくらいイイ女だって言ってた彼女?つーかお前、彼女が来てんのに俺んとこ来たわけ?大切な彼女を置き去りにしてきたのかよ。酷くね?喧嘩でもしたのか?」
「……喧嘩できるような仲だったら、こんなに悩んでないつーの。喧嘩にもならんわ」
ヤマケンは「なんだそりゃ」と呟いた後、「良く分かんねーけど、落ち込んでんなら自棄酒付き合うぞ」と言ってキッチンに向かい、テキーラと岩塩、串切りにした檸檬を持って戻ってきた。
「これ。先月メキシコ出張に行った同僚から土産にもらったやつ。プレミアムテキーラだぞ!まあブランコだけど」
ヤマケンは自慢げにそういうと、透明の液体が入ったボトルを自慢気に見せてきた。ボトルには確かにテキーラの原料であるアガヴェ100%と書いてある。間違いなくプレミアムだ。ミクストではない。
因みに、ブランコは樽熟成をさせない無色透明の若いテキーラ。マルガリータを代表とするテキーラベースのカクテルなどに使われたりする。
樽熟成を二ヶ月以上一年未満させたものがレポサド。一年以上のものをアネホという。
若いブランコは無色透明で、原料であるアガヴェの香味が強い。逆にアネホは熟成期間が長い為、樽からうつった香味が強く、琥珀色をしており、若いウイスキーのような味がする。
その色合いからブランコはシルバー、アネホはゴールドと呼ばれる。勿論、値段はアネホの方が高い。
「テキーラなのにライムじゃなくて、檸檬かよ!」
「馬鹿だな。檸檬でも十分旨いんだっての。そういや昔、罰ゲームでよくテキーラ飲んだな。まあ今日は罰ゲームじゃないけどよ」
ニカッと笑ったヤマケンに勧められ、俺も檸檬を齧り、塩を舐めて、メキシコの伝統的な飲み方でテキーラを楽しんだ。
人は酒が回ると饒舌になる。
多分に洩れず、気が付くと俺もヤマケンに全て吐き出していた。
彼女に捨てられるかも知れない。俺がそうこぼすと、ヤマケンはザマァねーなと腹を抱えて笑い出した。
一頻り笑った後、ヤマケンは難しい顔をして顎を擦り、「なんだか随分と面倒くさそーな女だな?そんな手のかかりそうな女、さっさと別れた方がよくね?」などと信じ難い発言をした。
そんな簡単に手放せる相手じゃないんだ。例え彼女が嫌がったとしても、手放す気なんかない!そう反論すると、ヤマケンは訝し気な顔をして「お前って、そんな女に固執するようなキャラだっけ?」と首を傾げ、手に持ったテキーラを呷った。
その後、俺達は明け方近くまで飲み続けた。目が覚めた時は既に翌日の夕方。辺りが暗くなり始めた頃だった。
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