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貴方との恋は本気だったのだと思っています…。
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「…ご無沙汰しています、吉澤主任。何故こちらに?」
困惑しながら訊ねると、絢斗は「ちょっと社会インフラ統括部に用があってね」と寂しげに笑った。そして、「もう主任じゃないから」と力なく呟く。その悲哀漂う姿に、少しばかり憐憫の情を覚える。
「そう言えば、高遠が子供を庇って事故に遭ったって聞いたけど、大丈夫なのか?」
「はい。もうすっかり怪我も治りましたし、元気ですよ」
「そうか。なら良かった」
「ご心配いただき、ありがとうございます」
高遠に代わって礼を言う私を、絢斗はじっと見つめる。その無遠慮な視線に居心地の悪さを覚えて、私はテーブルの上へと視線を落とした。
何故声をかけてきたのだろう?気不味くなるのは目に見えているというのに。
不満を抱きながらも、間を持たせる為の話題を探す。ふと、先日事務の子達が騒いでいた話を思い出した。
「そう言えば、年末にお子さんが生まれたそうですね?男のお子さんだとか」
『おめでとうございます』と言っていいのだろうかと内心首を傾げた。
「…ありがとう。あの子は間違いなく俺の子だったよ」
私の心中を察したように、絢斗が苦笑した。
「そうでしたか。えっと…おめでとうございます?」
「何で疑問形なの?まあ、よかったとは言い難いけれどね」
絢斗は自嘲的に笑うと、ご丁寧にもDNA鑑定について私に語り始めた。
DNA鑑定には『私的』なものと『法的』なものとがあるそうだ。
『法的』な鑑定は、研究所や法律事務所等、立ち合い人の元で検体を採取するらしい。時間も費用もかかるが、裁判所にも提出できる鑑定保証書が作成されるそうだ。
『私的』鑑定は、『法的』鑑定と精度は変わらないが、検体採取を自分達で行う。それを研究所に送って鑑定するのだが、検体自体が本人の物かどうか不確かな為、保証書は作れないらしい。
一般的な親子鑑定の場合は、大抵『私的』鑑定が利用されるそうだ。
絢斗達も今回こちらを利用したらしい。
検体採取に時間を割かずに済むし、値段も安価で、鑑定に要する時間も1週間程度と短いから。
因みに『法的』鑑定の方だと、結果が出るまで1ヶ月程度要するらしい。随分な違いだ。
…それにしても、DNA鑑定がたった1週間でできちゃうなんて。文明の利器って凄い。
「よかったと言い難いって…。私はよかったと思いますよ?これで奥様とやり直せるわけですから。多少蟠りは残るかもしれませんけど、子は鎹っていいますし、きっと大丈夫ですよ」
「…俺、離婚したんだ。だから、もうあいつとやり直す事はない。あいつは元彼…いや、ずっと続いてたんだから元でもないか…とにかくその男とよりを戻した。ミュージシャンになる夢を諦められずにいた男に愛想尽かして俺と結婚したら、いつの間にかそいつがメジャーデビューしてたらしい。
俺よりも、そいつの方が大事だって言われたよ…。それにしても、あいつ、今後どうするつもりなんだろうな?その男と寄り戻す時も、そいつのせいで離婚されたんだから責任を取れって脅したみたいだし。どうしようもない女だよな。
まあ、そんな女に引っかかった俺が一番どうしようもないけどな」
絢斗は苦し気に顔を歪ませて、自嘲めいた言葉を吐いた。
経緯を考えれば、絢斗の気持ちが分からないでもない。けれど、私を捨ててまで選んだ相手なのに。あんなに浮かれていたくせに。『運命の相手』との絆はこんなにも簡単に壊れてしまうものなのだろうか。
「…お子さんはどうするんですか?どちらが引き取るんですか?」
「まだわからない。そこまで話しが進んでいないんだ。うちの両親は引き取るつもりでいるらしい。初孫だからな。だが…実際どうだろうな?あっちが引き取りたいって言い出したら難しいだろ。日本の司法は母親に有利だっていうし。
まあ、例えあっちが親権を取ったとしても、俺は親としての責任を果たしていくつもりだよ。…もしかしたら、あっちに引き取られた方がいいかもな。あの子に対する感情が複雑過ぎて、正直、可愛がれるかどうか自信がないんだ。…最低な父親だよな」
ずっと悩んできたのだろう。苦しんできたのだろう。
暗澹たる表情をした絢斗に、私はかける言葉が見つからなかった。
私だって、絢斗に裏切られた時は辛かった。信じていた人に裏切られ、何を信じればいいのか分からなかった。何もかもが嫌になって、生きている事さえ辛かった。
……けれど、私には高遠がいた。どん底にいた私を支え、癒し、救いあげてくれる高遠がいた。
だが、今の絢斗には誰もいない。
今ここで、私が耳心地のいい言葉を口にするのは簡単だ。けれど、そうするつもりはなかった。私と絢斗は既に別々の道を歩み始めているのだから。
何も言えずに俯いていると、絢斗の柔らかな声がした。
「真尋。…お前、綺麗になったな」
「そうですか?変わらないと思いますけど」
「いや、すごく綺麗になった。元々綺麗だったけど、一段と綺麗になった。それが高遠のお陰かと思うと、少し悔しいな」
曖昧な笑みを浮かべた私を見て、絢斗は傷付いたような顔をした。
「前はそんな顔しなかったのにな…。態度もよそよそしいし。自業自得だって分かっているつもりだったけど、こうして目の当たりにすると寂しいもんだな」
絢斗は自嘲的に笑って視線を落とした。
「…本当に自業自得だよな。真尋っていう、誰もが羨むような彼女がいたのにさ。それを裏切って傷つけて…。最低なクズ野郎だよな。
俺さ、真尋にずっとコンプレックスを抱いてたんだ。紗凪にのめり込んだのも、あいつが俺のコンプレックスを刺激しない女だったからだと思う。
もちろん紗凪が初恋の相手だったっていうのもあるし、再会した事に運命を感じたのも事実だ。
異性に対して初めて抱いた『好意』を、あの頃の純粋な気持ちを、俺は特別に感じてたんだ。神聖なものだと思い込んでたんだよ。いい年して馬鹿みたいだろ?」
「特別で神聖?そうだったですね。……あの…ところでそのコンプレックスって何ですか?思い当たる節がないんですけど」
「はははっ。そうだろうな。真尋が入社して来た頃、新入社員の中に芸能人ばりの美女がいるって噂になってさ。その美女の教育係に指名されたもんだから、やっかまれて大変だったよ。
最初はさ、真尋が成長していく姿を見るのが誇らしかったし、楽しかったんだ。でも、徐々にお前の存在に苦しめられるようになったんだ。
俺が俺としてではなく、『あの山瀬真尋の彼氏』って認識されるようになったから…」
絢斗の言葉に唖然とした。被害妄想が強いのではないかと心配になる。私と別れるまで、仕事ができて見目のいい絢斗は、かなり人気が高かった。絢斗と付き合い始めてから、何度嫌味を言われた事か。
……まあ、別れ方が別れ方だったから、今は皆、私に同情的だけれど。絢斗の株は大暴落して、現在絢斗は女性社員から『女の敵』認定されている。
「誰もそんな風に思っていなかったと思いますけど」
「お前が知らないだけで、実際そう言われていたんだよ。他人が自分をどう見ているかなんて、自分じゃ分からないものだからな。
実際真尋は俺なんかより優秀だろ?俺よりいい大学を出ているし、仕事でも結果を残している。その上、こんな美人でスタイルよくて、おまけに料理上手ときた。お前は、まさに男の夢を具現化したような女なんだよ。
そんな文句の付けようがないお前に、俺が勝手にコンプレックスを抱いて苦しんだ。押し潰されそうになって耐えられなくて、俺は逃げたんだ…」
絢斗の声が潤み、震え始める。目元を隠すように、絢斗は片手で顔を覆った。
「紗凪はさ、どんな些細な事でも、すごいすごいって褒めてくれたんだ。単純な奴だと思うかも知れないけれど、それが嬉しかった。うちの会社に勤めているってだけで『ザ・エリートって感じで格好いいね』って言ってくれてさ。
…同じ会社に勤めている真尋からじゃ、絶対に出ない言葉だろ?」
「そうですね…。私が貴方を苦しめていた事はわかりました。きっとそれが選ばれなかった理由だという事も…。
でもそれって、私がどうこうできる問題じゃないですよね?吉澤さん自身の問題ですよね?それに…貴方の心には響かなかったみたいですけど、私だってわりと頻繁に貴方を称賛していましたよ?素直に尊敬していましたから」
絢斗が弾かれたように顔を上げた。驚いたように目を瞠っている絢斗に怒りを覚える。
「私が見た目だけだって言われるのが嫌で、必死に努力してきた事を、貴方は知ってますよね?」
「ああ、知ってる。誰よりも知ってるさ。変な噂を払拭する為に、人の何倍も努力してきたのをずっと見てきたんだから」
「なら、何で」
「お前に非はない。非はないんだ。俺が未熟で馬鹿だっただけだ。くだらない矜持の為に、お前を裏切って、傷つけて、手放して…。 俺、本当馬鹿でさ。お前に酷い事をしたって自覚あるのに、何処か自惚れててさ。お前にとって俺は特別な存在だから、例え別れても、他の男には靡かないだろうって。…そんなわけないのにな?
まあ結局、俺が高遠にお前をくれてやったようなものだよな」
「くれてやったって…。それは違います。私はモノではないし、私が高遠を選んで好きになったんです。そこに吉澤さんの影響はありません。
あの時、貴方と別れていなかったら、今の幸せは得られなかったでしょう。だから今は素直に、貴方にとって私との恋が本気ではなかった事を感謝しています。
知ってました?貴方にとって私との恋が本気でなくとも、私はとっては初めてした本気の恋だったんです。私は本当に貴方が好きでした。大好きでした。
吉澤さん。本気で人を好きになる気持ちを教えて下さり、本当にありがとうございました」
蟠りを全て吐き出し、私はすっきりとした気分でお礼を言った。
困惑しながら訊ねると、絢斗は「ちょっと社会インフラ統括部に用があってね」と寂しげに笑った。そして、「もう主任じゃないから」と力なく呟く。その悲哀漂う姿に、少しばかり憐憫の情を覚える。
「そう言えば、高遠が子供を庇って事故に遭ったって聞いたけど、大丈夫なのか?」
「はい。もうすっかり怪我も治りましたし、元気ですよ」
「そうか。なら良かった」
「ご心配いただき、ありがとうございます」
高遠に代わって礼を言う私を、絢斗はじっと見つめる。その無遠慮な視線に居心地の悪さを覚えて、私はテーブルの上へと視線を落とした。
何故声をかけてきたのだろう?気不味くなるのは目に見えているというのに。
不満を抱きながらも、間を持たせる為の話題を探す。ふと、先日事務の子達が騒いでいた話を思い出した。
「そう言えば、年末にお子さんが生まれたそうですね?男のお子さんだとか」
『おめでとうございます』と言っていいのだろうかと内心首を傾げた。
「…ありがとう。あの子は間違いなく俺の子だったよ」
私の心中を察したように、絢斗が苦笑した。
「そうでしたか。えっと…おめでとうございます?」
「何で疑問形なの?まあ、よかったとは言い難いけれどね」
絢斗は自嘲的に笑うと、ご丁寧にもDNA鑑定について私に語り始めた。
DNA鑑定には『私的』なものと『法的』なものとがあるそうだ。
『法的』な鑑定は、研究所や法律事務所等、立ち合い人の元で検体を採取するらしい。時間も費用もかかるが、裁判所にも提出できる鑑定保証書が作成されるそうだ。
『私的』鑑定は、『法的』鑑定と精度は変わらないが、検体採取を自分達で行う。それを研究所に送って鑑定するのだが、検体自体が本人の物かどうか不確かな為、保証書は作れないらしい。
一般的な親子鑑定の場合は、大抵『私的』鑑定が利用されるそうだ。
絢斗達も今回こちらを利用したらしい。
検体採取に時間を割かずに済むし、値段も安価で、鑑定に要する時間も1週間程度と短いから。
因みに『法的』鑑定の方だと、結果が出るまで1ヶ月程度要するらしい。随分な違いだ。
…それにしても、DNA鑑定がたった1週間でできちゃうなんて。文明の利器って凄い。
「よかったと言い難いって…。私はよかったと思いますよ?これで奥様とやり直せるわけですから。多少蟠りは残るかもしれませんけど、子は鎹っていいますし、きっと大丈夫ですよ」
「…俺、離婚したんだ。だから、もうあいつとやり直す事はない。あいつは元彼…いや、ずっと続いてたんだから元でもないか…とにかくその男とよりを戻した。ミュージシャンになる夢を諦められずにいた男に愛想尽かして俺と結婚したら、いつの間にかそいつがメジャーデビューしてたらしい。
俺よりも、そいつの方が大事だって言われたよ…。それにしても、あいつ、今後どうするつもりなんだろうな?その男と寄り戻す時も、そいつのせいで離婚されたんだから責任を取れって脅したみたいだし。どうしようもない女だよな。
まあ、そんな女に引っかかった俺が一番どうしようもないけどな」
絢斗は苦し気に顔を歪ませて、自嘲めいた言葉を吐いた。
経緯を考えれば、絢斗の気持ちが分からないでもない。けれど、私を捨ててまで選んだ相手なのに。あんなに浮かれていたくせに。『運命の相手』との絆はこんなにも簡単に壊れてしまうものなのだろうか。
「…お子さんはどうするんですか?どちらが引き取るんですか?」
「まだわからない。そこまで話しが進んでいないんだ。うちの両親は引き取るつもりでいるらしい。初孫だからな。だが…実際どうだろうな?あっちが引き取りたいって言い出したら難しいだろ。日本の司法は母親に有利だっていうし。
まあ、例えあっちが親権を取ったとしても、俺は親としての責任を果たしていくつもりだよ。…もしかしたら、あっちに引き取られた方がいいかもな。あの子に対する感情が複雑過ぎて、正直、可愛がれるかどうか自信がないんだ。…最低な父親だよな」
ずっと悩んできたのだろう。苦しんできたのだろう。
暗澹たる表情をした絢斗に、私はかける言葉が見つからなかった。
私だって、絢斗に裏切られた時は辛かった。信じていた人に裏切られ、何を信じればいいのか分からなかった。何もかもが嫌になって、生きている事さえ辛かった。
……けれど、私には高遠がいた。どん底にいた私を支え、癒し、救いあげてくれる高遠がいた。
だが、今の絢斗には誰もいない。
今ここで、私が耳心地のいい言葉を口にするのは簡単だ。けれど、そうするつもりはなかった。私と絢斗は既に別々の道を歩み始めているのだから。
何も言えずに俯いていると、絢斗の柔らかな声がした。
「真尋。…お前、綺麗になったな」
「そうですか?変わらないと思いますけど」
「いや、すごく綺麗になった。元々綺麗だったけど、一段と綺麗になった。それが高遠のお陰かと思うと、少し悔しいな」
曖昧な笑みを浮かべた私を見て、絢斗は傷付いたような顔をした。
「前はそんな顔しなかったのにな…。態度もよそよそしいし。自業自得だって分かっているつもりだったけど、こうして目の当たりにすると寂しいもんだな」
絢斗は自嘲的に笑って視線を落とした。
「…本当に自業自得だよな。真尋っていう、誰もが羨むような彼女がいたのにさ。それを裏切って傷つけて…。最低なクズ野郎だよな。
俺さ、真尋にずっとコンプレックスを抱いてたんだ。紗凪にのめり込んだのも、あいつが俺のコンプレックスを刺激しない女だったからだと思う。
もちろん紗凪が初恋の相手だったっていうのもあるし、再会した事に運命を感じたのも事実だ。
異性に対して初めて抱いた『好意』を、あの頃の純粋な気持ちを、俺は特別に感じてたんだ。神聖なものだと思い込んでたんだよ。いい年して馬鹿みたいだろ?」
「特別で神聖?そうだったですね。……あの…ところでそのコンプレックスって何ですか?思い当たる節がないんですけど」
「はははっ。そうだろうな。真尋が入社して来た頃、新入社員の中に芸能人ばりの美女がいるって噂になってさ。その美女の教育係に指名されたもんだから、やっかまれて大変だったよ。
最初はさ、真尋が成長していく姿を見るのが誇らしかったし、楽しかったんだ。でも、徐々にお前の存在に苦しめられるようになったんだ。
俺が俺としてではなく、『あの山瀬真尋の彼氏』って認識されるようになったから…」
絢斗の言葉に唖然とした。被害妄想が強いのではないかと心配になる。私と別れるまで、仕事ができて見目のいい絢斗は、かなり人気が高かった。絢斗と付き合い始めてから、何度嫌味を言われた事か。
……まあ、別れ方が別れ方だったから、今は皆、私に同情的だけれど。絢斗の株は大暴落して、現在絢斗は女性社員から『女の敵』認定されている。
「誰もそんな風に思っていなかったと思いますけど」
「お前が知らないだけで、実際そう言われていたんだよ。他人が自分をどう見ているかなんて、自分じゃ分からないものだからな。
実際真尋は俺なんかより優秀だろ?俺よりいい大学を出ているし、仕事でも結果を残している。その上、こんな美人でスタイルよくて、おまけに料理上手ときた。お前は、まさに男の夢を具現化したような女なんだよ。
そんな文句の付けようがないお前に、俺が勝手にコンプレックスを抱いて苦しんだ。押し潰されそうになって耐えられなくて、俺は逃げたんだ…」
絢斗の声が潤み、震え始める。目元を隠すように、絢斗は片手で顔を覆った。
「紗凪はさ、どんな些細な事でも、すごいすごいって褒めてくれたんだ。単純な奴だと思うかも知れないけれど、それが嬉しかった。うちの会社に勤めているってだけで『ザ・エリートって感じで格好いいね』って言ってくれてさ。
…同じ会社に勤めている真尋からじゃ、絶対に出ない言葉だろ?」
「そうですね…。私が貴方を苦しめていた事はわかりました。きっとそれが選ばれなかった理由だという事も…。
でもそれって、私がどうこうできる問題じゃないですよね?吉澤さん自身の問題ですよね?それに…貴方の心には響かなかったみたいですけど、私だってわりと頻繁に貴方を称賛していましたよ?素直に尊敬していましたから」
絢斗が弾かれたように顔を上げた。驚いたように目を瞠っている絢斗に怒りを覚える。
「私が見た目だけだって言われるのが嫌で、必死に努力してきた事を、貴方は知ってますよね?」
「ああ、知ってる。誰よりも知ってるさ。変な噂を払拭する為に、人の何倍も努力してきたのをずっと見てきたんだから」
「なら、何で」
「お前に非はない。非はないんだ。俺が未熟で馬鹿だっただけだ。くだらない矜持の為に、お前を裏切って、傷つけて、手放して…。 俺、本当馬鹿でさ。お前に酷い事をしたって自覚あるのに、何処か自惚れててさ。お前にとって俺は特別な存在だから、例え別れても、他の男には靡かないだろうって。…そんなわけないのにな?
まあ結局、俺が高遠にお前をくれてやったようなものだよな」
「くれてやったって…。それは違います。私はモノではないし、私が高遠を選んで好きになったんです。そこに吉澤さんの影響はありません。
あの時、貴方と別れていなかったら、今の幸せは得られなかったでしょう。だから今は素直に、貴方にとって私との恋が本気ではなかった事を感謝しています。
知ってました?貴方にとって私との恋が本気でなくとも、私はとっては初めてした本気の恋だったんです。私は本当に貴方が好きでした。大好きでした。
吉澤さん。本気で人を好きになる気持ちを教えて下さり、本当にありがとうございました」
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