※R18 私との恋は本気ではなかったということでしょうか?

キリン

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きっと同じような痛みを感じていたのですね?

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「…佑っ!?」

「高遠!ちょっと、あんた!随分遅かったじゃないのよ!
まったく!あんたの大事なまひちゃんの事なんだから、空を飛んで駆けつけるくらいの根性を見せなさいよ!」

「すみません。…てか、これでも大急ぎで帰ってきたんですって!あんま無茶言わないで下さいよ。一応俺も人間の端くれなんで、空なんて飛べませんから…。
そんな事より、連絡ありがとうございました。助かりました。先輩が連絡くれなかったら、このアホがまた変な方向に暴走するとこでした。…今度奢らせて下さい。
そういう事で、こいつを回収していっていいですかね?」

高遠は財布から五千円札を一枚取り出すと、それを美優先輩の前に置いた。美優先輩は小さく頷き、あとは二人でよく話し合うようにと溜息を吐いた。

「何で佑がこんなとこにいるの?今日遅くなるって言ってたよね?」

私は予想外の高遠の登場に驚き、それを知っていたかのように振る舞う美優先輩に周章狼狽しゅうしょうろうばいした。

「やっだぁ~!今『佑』って言った?もう名前で呼び合ってんのね。ラブラブじゃない!…高遠、この貸しは高くつくわよ?」

「……程々でお願いします。ほら行くぞ!」

高遠は顔を引き攣らせながらそう答えると、私の腕を掴んで立ち上がらせた。

「じゃあ気をつけてね~!高遠、お仕置きするにしてもヤリ過ぎちゃダメよ?まだ月曜なんだからね」

「…余計なお世話ですよ!そのくらいの良識はあるんで!じゃあ、本当に有難うございました。お先に失礼します」

そう言うと、高遠は片手で私と自分の荷物を持ち、もう片方の手で私の腕を掴んで歩き始める。私は狼狽えながら、美優先輩に「お先に失礼します」と頭を下げ、引き摺られるようにして店外に出た。


『三瓶』を出た後も、高遠は私の腕を離さなかった。掴んだまま、無言でズンズンと先を歩いていく。前にもこんな事があったなと思いながら、私は高遠に話し掛けた。

「ねえ佑。今日遅くなるって言ってたよね?仕事はどうしたの?」

「うるせぇな。終わらせてきたに決まってるだろ?…それよりお前、異動ってどういう事だよ。俺、初耳なんだけど?さっきも言ったけど、俺、お前と遠恋する気なんかねーからな。勝手に決めんじゃねーよ」

「だって…。もう、あの人達に関わりあいたくないんだもの…。それに遠恋っていっても、近場を希望するつもりだから週末は一緒にすごせるよ?」

毎週末、私が会いに来るから何も変わらないよ。そう言うと、高遠は呆れたように溜息を吐いた。

「だから、俺は遠恋する気はねえって言ってんの!そんなん出来る気もしねーわ」

「遠恋っていっても、たかだか電車で1、2時間の距離だよ?今みたいに週末は一緒にいられるし。何も変わらないよ?私の気持ちも変わらないし。……もしかして、佑の気持ちが変わっちゃうかも知れないって事?……もしそうなら…佑は、私と別れたい?」

自分で口にして、ひどく動揺した。胸が張裂けそうに痛んだ。目頭が熱くなり、自然と視線が足元に落ちる。俯いたまま歩いていたから、ぶつかるまで高遠が立ち止まったことに気付かなかった。
 
「…お前、何言ってんの?自分が何言ってんのか分かってんの?」

高遠は低くそう呟くと、振り返りざまに私を抱き寄せ、強引に口付けた。そして、無言で身を翻し、更に歩調を速めて歩き出した。



高遠は部屋に入るや否や、私を玄関横の壁に押し付けた。
 
「別れたい?じゃあお前は、俺が別れたいって言ったら、はいそうですかって簡単に別れられんのかよ?
ああ、確かにお前はそうかも知れねーな?そうできるんだろうな?なんせ、俺との関係より、バカ夫婦との関係を優先するくらいだもんな?
…チクショウ!俺ばっかじゃねーか!俺ばっかが、俺ばっかが、こんなに好きなんじゃねーかっ!」

奥歯を噛み締めながら、高遠は何度も壁を殴った。
高遠の額は私の肩に押し付けられているから、どんな表情をしているのかわからない。けれど、その呟きは、胸を締め付けられるような切なさと憤りを含んでいた。

「……佑?」

高遠の名を呼ぶ私の声は、心情を映し出しているかように後悔に揺れていた。
そう。この時、ようやく私は、自分が高遠の気持ちの上に胡坐をかいていた事に気付いたのだ。高遠ならば、私の考えを受け入れてくれる。優先してくれる。当然のようにそう思っていた自分に驚いた。

きちんと謝まらなければ。キチンと目を見て謝ろう。そう思って、高遠の顔を包み込むように手を伸ばしかけたその時。私の両手は高遠の大きな手に捕らえられた。頭上で一纏めにされ、片手で押さえこまれる。

「…なあ。今更俺がお前を手放すとでも思ってんの?」

そう言いながら顔を上げた高遠の双眸には、悲しみと憤り。そして強いを孕んでおり、まるで鈍く光る刃物のような鋭さを宿していた。

「今朝の件については美優先輩から大体聞いた。お前がヤツ等と関わりたくないのもよく分かる。けどさ、だからって何でお前が異動しなきゃなんねーの?関わりたくないなら、会社に訴えてあっちを異動させりゃいいだろ?何でお前が…。そんなんだから、アイツにも付け込まれるんだよ!てか、お前、今更俺から離れられんの?」

高遠はそう忌々し気に吐き捨ると、貪るように私に口付けた。
最初から深いその口付けは、とても荒々しいものだった。まるで呼吸まで喰らい尽くすような激しい口付け。

呼吸すらままならない。息苦しさに涙が溢れだす。嚥下できなかった唾液が、口の端から幾つもの筋となって流れ出る。高遠は唾液の小道を辿るように舌を這わせ、首元へと下りていく。
ニットの上から私の胸を揉みしだいていた大きな右手が、ニットの裾から内側へと入りこんだ。それにあわせて骨ばった大きな膝が私の足の間に割り込み、押し上げるようにして下腹部を刺激する。


「やっ!痛っ!」

突然、高遠が私の首元に強く噛み付いた。それと同時にブラジャーが力づくで上にズラされる。
私の不要に育った胸が、アンダーバストの窮屈過ぎる輪を強引に潜る。既に硬く立ち上がった胸の頂は生地にひっかかり、たわわな膨らみは押し潰され、千切り取られるような痛みと息が詰まるような圧迫感を覚えた。

ジンジンとひりつく痛みを感じながら思った。きっとこの痛みの何倍も、高遠を傷付けていたのかもしれないと。

 
けれど、高遠は痛みを与えたままにはしなかった。
噛みついた首元も、擦れて敏感さが増した胸の頂きも、癒すように、労わるように、舌で丁寧になぞっていく。

痛みによって敏感になっている箇所を優しく愛撫されると、背筋が震える程の強い快感が走り、肌が粟立つ。
私は高遠の愛撫に狂わされていった。
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