24 / 33
第1章
リヒトとレイセル
しおりを挟む
王都から同胞、しかも年齢も近いヤツがやって来ると聞いた時は幼心にわくわくしたのを覚えている。
ただ、実際に会ってみての印象は「なんだコイツは」、だった。
存在感なんて微塵も無いし、いつもびくびくオドオドしてイラついてしまう。声だって何喋ってるか分からないくらい小さい。
しかもアイツ、同胞なのに魔法が使えないらしい。それがより一層アイツをびくびくオドオドするゲンインになってるみたいだって、ヒューマのジジイは言ってた。
王都生まれなのに全然都会っぽく無いし、流行ってるものだって何も知らなかった。
つまんねぇヤツ、と言ったらアイツは父親の後ろに隠れてぶるぶるしてやがる。
今にして思えば、そういう雰囲気にならざるを得なかっただろう事も察しがつくし、当時の自身の対応が少しばかりトゲがあるものだとは分かっていた。
ただ、また一からやり直したとしても同じように接するだろう。
幼いリヒトは、本当につまらないヤツだったのだ。
そのリヒトから手紙が届いときは、催促しなければ送ってこなかったのに珍しいことをするもんだと驚いた。
「子どもを拾った……?」
リヒトから送られてきたのは、子どもを樹海で保護したということ。しかも亜人ということだ。
今度は何の厄介事に首を突っ込んだんだと訝しんだ。
手紙にはコキタリス街道を管理しているユーハイトの方で、街道から領都内に人探しの依頼書や御触書が出ていないかどうかを調べて欲しいと書かれていた。久方ぶりに手紙を送ってきたと思ったら人使いの荒いことだと憤りが湧いてきた。
リヒトが保護した子どもの特徴を持つ人探しの依頼が出ていないか、検問や領主城や商業ギルド、はたまた自警団の人々に尋ねて回っていたその次の日。更に追加の手紙が届いた。
体調不良だった子どもが目覚めたので経緯を確認したが、どうやら人攫いに会っていたようで、逃げ込んだ先がシンハ樹海だったようだ。
人攫いの口上は「孤児院に送る」ということだったので、それが事実かどうか確認してほしい、と書かれていた。
ユーハイトの中に孤児院は三つほど点在している。どこかにその子どもが引き取られる予定があったかどうか、裏を取ってほしい、とのことだった。
また非常に面倒くさいことに巻き込まれてアイツは何をしているんだ、と何度目かになる舌打ちを鳴らし、領都内の孤児院も目的地に加えて聞き込みを続けた。
調べて分かったことを手紙に書いて、カエルラウェスへと託す。
ずっと樹海で一人暮らしを続けていたリヒトのもとに来訪があることは、もしかしたら初めてのことかもしれない。
何に巻き込まれているんだ、と憤りをぶつけようにも、物理的な距離があるため手紙の中でしか苛立ちをぶつけられない。
「勝手なヤツ」
ユーハイトで長年暮らしてきたリヒトが樹海で暮らしたいと相談してきたあの日から随分と時間が経った。
自分から選んで領都を後にしておきながら、こうしてまた頼ってくることも腹立たしい。それでも、アイツがようやく他者を頼ってくるようになったことは、ようやくリヒト自身が歩み始めた証拠ではないかと思う自分もいて、ただただ舌打ちすることでしか感情を表せなかった。
□ □ □
翌朝、朝餉の支度をしているところに自警団の人間がヒューマを訪ねてやって来た。なんでも、警戒対象としていた盗賊が深夜に領外へ出て行ったという報告だった。
「捕まった訳では無いのが非常に残念ですが、一旦脅威は去ったようで何よりですね。今後も大きな事件が起きないように自警団や騎士団の方に引き続き目を光らせて頂きましょう」
「盗賊の人たちは何の用があってユーハイトにやって来たんでしょうね……?」
ヤツヒサと膳を運びながらリヒトは首を傾げていた。今日はシキも準備を手伝ってくれたので、リヒトとヤツヒサの後ろをとことこと、箸を人数分持ちながら着いてきている。
ヤツヒサは全てのことを承知しているが、リヒトとシキには真実は告げず、一緒に思案した様子で「単純に補給だったのでしょうか」と疑問符を付けて返答した。
いつも食事をしている部屋に膳を運ぶと、ヒューマが何やら球体の道具を無言で見つめていた。
「ヒューマ様、お食事をお持ちしました。……あの、そちらは?」
「おお、昨夜遅くにレイセルが寄越したものじゃよ」
「レイセルが来てたんですか? 顔を見せてくれたら良かったのに」
「夜も深かったからの。どうやら魔道具のようじゃ、恐らくこれは手を翳した者の行動歴や犯罪歴が読み取れるようじゃ」
ヒューマが手を翳すと、球体の中に大陸語が浮かび上がり、球の中でくるくると流れていく。
「あとは質疑応答の際の嘘発見器のようじゃの、ヤツヒサ、何か儂に質問してみておくれ」
「では、今日の茶菓子としてお出ししようとしていた戸棚の団子を召し上がったのはヒューマ様ですか」
「……む、違うぞ」
球体の中が赤くぼんやりと色付いた。
ヤツヒサがにこりと笑う。
「ヒューマ様には今日のお茶菓子は無しということで」
「……むむむ」
質問に対してヒューマは真実とは異なる発言をしたようだった。どうやら嘘をつくと球体の中の色が変わるらしい。細かな魔法が組み込まれて居るようだが、仕組みが一切分からないそれに、リヒトはひたすら感心していた。
「レイセル、検問所で使うための魔道具を作っていたんですね……」
「各検問所から要望は上がっておったんじゃが、なかなか高価過ぎる品物な上、王都でもまだ数は少ないからのう。なかなか地方領地にまでは回って来ておらんかったのじゃ」
領都にやって来たらもう少し何かリヒトに言ってくると思ったレイセルだが、魔道具制作のために作業場に籠っていたらしい。
朝餉を食べながら、シキが少し思案したような顔で汁椀を持ったまま静止していたのに気付いたリヒトが声を掛けた。
「シキ、どうかした?」
「あの、僕、レイセルさんとちゃんとお話したことが無いなと思って。リヒトさんのお友達なんだよね?」
「ああ、ちゃんと説明したことは無かったね。私とレイセルは幼馴染のようなものだよ」
「リヒトさん、あのね――」
朝食の後、リヒトとシキは北の森までやって来ていた。
シキからレイセルと話してみたい、と朝食時にお願いされたリヒトは、何度もシキに、口は悪いけど良い奴だから、とか、見た目は怖いけど中身は優しいと思うから、等、少し言い訳のような諸々を予め伝えておいた。予防線を貼っておけばある程度レイセルが冷たいことを言ったとしてもフォローになるかと思ったからだ。
リヒト自身もレイセルの顔を見るついでに、北の森にて料理屋の女将に渡す軟膏の材料を採取するつもりでいた。手持ちの薬剤では依頼された量に少し足りなかったからだ。
「主材料のマカの実が寒期でも手に入るもので良かった」
「あ、軟膏づくり、僕も見てみたい!」
「帰宅したらお手伝いしてもらおうかな」
「うん!」
他愛ない話をしながら木立の道を進むと、何件かの管理小屋を通り過ぎた先にレイセルの家に辿り着いた。先触れとしてカエルラウェスに文を持たせたが、機嫌は大丈夫だろうか、と少し不安になる。
シキは行かないの?と立ち止まったリヒトを不思議に見上げた。
「よし、行こうか」
「うん」
少し深呼吸の後、呼び鈴を鳴らしたが――レイセルは応じなかった。
「あれ?」
「どうしたの?」
少しだけ嫌な想像をしたリヒトはシキの手を掴んで、家主の応答を貰う前につかつかとエントランスを進んでドアを直接叩いた。
「レイセル、生きてる!? 事後承諾になるけど、入るよ!!」
いつになく声の大きいリヒトにシキは驚くばかりで、勝手知ったるとばかりにレイセルの家の中に容赦なく入っていくリヒトに慌てて声を掛けた。
「リヒトさん、レイセルさんに何かあったの……!?」
「たぶんだけど――」
エントランスの先の廊下を進み、部屋を何室か素通りして作業場として割り振っている部屋へとたどり着く。
うずたかく積まれた書類や古書、数式の書かれた破かれた紙、紙、紙――。恐らく失敗した産物かと思われる破壊された金属の機械仕掛けのような魔道具や割れた魔石の数々。
レイセルの作業場は荒れ果て、足の踏み場も無い様相だった。
「相変わらず集中すると私よりタチが悪い……」
リヒトはため息をつきつつ、足元に散らばる紙類を踏まないように部屋の奥へと進んで行った。恐らく作業台と思われる山の向こう、部屋の突き当たりの窓の前で、家主であるレイセルは寝息を立てていた。
窓が開けられ、カエルラウェスに託した手紙を読んだ後に力尽きたようで、レイセルの手からリヒトの手紙がこぼれ落ちていた。
仕事をこなしてくれた青い小鳥はレイセルの髪の毛を啄んで遊んでいるが、レイセルは全く起きる気配を見せなかった。
「やれやれ……」
どうやらここ数日、徹夜で作業をしていたようだ。ヒューマに託した検問で使う魔道具のために、ずっと。そして、時折リヒトを気にかけては出掛けてきて、声を掛けてくれた。
「……こんなに隈をつくって、やつれて……バカはどっちなんだよ」
「リヒトさん、レイセルさんは大丈夫……!?」
「うん、どうやら寝不足みたい」
シキは部屋の入口で心配げにこちらを窺っていた。乱雑に散らかった室内にびっくりしている。
「この様子だと、ご飯もまともに食べて無さそうだ……家主には後でちゃんと謝ることにして、料理でも作って待ってようか」
リヒトは苦笑しつつ、眠り続けるレイセルに自分が着ていた上着を掛けてあげた。
ただ、実際に会ってみての印象は「なんだコイツは」、だった。
存在感なんて微塵も無いし、いつもびくびくオドオドしてイラついてしまう。声だって何喋ってるか分からないくらい小さい。
しかもアイツ、同胞なのに魔法が使えないらしい。それがより一層アイツをびくびくオドオドするゲンインになってるみたいだって、ヒューマのジジイは言ってた。
王都生まれなのに全然都会っぽく無いし、流行ってるものだって何も知らなかった。
つまんねぇヤツ、と言ったらアイツは父親の後ろに隠れてぶるぶるしてやがる。
今にして思えば、そういう雰囲気にならざるを得なかっただろう事も察しがつくし、当時の自身の対応が少しばかりトゲがあるものだとは分かっていた。
ただ、また一からやり直したとしても同じように接するだろう。
幼いリヒトは、本当につまらないヤツだったのだ。
そのリヒトから手紙が届いときは、催促しなければ送ってこなかったのに珍しいことをするもんだと驚いた。
「子どもを拾った……?」
リヒトから送られてきたのは、子どもを樹海で保護したということ。しかも亜人ということだ。
今度は何の厄介事に首を突っ込んだんだと訝しんだ。
手紙にはコキタリス街道を管理しているユーハイトの方で、街道から領都内に人探しの依頼書や御触書が出ていないかどうかを調べて欲しいと書かれていた。久方ぶりに手紙を送ってきたと思ったら人使いの荒いことだと憤りが湧いてきた。
リヒトが保護した子どもの特徴を持つ人探しの依頼が出ていないか、検問や領主城や商業ギルド、はたまた自警団の人々に尋ねて回っていたその次の日。更に追加の手紙が届いた。
体調不良だった子どもが目覚めたので経緯を確認したが、どうやら人攫いに会っていたようで、逃げ込んだ先がシンハ樹海だったようだ。
人攫いの口上は「孤児院に送る」ということだったので、それが事実かどうか確認してほしい、と書かれていた。
ユーハイトの中に孤児院は三つほど点在している。どこかにその子どもが引き取られる予定があったかどうか、裏を取ってほしい、とのことだった。
また非常に面倒くさいことに巻き込まれてアイツは何をしているんだ、と何度目かになる舌打ちを鳴らし、領都内の孤児院も目的地に加えて聞き込みを続けた。
調べて分かったことを手紙に書いて、カエルラウェスへと託す。
ずっと樹海で一人暮らしを続けていたリヒトのもとに来訪があることは、もしかしたら初めてのことかもしれない。
何に巻き込まれているんだ、と憤りをぶつけようにも、物理的な距離があるため手紙の中でしか苛立ちをぶつけられない。
「勝手なヤツ」
ユーハイトで長年暮らしてきたリヒトが樹海で暮らしたいと相談してきたあの日から随分と時間が経った。
自分から選んで領都を後にしておきながら、こうしてまた頼ってくることも腹立たしい。それでも、アイツがようやく他者を頼ってくるようになったことは、ようやくリヒト自身が歩み始めた証拠ではないかと思う自分もいて、ただただ舌打ちすることでしか感情を表せなかった。
□ □ □
翌朝、朝餉の支度をしているところに自警団の人間がヒューマを訪ねてやって来た。なんでも、警戒対象としていた盗賊が深夜に領外へ出て行ったという報告だった。
「捕まった訳では無いのが非常に残念ですが、一旦脅威は去ったようで何よりですね。今後も大きな事件が起きないように自警団や騎士団の方に引き続き目を光らせて頂きましょう」
「盗賊の人たちは何の用があってユーハイトにやって来たんでしょうね……?」
ヤツヒサと膳を運びながらリヒトは首を傾げていた。今日はシキも準備を手伝ってくれたので、リヒトとヤツヒサの後ろをとことこと、箸を人数分持ちながら着いてきている。
ヤツヒサは全てのことを承知しているが、リヒトとシキには真実は告げず、一緒に思案した様子で「単純に補給だったのでしょうか」と疑問符を付けて返答した。
いつも食事をしている部屋に膳を運ぶと、ヒューマが何やら球体の道具を無言で見つめていた。
「ヒューマ様、お食事をお持ちしました。……あの、そちらは?」
「おお、昨夜遅くにレイセルが寄越したものじゃよ」
「レイセルが来てたんですか? 顔を見せてくれたら良かったのに」
「夜も深かったからの。どうやら魔道具のようじゃ、恐らくこれは手を翳した者の行動歴や犯罪歴が読み取れるようじゃ」
ヒューマが手を翳すと、球体の中に大陸語が浮かび上がり、球の中でくるくると流れていく。
「あとは質疑応答の際の嘘発見器のようじゃの、ヤツヒサ、何か儂に質問してみておくれ」
「では、今日の茶菓子としてお出ししようとしていた戸棚の団子を召し上がったのはヒューマ様ですか」
「……む、違うぞ」
球体の中が赤くぼんやりと色付いた。
ヤツヒサがにこりと笑う。
「ヒューマ様には今日のお茶菓子は無しということで」
「……むむむ」
質問に対してヒューマは真実とは異なる発言をしたようだった。どうやら嘘をつくと球体の中の色が変わるらしい。細かな魔法が組み込まれて居るようだが、仕組みが一切分からないそれに、リヒトはひたすら感心していた。
「レイセル、検問所で使うための魔道具を作っていたんですね……」
「各検問所から要望は上がっておったんじゃが、なかなか高価過ぎる品物な上、王都でもまだ数は少ないからのう。なかなか地方領地にまでは回って来ておらんかったのじゃ」
領都にやって来たらもう少し何かリヒトに言ってくると思ったレイセルだが、魔道具制作のために作業場に籠っていたらしい。
朝餉を食べながら、シキが少し思案したような顔で汁椀を持ったまま静止していたのに気付いたリヒトが声を掛けた。
「シキ、どうかした?」
「あの、僕、レイセルさんとちゃんとお話したことが無いなと思って。リヒトさんのお友達なんだよね?」
「ああ、ちゃんと説明したことは無かったね。私とレイセルは幼馴染のようなものだよ」
「リヒトさん、あのね――」
朝食の後、リヒトとシキは北の森までやって来ていた。
シキからレイセルと話してみたい、と朝食時にお願いされたリヒトは、何度もシキに、口は悪いけど良い奴だから、とか、見た目は怖いけど中身は優しいと思うから、等、少し言い訳のような諸々を予め伝えておいた。予防線を貼っておけばある程度レイセルが冷たいことを言ったとしてもフォローになるかと思ったからだ。
リヒト自身もレイセルの顔を見るついでに、北の森にて料理屋の女将に渡す軟膏の材料を採取するつもりでいた。手持ちの薬剤では依頼された量に少し足りなかったからだ。
「主材料のマカの実が寒期でも手に入るもので良かった」
「あ、軟膏づくり、僕も見てみたい!」
「帰宅したらお手伝いしてもらおうかな」
「うん!」
他愛ない話をしながら木立の道を進むと、何件かの管理小屋を通り過ぎた先にレイセルの家に辿り着いた。先触れとしてカエルラウェスに文を持たせたが、機嫌は大丈夫だろうか、と少し不安になる。
シキは行かないの?と立ち止まったリヒトを不思議に見上げた。
「よし、行こうか」
「うん」
少し深呼吸の後、呼び鈴を鳴らしたが――レイセルは応じなかった。
「あれ?」
「どうしたの?」
少しだけ嫌な想像をしたリヒトはシキの手を掴んで、家主の応答を貰う前につかつかとエントランスを進んでドアを直接叩いた。
「レイセル、生きてる!? 事後承諾になるけど、入るよ!!」
いつになく声の大きいリヒトにシキは驚くばかりで、勝手知ったるとばかりにレイセルの家の中に容赦なく入っていくリヒトに慌てて声を掛けた。
「リヒトさん、レイセルさんに何かあったの……!?」
「たぶんだけど――」
エントランスの先の廊下を進み、部屋を何室か素通りして作業場として割り振っている部屋へとたどり着く。
うずたかく積まれた書類や古書、数式の書かれた破かれた紙、紙、紙――。恐らく失敗した産物かと思われる破壊された金属の機械仕掛けのような魔道具や割れた魔石の数々。
レイセルの作業場は荒れ果て、足の踏み場も無い様相だった。
「相変わらず集中すると私よりタチが悪い……」
リヒトはため息をつきつつ、足元に散らばる紙類を踏まないように部屋の奥へと進んで行った。恐らく作業台と思われる山の向こう、部屋の突き当たりの窓の前で、家主であるレイセルは寝息を立てていた。
窓が開けられ、カエルラウェスに託した手紙を読んだ後に力尽きたようで、レイセルの手からリヒトの手紙がこぼれ落ちていた。
仕事をこなしてくれた青い小鳥はレイセルの髪の毛を啄んで遊んでいるが、レイセルは全く起きる気配を見せなかった。
「やれやれ……」
どうやらここ数日、徹夜で作業をしていたようだ。ヒューマに託した検問で使う魔道具のために、ずっと。そして、時折リヒトを気にかけては出掛けてきて、声を掛けてくれた。
「……こんなに隈をつくって、やつれて……バカはどっちなんだよ」
「リヒトさん、レイセルさんは大丈夫……!?」
「うん、どうやら寝不足みたい」
シキは部屋の入口で心配げにこちらを窺っていた。乱雑に散らかった室内にびっくりしている。
「この様子だと、ご飯もまともに食べて無さそうだ……家主には後でちゃんと謝ることにして、料理でも作って待ってようか」
リヒトは苦笑しつつ、眠り続けるレイセルに自分が着ていた上着を掛けてあげた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる