5 / 15
5.王太子妃ルートから逃げ出したい
しおりを挟む(よし好機到来! 悪いけどここで返事をするのはまずいので、渡りに船!)
痛みに耐えるクリストファー様には申し訳ないけれど、退出のタイミングを逃す訳には行かない。
「いや、大丈夫だ。心配を掛けてしまってすまないが、君の未来に関わる事だ。
このまま続けさせて欲しい」
(こっちが大丈夫じゃないの!…………このまま帰らせて?)
「……ですがクリストファー様の体調が……」
クリストファー様に捨てられた仔犬のような、こちらの良心を抉ってくるような目で告げられ、二の句が継げなかった。
(何か普通に気遣いのできる、いい人で逆に辛い!!)
この婚約は陛下の勅令だけれど、まだ時間はあるから、どこかに逃げ道があるはず。
ほら、夜逃げからの平民ルートとか。
取り敢えず帰宅して、そんな感じの悪役令嬢モノを思い出して対策をしなくちゃ……
……そんな私の気持ちが漏れ出てしまっていたのか、クリストファー様は立ち上がると、私の隣の席に移られ、不思議そうに見つめてきた。
(なぜ隣に?騎士の本能で退出コース塞いだの!?)
「……それよりも本当に今の君は、全く王太子妃の座に興味が無いように見える。
以前はもっとこう、未来の王妃として強い意志と誇りを持っている様子だったが……」
「あの……私の表情、そんなに分かりやすいでしょうか?」
必死に胃を擦るクリストファー様に、つい気になる事聞いてしまった。
純情ボーイだけど、仮にも王位継承権を保持する公爵家のご子息。
特別な教育を受けているのかも知れない。
「いや、淑女の微笑みでさっぱり分からない。
だが、実はわがラムバレド公爵家が受け継いでいる魔法は『真実の鏡』で……」
「え?…ちょっ、ちょっとお待ち下さい!それは…」
「相手の真実の姿や、心の有り様が見えるんだ。
建国王はこの魔法で相手を見抜き……ん?」
……私の制止は聞き入れて貰えなかった。
「ルイーズ嬢? 指先が震えているようだが、バルコニーは少し冷えるか?
もし良かったら続きは室内で……」
「ク、クリストファー様…………かっ顔合わせの席で、国法で門外不出と定められている、魔法の内容を話すのはどうかと……」
「どうして? 別にかまわないだろう。
ルイーズ嬢は私の妻になるんだ。
それに君は秘密を洩らすような女性には見えないし、隠していては騙すようで……」
クリストファー様から疑いのない澄んだ夏の青空色の瞳を向けられ、脱力してしまう。
(…………いい人だけど、いい人なんだろうけど…酷い!!)
この国では、大地の守り神「黄金の龍」様から授かった守護魔法は、青い目を持つ王家の血脈にしか伝わらない貴重なもの。
決して悪しき考えを持つ者に利用されないよう、厳重に王家によって管理されている。
どの家系の誰に、どのような守護魔法が受け継がれたのか、また親族のうちその秘密を知るものは誰なのか、全てが誓約魔法によって国王陛下に伝わる。
そして、門外不出の国法を破った者は厳重に処罰されてきた。
だから家門によっては、例え嫁入りや婿入りで親族になったとしても、離婚になった場合などを考えて、血族の青い瞳を持つ者以外には親子であろうとも決して魔法の秘密を漏らさない所もあるくらいなのに……。
(……つまり、ラムバレド公爵家の魔法の秘密を私が知ってしまった事は、誓約魔法によってすでに陛下に伝わってしまっている……はず。
もう、もう親族になるか、王家からの執拗な追手を躱して逃げるかしか道が……)
クリストファー様の、高位貴族とは思えない、隠し事の出来ない誠実さが……
私の逃げ道を塞いで、ハードモードにしてしまった……!!
「………………うそでしょ」
「だ、大丈夫かルイーズ嬢!顔が真っ白だ!」
「………………」
「ルイーズ嬢しっかり!!」
私の名を呼ぶクリストファー様の声が、どんどん遠のいて行き、そこからプッツンと記憶が途切れてしまったのだった……。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
婚約破棄?どうぞ私がいなくなったことを後悔してください
ちょこ
恋愛
「おい! この婚約は破棄だ!」
そう、私を突き付けたのはこの国の第二王子であるルーシュである。
しかし、私の婚約者であるルーシュは私の返事など聞かずにただ一方的に婚約を破棄してきたのである。
「おい! 返事をしろ! 聞こえないのか?」
聞こえないわけがない。けれども私は彼に返事をするつもりはなかった。私は何も言わない。否、何も言えないのだ。だって私は彼のことを何も知らないからだ。だから、返事ができないのである。
そんな私が反応を示さなかったのが面白くなかったのかルーシュは私を睨みつけて、さらに罵声を浴びせてきた。
「返事をしろと言っている! 聞こえているんだろ! おい!」
そんな暴言を吐いてくるルーシュに私は何も言えずにいた。けれども彼が次に発した言葉により私は反射的に彼に言い返してしまうのである。
「聞こえているわ!
その反応を見てルーシュは驚いたのかキョトンとした顔をしていた。しかしすぐにまた私に暴言を吐いてきた。
「聞こえているじゃないか! ならなぜ、返事をしなかった?」
「返事をしたかったわ! けれど、貴方の勢いに圧倒されてできなかっただけよ!」
そんな私の言葉にルーシュは益々驚いてしまったようだった。そのルーシュの顔を見て私は少し笑ってしまった。
「何笑っているんだ? 俺を馬鹿にしたつもりか!?」
そんなつもりは無いと私は彼に否定するが彼は聞く耳を持たないといった様子だった。そんな彼に対して私はある質問をした。それは今私が最も知りたい質問である。
「それより、この婚約破棄の理由は何かしら? 私は貴方に何かした覚えはないのだけれども」
そんな私の疑問にルーシュはさも当然といった様子で答えたのである。
「そんな理由など決まっているだろ! お前が俺よりも優秀な人材を捕まえたからに決まっている!」
そう言って彼は指をさした。その指が指し示している先には私がいた。一瞬なんのことか分からなかったが、少ししてからそのことに気づいた私はまさかと思った。
「そんな理由で!?だってその優秀な人材と言うのはまさか、彼なの!?」
そう言って私が指を指した方向にはあの眼鏡を掛けた彼がいた。すると彼は頭を下げてこう言ったのだ。
「はい、お嬢様に拾っていただきたくこちらに来ました」
彼の名前はリビン・ボタスキー。ボタスキー伯爵家の次男である。そして何を隠そう、私が暇つぶしでやっていたゲームの攻略対象であった人物だ。
「あら? そんな理由で私を追い出したと言うの? 随分と小さい器をお持ちなのね」
「なんだと!? お前は自分の立場が分かっていないのか?」
彼は私が何を言っているのか理解出来ていない様子だった。まぁ、それも仕方がないだろう。
ただの婚約破棄なんてため息しか出ませんわ
アキナヌカ
恋愛
私、ユディリーア・パヴォーネ・スカラバイオスは、金の髪に美しい蒼い瞳を持つ公爵令嬢だ。だが今は通っていた学園の最後になる記念の舞踏会、そこで暇を持て余して公爵令嬢であるのに壁の花となっていた。それもこれも私の婚約者である第一王子が私を放っておいたからだった、そして遅れてやってきたヴァイン様は私との婚約破棄を言いだした、その傍には男爵令嬢がくっついていた、だが私はそんな宣言にため息をつくことしかできなかった。
悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)
ほーみ
恋愛
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」
王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。
ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる