断罪後の悪役令嬢は、君を愛する事はないと断言した新しい婚約者がいい人過ぎて辛いです

春ことのは

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5.王太子妃ルートから逃げ出したい

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(よし好機到来! 悪いけどここで返事をするのはまずいので、渡りに船!)

痛みに耐えるクリストファー様には申し訳ないけれど、退出のタイミングを逃す訳には行かない。

「いや、大丈夫だ。心配を掛けてしまってすまないが、君の未来に関わる事だ。
このまま続けさせて欲しい」

(こっちが大丈夫じゃないの!…………このまま帰らせて?)

「……ですがクリストファー様の体調が……」

クリストファー様に捨てられた仔犬のような、こちらの良心を抉ってくるような目で告げられ、二の句が継げなかった。

(何か普通に気遣いのできる、いい人で逆に辛い!!)

この婚約は陛下の勅令ちょくれいだけれど、まだ時間はあるから、どこかに逃げ道があるはず。

ほら、夜逃げからの平民ルートとか。

取り敢えず帰宅して、そんな感じの悪役令嬢モノを思い出して対策をしなくちゃ……

……そんな私の気持ちが漏れ出てしまっていたのか、クリストファー様は立ち上がると、私の隣の席に移られ、不思議そうに見つめてきた。

(なぜ隣に?騎士の本能で退出コース塞いだの!?)

「……それよりも本当に今の君は、全く王太子妃の座に興味が無いように見える・・・
以前はもっとこう、未来の王妃として強い意志と誇りを持っている様子だったが……」

「あの……私の表情、そんなに分かりやすいでしょうか?」

必死に胃を擦るクリストファー様に、つい気になる事聞いてしまった。

純情ボーイだけど、仮にも王位継承権を保持する公爵家のご子息。
特別な教育を受けているのかも知れない。

「いや、淑女の微笑みでさっぱり分からない。
だが、実はわがラムバレド公爵家が受け継いでいる魔法は『真実の鏡』で……」

「え?…ちょっ、ちょっとお待ち下さい!それは…」

「相手の真実の姿や、心の有り様が見えるんだ。
建国王はこの魔法で相手を見抜き……ん?」

……私の制止は聞き入れて貰えなかった。

「ルイーズ嬢? 指先が震えているようだが、バルコニーは少し冷えるか?
もし良かったら続きは室内で……」

「ク、クリストファー様…………かっ顔合わせの席で、国法で門外不出と定められている、魔法の内容を話すのはどうかと……」

「どうして? 別にかまわないだろう。
ルイーズ嬢は私の妻になるんだ。
それに君は秘密を洩らすような女性には見えない・・・・し、隠していては騙すようで……」

クリストファー様から疑いのない澄んだ夏の青空色の瞳を向けられ、脱力してしまう。

(…………いい人だけど、いい人なんだろうけど…酷い!!)

この国では、大地の守り神「黄金の龍」様から授かった守護魔法は、青い目ルシェルアイズを持つ王家の血脈にしか伝わらない貴重なもの。 

決して悪しき考えを持つ者に利用されないよう、厳重に王家によって管理されている。

どの家系の誰に、どのような守護魔法が受け継がれたのか、また親族のうちその秘密を知るものは誰なのか、全てが誓約魔法によって国王陛下に伝わる。
そして、門外不出の国法を破った者は厳重に処罰されてきた。

だから家門によっては、例え嫁入りや婿入りで親族になったとしても、離婚になった場合などを考えて、血族の青い瞳を持つ者以外には親子であろうとも決して魔法の秘密を漏らさない所もあるくらいなのに……。

(……つまり、ラムバレド公爵家の魔法の秘密を私が知ってしまった事は、誓約魔法によってすでに陛下に伝わってしまっている……はず。

もう、もう親族になるか、王家からの執拗な追手を躱して逃げるかしか道が……)

クリストファー様の、高位貴族とは思えない、隠し事の出来ない誠実さが……

私の逃げ道を塞いで、ハードモードにしてしまった……!!

「………………うそでしょ」

「だ、大丈夫かルイーズ嬢!顔が真っ白だ!」

「………………」

「ルイーズ嬢しっかり!!」

私の名を呼ぶクリストファー様の声が、どんどん遠のいて行き、そこからプッツンと記憶が途切れてしまったのだった……。



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