悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ

春ことのは

文字の大きさ
上 下
7 / 34

7.

しおりを挟む
________________

「なんだって!夢で母上がそんな事を!?」

「お母様のお告げを無視したら、悪いことが起こるような気がするの…。わたくし何だか怖いわ…」

「エリー!大丈夫だ、お兄様がついているよ」

「(瞳をうるませて)お兄様!!」

「エリーの危機を察した母上が、天国から伝えてくれたのかもしれないね。王太子殿下とは婚約を結ばないよう父上にお願いしてみよう」
________________

(そんな展開を信じていた時がわたくしにもありました)

少しぬるくなった紅茶を飲みながら、庭園の薔薇を遠目に一輪二輪…、と心のなかで数えてみる。

(「最強のカード」なんて無かったじゃない!どう言うことなのお母様!!)

「僕の話を聞いているかい、エリザベス・・・・・?」

「もちろんよ、お兄様」

すっかり本名呼びになってしまったお兄様に念を押される。

(視線が痛すぎるわ。過保護なお兄様が恋しい…)

あの後、お兄様は「奥様のお告げだ」と騒ぐラリサやメイド達を下がらせてしまった。

「もう一度聞くけれど…、君は王太子殿下との婚約に何か思うところがあるのかい?」

「あら、それはどういった意味ですの?」

「……例えば王太子妃の責務に重圧を感じているとか、誰か想う相手ができたとか…そういった事だよ。…そうなのかい?」

「まぁ!なぜそんなことを…」

「考えて当然だろう、突然あんな事を言い出して…」

「言い出すなんて…。ラリサと話していたところに突然お兄様が入っていらして、聞かれたから答えただけだわ」

「……」

お兄様は「お母様のお告げ」なんて全然信じていないようだった。

(確かにお告げなんて胡散臭い話をマルッと信じるのはちょっとアレよね。
だけどここは騙されてほしかったわ。
だってわたくしの命がかかっているのだもの!)

のらりくらりとお兄様の言葉をかわしながら、もうお告げでゴリ押しするのは無理だと諦める。

「…わたくし、筆頭公爵家の娘としていずれは(ハニトラにひっかかる予定の)王太子殿下を支えるべく努力してきましたわ。その事に不満も疑問も感じたことは(今までは)一度もありません。

…ただ、もしかしたら心の奥底で(ハニトラ略)殿下との婚約に不安を感じているのかもしれません(毒殺されたくないし)。

だから、無意識にお母様に助けを求め、あんな夢を見てしまったのかもしれませんわね」

少しやけくそに言って俯いていると、大きくため息をついたお兄様が椅子から離れ、わたくしの横に跪いて目線を合わせてきた。

「君の要らぬ重荷になっては、と国王陛下のご厚情で公表はしていなかったが…。ずいぶん前に君と殿下の婚約は正式に結ばれているんだ」

「……!」

「…君なら王家と公爵家の婚姻契約がどれほど重いものかわかっているね?」

「……」

ショックで言葉も出なかった。

婚約阻止と婚約破棄では天と地との差があるからだ。

(うる薔薇では建国祭より前に婚約を発表したとあったわよね!?あったよね!?書面での契約済みってどういうこと!?)

エリザベス・・・・・、何度でも聞くよ。この婚約に思うところが?」

お兄様の金色の瞳は、わたくしの心の動きを一つも見逃さないとみつめてくる。

とてもこれ以上嘘をつけそうになかった。

高位貴族の義務、公爵令嬢の矜持、淑女教育、絶対王政…色々な言葉が頭によぎる。

でも「わたくし」も、前世の感覚を持つ「私」も…

この我儘が通ることは無いだろうけれど…
けれど、裏切りも、冤罪も、断罪も、毒殺も、全部全部!

そんな未来はご免ですわ!!

「…殿下との婚姻は絶対にいや!!」

「わかったエリー、婚約は破棄しよう」

「へっ…?」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~

犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…

悪役令嬢を追い込んだ王太子殿下こそが黒幕だったと知った私は、ざまぁすることにいたしました!

奏音 美都
恋愛
私、フローラは、王太子殿下からご婚約のお申し込みをいただきました。憧れていた王太子殿下からの求愛はとても嬉しかったのですが、気がかりは婚約者であるダリア様のことでした。そこで私は、ダリア様と婚約破棄してからでしたら、ご婚約をお受けいたしますと王太子殿下にお答えしたのでした。 その1ヶ月後、ダリア様とお父上のクノーリ宰相殿が法廷で糾弾され、断罪されることなど知らずに……

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

【完結】もしかして悪役令嬢とはわたくしのことでしょうか?

桃田みかん
恋愛
ナルトリア公爵の長女イザベルには五歳のフローラという可愛い妹がいる。 天使のように可愛らしいフローラはちょっぴりわがままな小悪魔でもあった。 そんなフローラが階段から落ちて怪我をしてから、少し性格が変わった。 「お姉様を悪役令嬢になんてさせません!」 イザベルにこう高らかに宣言したフローラに、戸惑うばかり。 フローラは天使なのか小悪魔なのか…

悪役令嬢は攻略対象者を早く卒業させたい

砂山一座
恋愛
公爵令嬢イザベラは学園の風紀委員として君臨している。 風紀委員の隠された役割とは、生徒の共通の敵として立ちふさがること。 イザベラの敵は男爵令嬢、王子、宰相の息子、騎士に、魔術師。 一人で立ち向かうには荷が重いと国から貸し出された魔族とともに、悪役令嬢を務めあげる。 強欲悪役令嬢ストーリー(笑) 二万字くらいで六話完結。完結まで毎日更新です。

婚約破棄を目指して

haruhana
恋愛
伯爵令嬢リーナには、幼い頃に親同士が決めた婚約者アレンがいる。美しいアレンはシスコンなのか?と疑わしいほど溺愛する血の繋がらない妹エリーヌがいて、いつもデートを邪魔され、どっちが婚約者なんだかと思うほどのイチャイチャぶりに、私の立場って一体?と悩み、婚約破棄したいなぁと思い始めるのでした。

あなたより年上ですが、愛してくれますか?

Ruhuna
恋愛
シャーロット・ロックフェラーは今年25歳を迎える 5年前から7歳年下の第3王子の教育係に任命され弟のように大事に大事に接してきた 結婚してほしい、と言われるまでは 7/23 完結予定 6/11 「第3王子の教育係は翻弄される」から題名を変更させて頂きました。 *直接的な表現はなるべく避けておりますが、男女の営みを連想させるような場面があります *誤字脱字には気をつけておりますが見逃している部分もあるかと思いますが暖かい目で見守ってください

彼女(ヒロイン)は、バッドエンドが確定している

基本二度寝
恋愛
おそらく彼女(ヒロイン)は記憶持ちだった。 王族が認め、発表した「稀有な能力を覚醒させた」と、『選ばれた平民』。 彼女は侯爵令嬢の婚約者の第二王子と距離が近くなり、噂を立てられるほどになっていた。 しかし、侯爵令嬢はそれに構う余裕はなかった。 侯爵令嬢は、第二王子から急遽開催される夜会に呼び出しを受けた。 とうとう婚約破棄を言い渡されるのだろう。 平民の彼女は第二王子の婚約者から彼を奪いたいのだ。 それが、運命だと信じている。 …穏便に済めば、大事にならないかもしれない。 会場へ向かう馬車の中で侯爵令嬢は息を吐いた。 侯爵令嬢もまた記憶持ちだった。

処理中です...