聖なる言霊を小言と馬鹿にされ婚約破棄されましたが、普段通りに仕事していたら辺境伯様に溺愛されています

青空あかな

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第88話(最終話):言葉③

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 ルイ様が私の背中を撫で、ハンカチで涙を拭いてくれる。

「ポーラ、そんなに喜んでくれてありがとう。私は本当に君に救われたんだ。その気持ちが少しでも伝われば嬉しい」
「はい……はい! 心を打たれるほど強く伝わりました!」

 涙ながらに、隣に座ったルイ様に抱き着く。
 こんな素晴らしい人と結ばれたのは、まさしく奇跡だ。
 心の中で運命に感謝する。
 ルイ様とめぐり逢わせてくれて本当にありがとうと……。
 みんなもまた、涙を浮かべながら私たちを見守ってくれていた。
 涙が落ち着いたところで、ルイ様がみんなに言った。

「では、いただこう」
「「いただきま~す」」

 みんな、一口食べた瞬間満面の笑みを浮かべる。
 それだけでどれだけおいしいのかよくわかった。
 私も喜びの余韻に浸りながらケーキを食べようとしたとき、ルイ様が私に言った。
 一欠けらのケーキをフォークに乗せて。

「ポーラ、食べなさい」
「えっ、い、いや、しかし……」
「いいから、遠慮しないで」

 誰かに食べさせてもらうのは初めてだ。
 ましてやケーキなんて……。
 恥ずかしくてしょうがなかったけど、思い切ってパクッと食べた。
 今の心境のように甘くて幸せな味が広がる。
 おいしさに震えた後、私もケーキを一口分切り取った。

「あの……ルイ様もどうぞ」

 自分だけ食べさせてもらうのはなんだか恐縮だったので、私の分のケーキをルイ様に差し出す。
 途端に、ルイ様はテレテレと恥ずかしそうにする。
 さっきまではあんなにキリッとされていたのに。

「い、いや、私は大丈夫だ……」
「どうか、そう言わずに」

 ルイ様はしばし恥ずかしがった後、私と同じようにパクッと食べた。

「……うまいな」
「自分で食べるより何倍もおいしく感じます」

 私とルイ様は、互いにケーキを食べさせ合う。

「「……尊い!」」

 エヴァちゃんとアレン君、マルグリットさんは空に向かって叫び、ガルシオさんは前足で顔を押さえた隙間から見ていた。
 いかがしいことは何もないですよ。
 幸せなケーキを味わい、嬉しさが胸にあふれるとともに改めて思った。
 言葉には人を幸せにする、とても尊い力があると……。
 これ以上ないほどに強く証明できる。
 だって……。

 ――今の私は誰よりも幸せなのだから。
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感想 9

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みんなの感想(9件)

roko
2024.08.18 roko

初めまして m(_ _)m
ただいま48話を読ませていただいております。
途中から『アレン君』が『ロッド君』に変わっているんですね (^ ^;
登場人物の少なく、また 辺境伯邸の使用人が三人だけ?というのが余りにも不自然なので見過ごしておりましたが、高位貴族のお屋敷ですので、もう少しお気遣いされた方が良いのではと愚考いたします。
心根の優しい方々が多く登場されるお話は読ませていただくと『ホッ』といたします。
これからも心に優しいお話を読ませてくださいませ。
ありがとうございます
m(_ _)m

解除
ちゃっぺ
2024.05.07 ちゃっぺ

尊い!
か~~てぇてぇ!
思わずイッキ読みしました。ありがとうございます。

2024.05.08 青空あかな

ご感想ありがとうございます!嬉しいです!

解除
秋
2024.05.04
ネタバレ含む
2024.05.04 青空あかな

ありがとうございます!😆
詩の違いを感じ取っていただいて本当に嬉しいです(≧▽≦)
こちらこそ読んでいただいてありがとうございました!💓

解除

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