87 / 88
第87話:言葉②
しおりを挟む
「みんな、今日はありがとう。君たちのおかげで忘れられない一日になる。感謝の気持ちでいっぱいだ」
「「辺境伯様ー!」」
『硬いぞ、ルイー!』
「いつだって笑顔を忘れるんじゃないよー!」
ルイ様の挨拶に、みんなはわいわいと盛り上がる。
ここにいるだけで楽しくて嬉しくて、この時間がずっと続けばいいのにと思う。
「さて、食事を始める前に、いつも私を支えてくれる大事な妻ポーラに贈りたいものがある。……私の詩だ」
「ルイ様の詩でございますか!?」
びっくりして聞いてしまった。
「君の素晴らしい詩を聞いていると、私も自分の想いを詩にして伝えたくなったんだ。……聞いてくれるか?」
「はい、もちろんです! ルイ様の詩なんてすごく聞きたいです!」
「ま、まぁ、君みたいに出来がいいかはわからないが……」
『プレッシャーかけてやるなよ、ポーラ~』
「す、すみません!」
「「あはは」」
慌てて謝ったけど、みんな笑ってくれた。
ルイ様はこほんっと咳払いすると、懐から一枚の紙を取り出す。
どんな素敵な詩が詠われるのか、胸はドキドキでいっぱいだった。
――
私は北の当主
貝のような
無言の日々を送る
ある日
訪れるは言葉の魔術師
君が操るは見事な詩
館のあらゆる問題を
たちまち解決してくれたね
君に出会い
私は殻を破れた
無言の殻を
話さぬ意志の殻を
君のおかげで
今は思う
言葉は素晴らしいものだと
人に幸せを与えられるのだと
君に会えて
私は変われた
一歩踏み出し成長できた
君との出会いが
私の人生で最上の喜びなんだ
――
ルイ様が詩を詠い終わった瞬間、頬に熱い雫が零れるのを感じた。
一滴二滴と止めどなく流れ、気がついたらぽろぽろと涙が止まらなくなっていた。
拭いても拭いても止まる気配がない。
でも……その理由はわかる。
「ポ、ポーラ、どうしたんだっ。どこか具合でも悪いのかっ」
「いえ……違うんです。ただ、本当に嬉しくて……嬉しくてしょうがないんです。こんな素敵な詩を……私は聞いたことがありません」
胸が嬉しさでいっぱいになって、収まりきらない思いが涙となってどんどん零れる。
感動で喜びで、それ以上の言葉が出てこない。
「「辺境伯様ー!」」
『硬いぞ、ルイー!』
「いつだって笑顔を忘れるんじゃないよー!」
ルイ様の挨拶に、みんなはわいわいと盛り上がる。
ここにいるだけで楽しくて嬉しくて、この時間がずっと続けばいいのにと思う。
「さて、食事を始める前に、いつも私を支えてくれる大事な妻ポーラに贈りたいものがある。……私の詩だ」
「ルイ様の詩でございますか!?」
びっくりして聞いてしまった。
「君の素晴らしい詩を聞いていると、私も自分の想いを詩にして伝えたくなったんだ。……聞いてくれるか?」
「はい、もちろんです! ルイ様の詩なんてすごく聞きたいです!」
「ま、まぁ、君みたいに出来がいいかはわからないが……」
『プレッシャーかけてやるなよ、ポーラ~』
「す、すみません!」
「「あはは」」
慌てて謝ったけど、みんな笑ってくれた。
ルイ様はこほんっと咳払いすると、懐から一枚の紙を取り出す。
どんな素敵な詩が詠われるのか、胸はドキドキでいっぱいだった。
――
私は北の当主
貝のような
無言の日々を送る
ある日
訪れるは言葉の魔術師
君が操るは見事な詩
館のあらゆる問題を
たちまち解決してくれたね
君に出会い
私は殻を破れた
無言の殻を
話さぬ意志の殻を
君のおかげで
今は思う
言葉は素晴らしいものだと
人に幸せを与えられるのだと
君に会えて
私は変われた
一歩踏み出し成長できた
君との出会いが
私の人生で最上の喜びなんだ
――
ルイ様が詩を詠い終わった瞬間、頬に熱い雫が零れるのを感じた。
一滴二滴と止めどなく流れ、気がついたらぽろぽろと涙が止まらなくなっていた。
拭いても拭いても止まる気配がない。
でも……その理由はわかる。
「ポ、ポーラ、どうしたんだっ。どこか具合でも悪いのかっ」
「いえ……違うんです。ただ、本当に嬉しくて……嬉しくてしょうがないんです。こんな素敵な詩を……私は聞いたことがありません」
胸が嬉しさでいっぱいになって、収まりきらない思いが涙となってどんどん零れる。
感動で喜びで、それ以上の言葉が出てこない。
509
お気に入りに追加
1,511
あなたにおすすめの小説
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
竜人王の伴侶
朧霧
恋愛
竜の血を継ぐ国王の物語
国王アルフレッドが伴侶に出会い主人公男性目線で話が進みます
作者独自の世界観ですのでご都合主義です
過去に作成したものを誤字などをチェックして投稿いたしますので不定期更新となります(誤字、脱字はできるだけ注意いたしますがご容赦ください)
40話前後で完結予定です
拙い文章ですが、お好みでしたらよろしければご覧ください
4/4にて完結しました
ご覧いただきありがとうございました
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
来世はあなたと結ばれませんように【再掲載】
倉世モナカ
恋愛
病弱だった私のために毎日昼夜問わず看病してくれた夫が過労により先に他界。私のせいで死んでしまった夫。来世は私なんかよりもっと素敵な女性と結ばれてほしい。それから私も後を追うようにこの世を去った。
時は来世に代わり、私は城に仕えるメイド、夫はそこに住んでいる王子へと転生していた。前世の記憶を持っている私は、夫だった王子と距離をとっていたが、あれよあれという間に彼が私に近づいてくる。それでも私はあなたとは結ばれませんから!
再投稿です。ご迷惑おかけします。
この作品は、カクヨム、小説家になろうにも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる