86 / 88
第86話:言葉①
しおりを挟む
「ポーラちゃん、辺境伯様、おめでとうございまーす!」
「お二人とも最高のカップルです!」
『ようやくこの日が来たか。俺はもうやきもきしなくていいんだな』
「あたしは嬉しくて目から汗が止まらないよ」
お庭にみんなの歓声が響く。
エヴァちゃんもアレン君もガルシオさんもマルグリットさんも、みんな弾けるような笑顔で私たちを待つ。
隣に立つ男性の腕を取ると、微笑みで返してくれた。
お屋敷から伸びる真っ白のバージンロードに、そっと足を乗せ歩き出す。
……ルイ様と一緒に。
今日は朝から雲一つない快晴で、穏やかな陽光と爽やかな風に気持ちが明るくなる。
「晴れてよかったですね」
「ああ、まったくだ。天も私たちを祝ってくれているんだろうな」
ゆっくりと歩きながら言葉を交わす。
私たちにとって大事な一日がこれから始まる。
流星群の日に気持ちが通じ合ってから程なくして、ルイ様が婚約式を開こうと言ってくださったのだ。
結婚式は少し先になってしまいそうだけど、その代わりにお屋敷で食事を……ということだった。
歩きながら、ふと気になっていたことをルイ様に尋ねる。
「あの……このドレスは私に似合っているでしょうか……」
今日の私は、純白のドレスに身を包んでいる。
エヴァちゃんとアレン君が街で一緒に見繕ってくれたのだ。
……お姫様が着るみたいなふんわりして、かわゆいドレスを。
清廉潔白を具現化したかのように上品なのに、センスの良いレースで華やかに彩られている。
それでいて派手でなく、謙虚さと豪華さが同居しており……要するに、大変にオシャレで素晴らしいドレスであった。
たしかにかわゆくて素敵なのだけど、私みたいな地味な人間が着こなせているか、どうしても不安になってしまう。
少しばかり緊張しながら聞いたら、ルイ様は穏やかな微笑みで答えてくれた。
「君ほどそのドレスが似合う女性は他にいないよ」
「ありがとうございます……。なんだか、安心しました」
「綺麗だ、ポーラ」
綺麗と言われ、顔が熱くなるのを感じる。
深呼吸して高鳴る鼓動を抑えながら、私も素直な想いを伝えた。
「ルイ様も……いつもよりずっとカッコよくて素敵です」
「ありがとう。最高の褒め言葉だ」
優しく微笑まれ、さらに顔が熱くなる。
ルイ様もいつもの黒っぽい服ではなく、白に金の装飾がついた服装に身を包んでいる。
ありきたりな表現になってしまうけど、本当に王子様みたいで、私はドキドキしっぱなしだった。
そんな私たちを、みんなは嬉しそうに眺める。
自分の幸せを祝ってくれる人がこんなにいて、私は本当に嬉しいし幸せ者だと思う。
バージンロードを歩き終わると、エヴァちゃんとアレン君が待っていた。
「「では、ケーキの入刀をお願いしまーす!」」
二人はひときわ大きなテーブルの前に、私とルイ様を案内する。
テーブルに乗っかるは、特大の三段重ねケーキ。
私たちの格好と同じ、清潔な白色のクリームに纏われた美しいケーキだ。
目にも鮮やかで健康的な赤い苺や、落ち着く深い紫色のブルーベリーなど、フルーツが盛りだくさんで、見るだけで元気があふれる。
お屋敷のみんなが、一生懸命作ってくれた。
私も手伝おうとしたけど、すごい勢いで断られちゃったっけ。
お屋敷での日々を思い出しながら、ルイ様とケーキナイフを握る。
「ポーラ、一緒に切ろう」
「はい」
ルイ様の手に自分の手を乗せる。
優しくて力強い、私をどんな敵からも守ってくれる大きな手。
――これからは私もルイ様を守るんだ。……妻として。
決心を固めながらケーキに入刀する。
お庭は一段と盛り上がり、みんなの大歓声が鳴り響く。
「ポーラちゃん、今までで一番綺麗だよ!」
「尊くて眩しくて最高のワンシーンです!」
『ルイも大人になったなぁ!』
「あたしはもう涙で前が見えないよ!」
みんな、ハンカチで涙を拭いては拍手してくれる。
ケーキを取り分け、準備が整ったところでルイ様がそっと立ち上がった。
お庭は静かになり、厳かな静寂が包む。
「お二人とも最高のカップルです!」
『ようやくこの日が来たか。俺はもうやきもきしなくていいんだな』
「あたしは嬉しくて目から汗が止まらないよ」
お庭にみんなの歓声が響く。
エヴァちゃんもアレン君もガルシオさんもマルグリットさんも、みんな弾けるような笑顔で私たちを待つ。
隣に立つ男性の腕を取ると、微笑みで返してくれた。
お屋敷から伸びる真っ白のバージンロードに、そっと足を乗せ歩き出す。
……ルイ様と一緒に。
今日は朝から雲一つない快晴で、穏やかな陽光と爽やかな風に気持ちが明るくなる。
「晴れてよかったですね」
「ああ、まったくだ。天も私たちを祝ってくれているんだろうな」
ゆっくりと歩きながら言葉を交わす。
私たちにとって大事な一日がこれから始まる。
流星群の日に気持ちが通じ合ってから程なくして、ルイ様が婚約式を開こうと言ってくださったのだ。
結婚式は少し先になってしまいそうだけど、その代わりにお屋敷で食事を……ということだった。
歩きながら、ふと気になっていたことをルイ様に尋ねる。
「あの……このドレスは私に似合っているでしょうか……」
今日の私は、純白のドレスに身を包んでいる。
エヴァちゃんとアレン君が街で一緒に見繕ってくれたのだ。
……お姫様が着るみたいなふんわりして、かわゆいドレスを。
清廉潔白を具現化したかのように上品なのに、センスの良いレースで華やかに彩られている。
それでいて派手でなく、謙虚さと豪華さが同居しており……要するに、大変にオシャレで素晴らしいドレスであった。
たしかにかわゆくて素敵なのだけど、私みたいな地味な人間が着こなせているか、どうしても不安になってしまう。
少しばかり緊張しながら聞いたら、ルイ様は穏やかな微笑みで答えてくれた。
「君ほどそのドレスが似合う女性は他にいないよ」
「ありがとうございます……。なんだか、安心しました」
「綺麗だ、ポーラ」
綺麗と言われ、顔が熱くなるのを感じる。
深呼吸して高鳴る鼓動を抑えながら、私も素直な想いを伝えた。
「ルイ様も……いつもよりずっとカッコよくて素敵です」
「ありがとう。最高の褒め言葉だ」
優しく微笑まれ、さらに顔が熱くなる。
ルイ様もいつもの黒っぽい服ではなく、白に金の装飾がついた服装に身を包んでいる。
ありきたりな表現になってしまうけど、本当に王子様みたいで、私はドキドキしっぱなしだった。
そんな私たちを、みんなは嬉しそうに眺める。
自分の幸せを祝ってくれる人がこんなにいて、私は本当に嬉しいし幸せ者だと思う。
バージンロードを歩き終わると、エヴァちゃんとアレン君が待っていた。
「「では、ケーキの入刀をお願いしまーす!」」
二人はひときわ大きなテーブルの前に、私とルイ様を案内する。
テーブルに乗っかるは、特大の三段重ねケーキ。
私たちの格好と同じ、清潔な白色のクリームに纏われた美しいケーキだ。
目にも鮮やかで健康的な赤い苺や、落ち着く深い紫色のブルーベリーなど、フルーツが盛りだくさんで、見るだけで元気があふれる。
お屋敷のみんなが、一生懸命作ってくれた。
私も手伝おうとしたけど、すごい勢いで断られちゃったっけ。
お屋敷での日々を思い出しながら、ルイ様とケーキナイフを握る。
「ポーラ、一緒に切ろう」
「はい」
ルイ様の手に自分の手を乗せる。
優しくて力強い、私をどんな敵からも守ってくれる大きな手。
――これからは私もルイ様を守るんだ。……妻として。
決心を固めながらケーキに入刀する。
お庭は一段と盛り上がり、みんなの大歓声が鳴り響く。
「ポーラちゃん、今までで一番綺麗だよ!」
「尊くて眩しくて最高のワンシーンです!」
『ルイも大人になったなぁ!』
「あたしはもう涙で前が見えないよ!」
みんな、ハンカチで涙を拭いては拍手してくれる。
ケーキを取り分け、準備が整ったところでルイ様がそっと立ち上がった。
お庭は静かになり、厳かな静寂が包む。
515
お気に入りに追加
1,506
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています
綾森れん
恋愛
「リラ・プリマヴェーラ、お前と交わした婚約を破棄させてもらう!」
公爵家主催の夜会にて、リラ・プリマヴェーラ伯爵令嬢はグイード・ブライデン公爵令息から言い渡された。
「お前のような真面目くさった女はいらない!」
ギャンブルに財産を賭ける婚約者の姿に公爵家の将来を憂いたリラは、彼をいさめたのだが逆恨みされて婚約破棄されてしまったのだ。
リラとグイードの婚約は政略結婚であり、そこに愛はなかった。リラは今でも7歳のころ茶会で出会ったアルベルト王子の優しさと可愛らしさを覚えていた。しかしアルベルト王子はそのすぐあとに、毒殺されてしまった。
夜会で恥をさらし、居場所を失った彼女を救ったのは、美しい青年歌手アルカンジェロだった。
心優しいアルカンジェロに惹かれていくリラだが、彼は高い声を保つため、少年時代に残酷な手術を受けた「カストラート(去勢歌手)」と呼ばれる存在。教会は、子孫を残せない彼らに結婚を禁じていた。
禁断の恋に悩むリラのもとへ、父親が新たな婚約話をもってくる。相手の男性は親子ほども歳の離れた下級貴族で子だくさん。数年前に妻を亡くし、後妻に入ってくれる女性を探しているという、悪い条件の相手だった。
望まぬ婚姻を強いられ未来に希望を持てなくなったリラは、アルカンジェロと二人、教会の勢力が及ばない国外へ逃げ出す計画を立てる。
仮面舞踏会の夜、二人の愛は通じ合い、結ばれる。だがアルカンジェロが自身の秘密を打ち明けた。彼の正体は歌手などではなく、十年前に毒殺されたはずのアルベルト王子その人だった。
しかし再び、王権転覆を狙う暗殺者が迫りくる。
これは、愛し合うリラとアルベルト王子が二人で幸せをつかむまでの物語である。
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。
木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。
時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。
「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」
「ほう?」
これは、ルリアと義理の家族の物語。
※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。
※同じ話を別視点でしている場合があります。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる