聖なる言霊を小言と馬鹿にされ婚約破棄されましたが、普段通りに仕事していたら辺境伯様に溺愛されています

青空あかな

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第86話:言葉①

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「ポーラちゃん、辺境伯様、おめでとうございまーす!」
「お二人とも最高のカップルです!」
『ようやくこの日が来たか。俺はもうやきもきしなくていいんだな』
「あたしは嬉しくて目から汗が止まらないよ」

 お庭にみんなの歓声が響く。
 エヴァちゃんもアレン君もガルシオさんもマルグリットさんも、みんな弾けるような笑顔で私たちを待つ。
 隣に立つ男性の腕を取ると、微笑みで返してくれた。
 お屋敷から伸びる真っ白のバージンロードに、そっと足を乗せ歩き出す。
 ……ルイ様と一緒に。
 今日は朝から雲一つない快晴で、穏やかな陽光と爽やかな風に気持ちが明るくなる。

「晴れてよかったですね」
「ああ、まったくだ。天も私たちを祝ってくれているんだろうな」

 ゆっくりと歩きながら言葉を交わす。
 私たちにとって大事な一日がこれから始まる。
 流星群の日に気持ちが通じ合ってから程なくして、ルイ様が婚約式を開こうと言ってくださったのだ。
 結婚式は少し先になってしまいそうだけど、その代わりにお屋敷で食事を……ということだった。
 歩きながら、ふと気になっていたことをルイ様に尋ねる。

「あの……このドレスは私に似合っているでしょうか……」

 今日の私は、純白のドレスに身を包んでいる。
 エヴァちゃんとアレン君が街で一緒に見繕ってくれたのだ。
 ……お姫様が着るみたいなふんわりして、かわゆいドレスを。
 清廉潔白を具現化したかのように上品なのに、センスの良いレースで華やかに彩られている。
 それでいて派手でなく、謙虚さと豪華さが同居しており……要するに、大変にオシャレで素晴らしいドレスであった。
 たしかにかわゆくて素敵なのだけど、私みたいな地味な人間が着こなせているか、どうしても不安になってしまう。
 少しばかり緊張しながら聞いたら、ルイ様は穏やかな微笑みで答えてくれた。

「君ほどそのドレスが似合う女性は他にいないよ」
「ありがとうございます……。なんだか、安心しました」
「綺麗だ、ポーラ」

 綺麗と言われ、顔が熱くなるのを感じる。
 深呼吸して高鳴る鼓動を抑えながら、私も素直な想いを伝えた。

「ルイ様も……いつもよりずっとカッコよくて素敵です」
「ありがとう。最高の褒め言葉だ」

 優しく微笑まれ、さらに顔が熱くなる。
 ルイ様もいつもの黒っぽい服ではなく、白に金の装飾がついた服装に身を包んでいる。
 ありきたりな表現になってしまうけど、本当に王子様みたいで、私はドキドキしっぱなしだった。
 そんな私たちを、みんなは嬉しそうに眺める。
 自分の幸せを祝ってくれる人がこんなにいて、私は本当に嬉しいし幸せ者だと思う。
 バージンロードを歩き終わると、エヴァちゃんとアレン君が待っていた。

「「では、ケーキの入刀をお願いしまーす!」」

 二人はひときわ大きなテーブルの前に、私とルイ様を案内する。
 テーブルに乗っかるは、特大の三段重ねケーキ。
 私たちの格好と同じ、清潔な白色のクリームに纏われた美しいケーキだ。
 目にも鮮やかで健康的な赤い苺や、落ち着く深い紫色のブルーベリーなど、フルーツが盛りだくさんで、見るだけで元気があふれる。
 お屋敷のみんなが、一生懸命作ってくれた。
 私も手伝おうとしたけど、すごい勢いで断られちゃったっけ。
 お屋敷での日々を思い出しながら、ルイ様とケーキナイフを握る。

「ポーラ、一緒に切ろう」
「はい」

 ルイ様の手に自分の手を乗せる。
 優しくて力強い、私をどんな敵からも守ってくれる大きな手。

 ――これからは私もルイ様を守るんだ。……妻として。

 決心を固めながらケーキに入刀する。
 お庭は一段と盛り上がり、みんなの大歓声が鳴り響く。

「ポーラちゃん、今までで一番綺麗だよ!」
「尊くて眩しくて最高のワンシーンです!」
『ルイも大人になったなぁ!』
「あたしはもう涙で前が見えないよ!」

 みんな、ハンカチで涙を拭いては拍手してくれる。
 ケーキを取り分け、準備が整ったところでルイ様がそっと立ち上がった。
 お庭は静かになり、厳かな静寂が包む。
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