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第80話:流星群②

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「ルイ様……こんなに美しい光景を見たことがありません。流星群がこれほどまでに神秘的なものだとは思いませんでした。私は今日この日を、一生忘れないと思います」
〔気に入ってくれてよかった。雲を掃った甲斐があるというものだ〕
「この素晴らしい……まるで星がダンスを踊っているかのような景色を見ると、流れ星が願いごとを叶えてくれるという言い伝えは間違いじゃないと実感します」

 それこそ、女神や天使が人間たちに与えてくださった奇跡なんじゃないかと、思わせるほど美しい。
 流れ星に願いを祈れば叶うだなんて、先人たちの感性は豊かだなぁ。
 丘の下からは、姿は見えないもののエヴァちゃんたちの声が聞こえた。

「我が弟がもっと有能になりますように!」
「姉さんがもっと丁寧に扱ってくれますように!」
『毎日うまい肉が食えますように!』
「この先もずっとルイとポーラを観察できますように!」

 みんなはすっかり夢中になって、夜空にお願いごとを祈っているようだ。
 祈りというより、もはや叫びに近い。
 あれだけ大きな声で叫べば、流れ星にも届くはずね。
 みんなの祈りを楽しい気分で聞いていると、ルイ様が私に尋ねた。

〔ポーラはどんな願いごとをするんだ?〕
「そうですね……。やっぱり、お屋敷の人たちといつまでも一緒にいられるように……というお願いを祈ろうと思います」

 “ロコルル”に来て、お屋敷に来て、ルイ様に出会って、みんなと出会って……私は本当に尊くて幸せな日々を送らせてもらっている。

 そう思っていたけど、夜空を見上げるルイ様を見ると、心臓がドキリと高鳴った。
 あの……“久遠の樹”を癒した後、身体を受け止められたときと同じように……。
 いつしか、心の奥底にあった気持ちをはっきりと自覚するようになった。
 何より、私は……。

 ――ルイ様とずっと一緒にいたい。

 一番正直な気持ちだ。
 みんなも大事だけど、ルイ様はさらに別の意味で大切だった。
 でも、これ以上の関係性を望むつもりはない。
 私などのような人間は、ルイ様の隣に立つべきではない。
 今みたいな関係が一番いいのだろうから。
 むしろ、こうして一緒に過ごせるだけで幸せだ。
 それ以上を望んでは分不相応というもの……。

〔……ポーラ、君に伝えておきたい話がある〕

 頭の中であれこれ考えていると、ルイ様が姿勢を正した。
 流星群を眺めていた穏やかな顔は消え、代わりに大変真面目な顔で魔法文字を書かれる。

「は、はい、何でしょうか」

 和やかだった雰囲気が変わり、私も姿勢を正す。
 ルイ様はしばし、硬い表情のままテーブルの一点を見つめていたけど、やがて意を決したように私を真正面から見た。

〔君に伝えておきたい話とは……私が話さない理由だ〕

 静寂が包む中、魔法文字が静かに浮かんでいた。
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