80 / 88
第80話:流星群②
しおりを挟む
「ルイ様……こんなに美しい光景を見たことがありません。流星群がこれほどまでに神秘的なものだとは思いませんでした。私は今日この日を、一生忘れないと思います」
〔気に入ってくれてよかった。雲を掃った甲斐があるというものだ〕
「この素晴らしい……まるで星がダンスを踊っているかのような景色を見ると、流れ星が願いごとを叶えてくれるという言い伝えは間違いじゃないと実感します」
それこそ、女神や天使が人間たちに与えてくださった奇跡なんじゃないかと、思わせるほど美しい。
流れ星に願いを祈れば叶うだなんて、先人たちの感性は豊かだなぁ。
丘の下からは、姿は見えないもののエヴァちゃんたちの声が聞こえた。
「我が弟がもっと有能になりますように!」
「姉さんがもっと丁寧に扱ってくれますように!」
『毎日うまい肉が食えますように!』
「この先もずっとルイとポーラを観察できますように!」
みんなはすっかり夢中になって、夜空にお願いごとを祈っているようだ。
祈りというより、もはや叫びに近い。
あれだけ大きな声で叫べば、流れ星にも届くはずね。
みんなの祈りを楽しい気分で聞いていると、ルイ様が私に尋ねた。
〔ポーラはどんな願いごとをするんだ?〕
「そうですね……。やっぱり、お屋敷の人たちといつまでも一緒にいられるように……というお願いを祈ろうと思います」
“ロコルル”に来て、お屋敷に来て、ルイ様に出会って、みんなと出会って……私は本当に尊くて幸せな日々を送らせてもらっている。
そう思っていたけど、夜空を見上げるルイ様を見ると、心臓がドキリと高鳴った。
あの……“久遠の樹”を癒した後、身体を受け止められたときと同じように……。
いつしか、心の奥底にあった気持ちをはっきりと自覚するようになった。
何より、私は……。
――ルイ様とずっと一緒にいたい。
一番正直な気持ちだ。
みんなも大事だけど、ルイ様はさらに別の意味で大切だった。
でも、これ以上の関係性を望むつもりはない。
私などのような人間は、ルイ様の隣に立つべきではない。
今みたいな関係が一番いいのだろうから。
むしろ、こうして一緒に過ごせるだけで幸せだ。
それ以上を望んでは分不相応というもの……。
〔……ポーラ、君に伝えておきたい話がある〕
頭の中であれこれ考えていると、ルイ様が姿勢を正した。
流星群を眺めていた穏やかな顔は消え、代わりに大変真面目な顔で魔法文字を書かれる。
「は、はい、何でしょうか」
和やかだった雰囲気が変わり、私も姿勢を正す。
ルイ様はしばし、硬い表情のままテーブルの一点を見つめていたけど、やがて意を決したように私を真正面から見た。
〔君に伝えておきたい話とは……私が話さない理由だ〕
静寂が包む中、魔法文字が静かに浮かんでいた。
〔気に入ってくれてよかった。雲を掃った甲斐があるというものだ〕
「この素晴らしい……まるで星がダンスを踊っているかのような景色を見ると、流れ星が願いごとを叶えてくれるという言い伝えは間違いじゃないと実感します」
それこそ、女神や天使が人間たちに与えてくださった奇跡なんじゃないかと、思わせるほど美しい。
流れ星に願いを祈れば叶うだなんて、先人たちの感性は豊かだなぁ。
丘の下からは、姿は見えないもののエヴァちゃんたちの声が聞こえた。
「我が弟がもっと有能になりますように!」
「姉さんがもっと丁寧に扱ってくれますように!」
『毎日うまい肉が食えますように!』
「この先もずっとルイとポーラを観察できますように!」
みんなはすっかり夢中になって、夜空にお願いごとを祈っているようだ。
祈りというより、もはや叫びに近い。
あれだけ大きな声で叫べば、流れ星にも届くはずね。
みんなの祈りを楽しい気分で聞いていると、ルイ様が私に尋ねた。
〔ポーラはどんな願いごとをするんだ?〕
「そうですね……。やっぱり、お屋敷の人たちといつまでも一緒にいられるように……というお願いを祈ろうと思います」
“ロコルル”に来て、お屋敷に来て、ルイ様に出会って、みんなと出会って……私は本当に尊くて幸せな日々を送らせてもらっている。
そう思っていたけど、夜空を見上げるルイ様を見ると、心臓がドキリと高鳴った。
あの……“久遠の樹”を癒した後、身体を受け止められたときと同じように……。
いつしか、心の奥底にあった気持ちをはっきりと自覚するようになった。
何より、私は……。
――ルイ様とずっと一緒にいたい。
一番正直な気持ちだ。
みんなも大事だけど、ルイ様はさらに別の意味で大切だった。
でも、これ以上の関係性を望むつもりはない。
私などのような人間は、ルイ様の隣に立つべきではない。
今みたいな関係が一番いいのだろうから。
むしろ、こうして一緒に過ごせるだけで幸せだ。
それ以上を望んでは分不相応というもの……。
〔……ポーラ、君に伝えておきたい話がある〕
頭の中であれこれ考えていると、ルイ様が姿勢を正した。
流星群を眺めていた穏やかな顔は消え、代わりに大変真面目な顔で魔法文字を書かれる。
「は、はい、何でしょうか」
和やかだった雰囲気が変わり、私も姿勢を正す。
ルイ様はしばし、硬い表情のままテーブルの一点を見つめていたけど、やがて意を決したように私を真正面から見た。
〔君に伝えておきたい話とは……私が話さない理由だ〕
静寂が包む中、魔法文字が静かに浮かんでいた。
443
お気に入りに追加
1,513
あなたにおすすめの小説
「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。
window
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。
「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」
ある日ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。
木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。
時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。
「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」
「ほう?」
これは、ルリアと義理の家族の物語。
※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。
※同じ話を別視点でしている場合があります。
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます
柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。
社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。
※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。
※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意!
※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。
虐待され続けた公爵令嬢は身代わり花嫁にされました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
カチュアは返事しなかった。
いや、返事することができなかった。
下手に返事すれば、歯や鼻の骨が折れるほどなぐられるのだ。
その表現も正しくはない。
返事をしなくて殴られる。
何をどうしようと、何もしなくても、殴る蹴るの暴行を受けるのだ。
マクリンナット公爵家の長女カチュアは、両親から激しい虐待を受けて育った。
とは言っても、母親は血のつながった実の母親ではない。
今の母親は後妻で、公爵ルイスを誑かし、カチュアの実母ミレーナを毒殺して、公爵夫人の座を手に入れていた。
そんな極悪非道なネーラが後妻に入って、カチュアが殺されずにすんでいるのは、ネーラの加虐心を満たすためだけだった。
食事を与えずに餓えで苛み、使用人以下の乞食のような服しか与えずに使用人と共に嘲笑い、躾という言い訳の元に死ぬ直前まで暴行を繰り返していた。
王宮などに連れて行かなければいけない場合だけ、治癒魔法で体裁を整え、屋敷に戻ればまた死の直前まで暴行を加えていた。
無限地獄のような生活が、ネーラが後妻に入ってから続いていた。
何度か自殺を図ったが、死ぬことも許されなかった。
そんな虐待を、実の父親であるマクリンナット公爵ルイスは、酒を飲みながらニタニタと笑いながら見ていた。
だがそんあ生き地獄も終わるときがやってきた。
マクリンナット公爵家どころか、リングストン王国全体を圧迫する獣人の強国ウィントン大公国が、リングストン王国一の美女マクリンナット公爵令嬢アメリアを嫁によこせと言ってきたのだ。
だが極悪非道なネーラが、そのような条件を受け入れるはずがなかった。
カチュアとは真逆に、舐めるように可愛がり、好き勝手我儘放題に育てた、ネーラそっくりの極悪非道に育った実の娘、アメリアを手放すはずがなかったのだ。
ネーラはカチュアを身代わりに送り込むことにした。
絶対にカチュアであることを明かせないように、いや、何のしゃべれないように、舌を切り取ってしまったのだ。
奥様はエリート文官
神田柊子
恋愛
【2024/6/19:完結しました】【2024/11/21:おまけSS追加中】
王太子の筆頭補佐官を務めていたアニエスは、待望の第一子を妊娠中の王太子妃の不安解消のために退官させられ、辺境伯との婚姻の王命を受ける。
辺境伯領では自由に領地経営ができるのではと考えたアニエスは、辺境伯に嫁ぐことにした。
初対面で迎えた結婚式、そして初夜。先に寝ている辺境伯フィリップを見て、アニエスは「これは『君を愛することはない』なのかしら?」と人気の恋愛小説を思い出す。
さらに、辺境伯領には問題も多く・・・。
見た目は可憐なバリキャリ奥様と、片思いをこじらせてきた騎士の旦那様。王命で結婚した夫婦の話。
-----
西洋風異世界。転移・転生なし。
三人称。視点は予告なく変わります。
-----
※R15は念のためです。
※小説家になろう様にも掲載中。
【2024/6/10:HOTランキング女性向け1位にランクインしました!ありがとうございます】
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる