78 / 88
第78話:再びの日常
しおりを挟む
「とうとう王様もポーラちゃんの力を知るところになったんだね。友人として私も誇らしいよ」
「ポーラさんほど素晴らしい力の持ち主は、王国広しと言えども二人といないでしょう」
『“聖女”としても認められるんだろ? 表彰式にはぜひ参加したいな』
「あたしは一目見て、ポーラが特別な人間だってわかったね。そしたらどうだい。予想を遥かに超えたじゃないか」
私を褒めては納得した様子でうなずくエヴァちゃんたち四人。
王様の病気を治してから三日後。
みんなに王宮での出来事を話す日々を送っている。
今もまた、花壇の水やりをしながらせがまれていた。
「もう何度も話したのに……。これでたしか七回目……」
「『あと一回で終わりにするからっ!』」
みんな、あと一回と言いながら何度も頼むのであった。
仕方がないので、また話すことにする。
目を開けるとそこは王宮で……、と話し始めたとき、“久遠の樹”の方角からルイ様がやってこられた。
エヴァちゃんとアレン君、私はお喋りを止めて姿勢を正したけど、ガルシオさんとマルグリットさんは楽しそうに話すばかりだ。
〔ガルシオ、マルグリット。ポーラたちの仕事の邪魔をしていないだろうな。喋って仕事を邪魔してばかりじゃダメだぞ〕
『こ、こらっ、邪魔者扱いするんじゃないっ』
「ガルシオはともかく、あたしがポーラたちに迷惑をかけるわけがないだろうっ」
『俺はともかく、ってどういう意味だっ』
ガルシオさんとマルグリットさんは軽く言い合いを始めるも、これもいつもの光景であった。
本当に怒っているわけじゃないとわかるので、むしろ微笑ましいくらいだ。
そんな二人を横目に見ながら、ルイ様が大変興味深い魔法文字を書かれた。
〔今は流星群が見える時期だから、今夜あたりみんなで見ようと思うがどうだ?〕
『ああ、もうそんな時期か。時が過ぎるのは早いな』
「「辺境伯、ぜひ見たいです!」」
「良いアイデアだよ。今年は何を祈ろうかねぇ」
ルイ様の言葉に、みんなは楽しそうに話す。
オリオール家にいたときは流星群なんて見られなかったから、お話を聞いただけでワクワクしてしまった。
「ルイ様、流星群が見えるのですか?」
〔そういえば、君は“ロコルル”を訪れたのが初めてだったな。毎年この時期、“ロコルル”では流星群が見られるんだ。私も毎年楽しみにしている〕
『夜空が星でいっぱいになるくらい、流れ星が落ちるんだぞ』
「へぇ~……想像するだけで楽しみです。私、流星群なんて見たことがありませんから」
頭の中で流れ星が降り注ぐ様子を思い浮かべる。
夜空に延びる幾筋もの輝く白い線……。
そんな光景を間近に見たら、目を奪われてしまうだろう。
〔ポーラは見たことがないのか。なら、なおさらみんなで見よう。あの丘の辺りがいいと思う〕
ルイ様は西側の一角を指す。
お庭の西側を進むと緩やかな丘があり、頂上付近には吹き抜けのおしゃれな東屋が建っていた。
『いいじゃないか。広々としているから、寝っ転がるとよく見れるよな』
〔しかし、今日は朝から曇りだな。夜晴れてくれるとありがたいのだが〕
ルイ様は心配そうな表情を浮かべ、空を見上げる。
最近はずっと晴れていたのに、ここ二日ほどは曇りや雨だった。
夜まで曇りだと、せっかく流星群が流れても見えないだろう。
ルイ様のためにも晴れてほしい……。
そう思うと、やはりあれの出番がありそうだった。
「もしなんでしたら、私の【言霊】スキルで雲をどけましょうか? 天気に対して使うのは初めてですが、やってみる価値はあると思います」
今まで、晴れにしてほしいとか、雨にしてほしいと言った依頼は受けたことがなかった。
でも、やってみないと分からない。
どんなに分厚い雲でも晴れにしてしまう気概だった。
〔ありがとう。しかし、大丈夫だ。私が魔法で雲を流せばいい。君は最近ずっと頑張ってくれていたからな。少し休みなさい〕
「そうでございますか。私は全然平気ですが」
〔いや、私がやりたいんだ〕
私は一人で気合を入れていたけど、ルイ様が魔法を使ってくれることで話はまとまった。
夜が楽しみだなぁ。
「ポーラさんほど素晴らしい力の持ち主は、王国広しと言えども二人といないでしょう」
『“聖女”としても認められるんだろ? 表彰式にはぜひ参加したいな』
「あたしは一目見て、ポーラが特別な人間だってわかったね。そしたらどうだい。予想を遥かに超えたじゃないか」
私を褒めては納得した様子でうなずくエヴァちゃんたち四人。
王様の病気を治してから三日後。
みんなに王宮での出来事を話す日々を送っている。
今もまた、花壇の水やりをしながらせがまれていた。
「もう何度も話したのに……。これでたしか七回目……」
「『あと一回で終わりにするからっ!』」
みんな、あと一回と言いながら何度も頼むのであった。
仕方がないので、また話すことにする。
目を開けるとそこは王宮で……、と話し始めたとき、“久遠の樹”の方角からルイ様がやってこられた。
エヴァちゃんとアレン君、私はお喋りを止めて姿勢を正したけど、ガルシオさんとマルグリットさんは楽しそうに話すばかりだ。
〔ガルシオ、マルグリット。ポーラたちの仕事の邪魔をしていないだろうな。喋って仕事を邪魔してばかりじゃダメだぞ〕
『こ、こらっ、邪魔者扱いするんじゃないっ』
「ガルシオはともかく、あたしがポーラたちに迷惑をかけるわけがないだろうっ」
『俺はともかく、ってどういう意味だっ』
ガルシオさんとマルグリットさんは軽く言い合いを始めるも、これもいつもの光景であった。
本当に怒っているわけじゃないとわかるので、むしろ微笑ましいくらいだ。
そんな二人を横目に見ながら、ルイ様が大変興味深い魔法文字を書かれた。
〔今は流星群が見える時期だから、今夜あたりみんなで見ようと思うがどうだ?〕
『ああ、もうそんな時期か。時が過ぎるのは早いな』
「「辺境伯、ぜひ見たいです!」」
「良いアイデアだよ。今年は何を祈ろうかねぇ」
ルイ様の言葉に、みんなは楽しそうに話す。
オリオール家にいたときは流星群なんて見られなかったから、お話を聞いただけでワクワクしてしまった。
「ルイ様、流星群が見えるのですか?」
〔そういえば、君は“ロコルル”を訪れたのが初めてだったな。毎年この時期、“ロコルル”では流星群が見られるんだ。私も毎年楽しみにしている〕
『夜空が星でいっぱいになるくらい、流れ星が落ちるんだぞ』
「へぇ~……想像するだけで楽しみです。私、流星群なんて見たことがありませんから」
頭の中で流れ星が降り注ぐ様子を思い浮かべる。
夜空に延びる幾筋もの輝く白い線……。
そんな光景を間近に見たら、目を奪われてしまうだろう。
〔ポーラは見たことがないのか。なら、なおさらみんなで見よう。あの丘の辺りがいいと思う〕
ルイ様は西側の一角を指す。
お庭の西側を進むと緩やかな丘があり、頂上付近には吹き抜けのおしゃれな東屋が建っていた。
『いいじゃないか。広々としているから、寝っ転がるとよく見れるよな』
〔しかし、今日は朝から曇りだな。夜晴れてくれるとありがたいのだが〕
ルイ様は心配そうな表情を浮かべ、空を見上げる。
最近はずっと晴れていたのに、ここ二日ほどは曇りや雨だった。
夜まで曇りだと、せっかく流星群が流れても見えないだろう。
ルイ様のためにも晴れてほしい……。
そう思うと、やはりあれの出番がありそうだった。
「もしなんでしたら、私の【言霊】スキルで雲をどけましょうか? 天気に対して使うのは初めてですが、やってみる価値はあると思います」
今まで、晴れにしてほしいとか、雨にしてほしいと言った依頼は受けたことがなかった。
でも、やってみないと分からない。
どんなに分厚い雲でも晴れにしてしまう気概だった。
〔ありがとう。しかし、大丈夫だ。私が魔法で雲を流せばいい。君は最近ずっと頑張ってくれていたからな。少し休みなさい〕
「そうでございますか。私は全然平気ですが」
〔いや、私がやりたいんだ〕
私は一人で気合を入れていたけど、ルイ様が魔法を使ってくれることで話はまとまった。
夜が楽しみだなぁ。
497
お気に入りに追加
1,511
あなたにおすすめの小説
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
私が妻です!
ミカン♬
恋愛
幼い頃のトラウマで男性が怖いエルシーは夫のヴァルと結婚して2年、まだ本当の夫婦には成っていない。
王都で一人暮らす夫から連絡が途絶えて2か月、エルシーは弟のような護衛レノを連れて夫の家に向かうと、愛人と赤子と暮らしていた。失意のエルシーを狙う従兄妹のオリバーに王都でも襲われる。その時に助けてくれた侯爵夫人にお世話になってエルシーは生まれ変わろうと決心する。
侯爵家に離婚届けにサインを求めて夫がやってきた。
そこに王宮騎士団の副団長エイダンが追いかけてきて、夫の様子がおかしくなるのだった。
世界観など全てフワっと設定です。サクっと終わります。
5/23 完結に状況の説明を書き足しました。申し訳ありません。
★★★なろう様では最後に閑話をいれています。
脱字報告、応援して下さった皆様本当に有難うございました。
他のサイトにも投稿しています。
竜人王の伴侶
朧霧
恋愛
竜の血を継ぐ国王の物語
国王アルフレッドが伴侶に出会い主人公男性目線で話が進みます
作者独自の世界観ですのでご都合主義です
過去に作成したものを誤字などをチェックして投稿いたしますので不定期更新となります(誤字、脱字はできるだけ注意いたしますがご容赦ください)
40話前後で完結予定です
拙い文章ですが、お好みでしたらよろしければご覧ください
4/4にて完結しました
ご覧いただきありがとうございました
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる