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第77話:喜びと急転直下(Side:シルヴィー⑥)②

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「さあ、今すぐここから出してもらおうか」
「ミスで収容してしまうなんて、あなたたちはどんな罪に問われるのでしょうねぇ」

 衛兵たちは何も言わない。
 自分の犯した間違いを心の中で反省しているようね。
 まぁ、床に這いつくばって謝れば許さないことも……。

「こいつらを取り押さえろ!」
「「えっ……ど、どういう……!?」」

 あろうことか、衛兵はあたくしとルシアン様を床に押しつける。
 激しく顔をぶつけた。
 謝罪の言葉をかけられることもなく、あっという間にぐるぐると縄で縛られ、身動きが取れなくなってしまった。
 突然のことに混乱してしょうがない。

「ダングレーム家の人間に向かって、よくもこんな手荒な真似ができたな! お前らを訴えてやるぞ!」
「そうよ! 今すぐ解放しなさい! ここから出すの!」

 ルシアン様と一緒に叫ぶ。
 てっきり解放されると思っていたのに、逆に縛られるなんてぬか喜びさせられた気分だ。
 絶対に許せない。

「解放するわけがないだろ。お前たちのせいで王様は死ぬところだったんだぞ」

 再確認するように言われた。
 心臓がドキリと鼓動する。

「だ、だから、それはもういいでしょうがっ。病気は治ったのだからっ」
「お前たちがポーラ嬢を不当に婚約破棄して追い出したことも明らかになっているぞ。これから裁きの時間が始まる。覚悟しろ」
「「なっ……!」」

 衛兵は淡々と告げる。
 ま、まずい……お義姉様の件まで明らかにされてしまった。
 正当な理由がない婚約破棄は重い罪に問われる。
 家からの追い出しもまたしかり。
 王様の一件も合わせると、いったいどれほどの罪になるのだ。
 心がひんやりし始めたとき、衛兵の予期せぬ言葉が耳に飛び込んだ。

「王様は……ポーラ嬢が救ってくださったんだよ! あの方がいなかったら、今ごろ王国は大変なことになっていただろうな」

 やけに静かに聞こえた。
 耳を通ったものの、理解するまで少し時間がかかった。
 王様、ポーラ嬢、救って……。
 単語が途切れ途切れに反響する。
 要約すると、それはつまり……。

 ――あたくしはお義姉様に命を救われたということ? ずっと小馬鹿にしてきたお義姉様に?

 そう自覚した瞬間、かつてないほどの怒りが心の底からわき上がる。

「そんなはずはないでしょうがあああ!」
「「おい、暴れるな! こいつを取り押さえるんだ!」」

 興奮と怒りが身を焦がす。
 衛兵たちがあたくしを床に押さえつける。
 ふざけんじゃないわよ、あたくしはこんなところで終わる人間ではない。
 偉い貴族と結婚するんだから。
 抵抗するも徐々に呼吸が苦しくなる。
 まだよ……まだ……ここから……。
 ぱたりと、あたくしは意識を失った。
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