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第75話:なぜあたくしが……?(Side:シルヴィー⑤)②
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王様の……危篤?
この人たちは何を言っているの。
あたくしの詩で完治したはずでしょうが。
「は……はぁ!? 危篤ですって!? なによ、それ!」
「だから、胸の持病が急激に悪化したんだ! 宮殿直属の医術師と薬師が調べた結果、お前の詩が原因だと判明された!」
衛兵の言葉は、なおもあたくしの心に突き刺さる。
あり得ないが故に、強い衝撃を伴った。
この人たちは嘘を言っているんじゃないかしら。
そうよ、きっとそう。
とても信じられない。
混乱していたら、ルシアン様が衛兵に詰め寄った。
「おい、人の婚約者に好き勝手言ってんじゃねえよ。身の程を弁えろ、三流どもが」
あら、ルシアン様にしてはなかなかやるじゃない。
いつもの偉そうな感じが何倍にも増し、威圧感を放ちながら衛兵を睨む。
「誰だ!」
「ダングレーム家のルシアンだよ。俺を知らねえとはいい度胸だな」
「シルヴィー嬢は婚約者と言ったな! 貴様も来い! 将来、妻となる者の監督不届きだ!」
「は!? 何を意味のわからないことを言ってやがる! ……おい、やめろ!」
あろうことか、衛兵たちはルシアン様も取り押さえる。
数の差もあって、簡単に捕まってしまった。
「こいつらを宮殿に連れて行くぞ!」
「「はっ!」」
そのまま、外の馬車に押し込まれた。
あんなに乗りたかった馬車なのに、今では乗りたい気持ちなどまったくない。
「早く降ろしてよ! なぜ、あたくしがこんな目に遭わないといけないの!」
「俺はダングレーム家の長男だぞ! 今すぐ降ろせ! タダじゃすまさないからな!」
あたくしたちの叫び声など聞こえないかのように、馬車はすぐさま走り出した。
王様が危篤になった……しかも、あたくしの詩が原因なんて……そんなの嘘に決まっているわ。
□□□
王宮に着くと、わけもわからぬまま別棟の塔に連れて行かれた。
灰色の無機質で殺風景な塔……。
あそこは悪人が裁きを待つ収容施設じゃないの。
どうして、あたくしたちが……。
絶対に収容されてなるものですか。
力の限り抵抗しようとしたとき、王宮前の広場から必死の声が響いた。
「王様はもう瀕死の状態らしいぞ! このままじゃ明日の夜明けが迎えるかわからない!」
「冒険者ギルドの魔法使いにもあたっていますが、回復魔法は難しいこともあり優秀な人材が見つかりません!」
「倉庫から全ての薬を持ってこい! 街で売っている薬も全部買い占めろ!」
緊急事態とも言える切羽詰まった雰囲気に圧倒され、何も言えなくなってしまった。
そこら中をたくさんの医術師や薬師が走り回り、明らかに平時ではない。
使用人や衛兵に至るまで、誰もが慌ただしく駆け回る。
あたくしもルシアン様も呆然としたまま、小さな収容部屋に入れられた。
衛兵が小窓越しに話す。
「メーンレント王国に死罪はない。だが、国王の暗殺ともなれば話は別だ。建国以来、お前たちは初めての死刑囚になるかもな」
淡々と言うと、衛兵は小窓を閉じた。
「お、おい……今の聞いたか……?」
「こ、国王の暗殺に……死罪……?」
王様は本当に病気が悪化したのだ。
昨日までは自分で歩けるほど元気そうだったのに。
原因jはあたくしの詩ってこと?
も、もしかして、あたくしたちは……。
――処刑されるの?
その可能性に気づいたとき、急速に心臓がドキドキしてくる。
冷や汗が流れ、呼吸は浅くなった。
あたくしはもう、死の恐怖で身を震わすことしかできなかった。。
そう思っていたら、いきなりあたくしの腕を掴んだ。
「今すぐ宮殿に来い!」
「いたっ! ちょっと、引っ張らないでよっ!」
ぐいぐいぐいっと、有無を言わさぬ力強さで扉へと引っ張る。
突然、麗しきレディの腕を掴むなんて、この醜男はどこまで失礼なの。
しかも、周りの衛兵まであたくしを引っ張り出そうとする。
いったい、何が起きているのよ。
「こら、抵抗するな! お前が書いた詩のせいで、王様は危篤状態に陥ったんだぞ!」
この人たちは何を言っているの。
あたくしの詩で完治したはずでしょうが。
「は……はぁ!? 危篤ですって!? なによ、それ!」
「だから、胸の持病が急激に悪化したんだ! 宮殿直属の医術師と薬師が調べた結果、お前の詩が原因だと判明された!」
衛兵の言葉は、なおもあたくしの心に突き刺さる。
あり得ないが故に、強い衝撃を伴った。
この人たちは嘘を言っているんじゃないかしら。
そうよ、きっとそう。
とても信じられない。
混乱していたら、ルシアン様が衛兵に詰め寄った。
「おい、人の婚約者に好き勝手言ってんじゃねえよ。身の程を弁えろ、三流どもが」
あら、ルシアン様にしてはなかなかやるじゃない。
いつもの偉そうな感じが何倍にも増し、威圧感を放ちながら衛兵を睨む。
「誰だ!」
「ダングレーム家のルシアンだよ。俺を知らねえとはいい度胸だな」
「シルヴィー嬢は婚約者と言ったな! 貴様も来い! 将来、妻となる者の監督不届きだ!」
「は!? 何を意味のわからないことを言ってやがる! ……おい、やめろ!」
あろうことか、衛兵たちはルシアン様も取り押さえる。
数の差もあって、簡単に捕まってしまった。
「こいつらを宮殿に連れて行くぞ!」
「「はっ!」」
そのまま、外の馬車に押し込まれた。
あんなに乗りたかった馬車なのに、今では乗りたい気持ちなどまったくない。
「早く降ろしてよ! なぜ、あたくしがこんな目に遭わないといけないの!」
「俺はダングレーム家の長男だぞ! 今すぐ降ろせ! タダじゃすまさないからな!」
あたくしたちの叫び声など聞こえないかのように、馬車はすぐさま走り出した。
王様が危篤になった……しかも、あたくしの詩が原因なんて……そんなの嘘に決まっているわ。
□□□
王宮に着くと、わけもわからぬまま別棟の塔に連れて行かれた。
灰色の無機質で殺風景な塔……。
あそこは悪人が裁きを待つ収容施設じゃないの。
どうして、あたくしたちが……。
絶対に収容されてなるものですか。
力の限り抵抗しようとしたとき、王宮前の広場から必死の声が響いた。
「王様はもう瀕死の状態らしいぞ! このままじゃ明日の夜明けが迎えるかわからない!」
「冒険者ギルドの魔法使いにもあたっていますが、回復魔法は難しいこともあり優秀な人材が見つかりません!」
「倉庫から全ての薬を持ってこい! 街で売っている薬も全部買い占めろ!」
緊急事態とも言える切羽詰まった雰囲気に圧倒され、何も言えなくなってしまった。
そこら中をたくさんの医術師や薬師が走り回り、明らかに平時ではない。
使用人や衛兵に至るまで、誰もが慌ただしく駆け回る。
あたくしもルシアン様も呆然としたまま、小さな収容部屋に入れられた。
衛兵が小窓越しに話す。
「メーンレント王国に死罪はない。だが、国王の暗殺ともなれば話は別だ。建国以来、お前たちは初めての死刑囚になるかもな」
淡々と言うと、衛兵は小窓を閉じた。
「お、おい……今の聞いたか……?」
「こ、国王の暗殺に……死罪……?」
王様は本当に病気が悪化したのだ。
昨日までは自分で歩けるほど元気そうだったのに。
原因jはあたくしの詩ってこと?
も、もしかして、あたくしたちは……。
――処刑されるの?
その可能性に気づいたとき、急速に心臓がドキドキしてくる。
冷や汗が流れ、呼吸は浅くなった。
あたくしはもう、死の恐怖で身を震わすことしかできなかった。。
そう思っていたら、いきなりあたくしの腕を掴んだ。
「今すぐ宮殿に来い!」
「いたっ! ちょっと、引っ張らないでよっ!」
ぐいぐいぐいっと、有無を言わさぬ力強さで扉へと引っ張る。
突然、麗しきレディの腕を掴むなんて、この醜男はどこまで失礼なの。
しかも、周りの衛兵まであたくしを引っ張り出そうとする。
いったい、何が起きているのよ。
「こら、抵抗するな! お前が書いた詩のせいで、王様は危篤状態に陥ったんだぞ!」
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