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第74話:なぜあたくしが……?(Side:シルヴィー⑤)①
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「朝日が気持ちいいですわねぇ~」
王様に詩を書いた翌朝。
清々しい気持ちで、"言霊館 ver.シルヴィー"を開店した。
相変わらず客は一人もいないけど、あたくしの心は軽い。
昨晩、王様の病気は完全に治ったはずだ。
だって、あんなに素晴らしくて美しい詩を書いたんだもの。
治らないはずがないでしょう。
昨日帰宅した王様は渡した詩を読み、無事に胸の病気が完治。
王太子は至極感動し、あたくしへの想いを募らせる……。
父を救ってくれた令嬢はどんな人なんだろうと。
頭の中で妄想を膨らませていると、ドアベルがカランッと鳴った。
王宮からの迎えが来た!
猛スピードで扉を開ける。
「いらっしゃいませ、王様! その後、お加減は……なんだ、ルシアン様ですか」
「おい、なんでがっかりしてんだよ。せっかく来たやったのに」
「いえ、別に……」
王様も王太子も宮殿の衛兵もおらず、いたのはルシアン様だった。
見飽きた顔にテンションが下がる。
「相変わらず、客が一人もいねぇな」
「……嫌みでしょうかぁ? 減らず口なんて、二度と叩けないようにして差し上げましょうねぇ」
「ち、違うっ! そういうことじゃねえよっ! 王様来ねえかなと思ってさ!」
握りしめた拳を見せつけたら、ルシアン様は怯えた様子で叫んだ。
王様ねぇ……。
きっと、あたくしの活躍に便乗して取り入ろうとしているのだ。
調子の良さに辟易しちゃう。
「王様が来てもあたくしが話しますからね。ルシアン様は後ろで控えてくださいまし」
「ふざけんなよ。俺だって王様と話したいんだから。今度は俺が話す」
「ルシアン様と話すことなんて何もないと思いますわ」
「なんだとっ」
二人でああだ、こうだ言い合っていると、店の外が慌ただしくなった。
窓の外には、白と金の豪勢な馬車が見える。
扉には太陽と月の紋章が……。
「「宮殿の馬車!」」
あたくしとルシアン様は気持ちが昂ぶり、言い争いどころじゃなくなった。
とりあえず、一時休戦ね。
勢いよく扉が開かれ、何人もの衛兵が店に入った。
すかさず、あたくしたちは姿勢を正す。
リーダーと思われる衛兵が叫ぶように言う。
「シルヴィー嬢はいるか!」
「ここにおりますわ」
見ればわかるでしょうが。
ほら、さっさと王太子を出しなさいな。
王様でもいいわよ?
誰もあんたみたいな醜男には用がないのだから
衛兵が放った言葉に、思わず身体の力が抜けそうになった。
「お前が詠んだ詩のせいで、王様は危篤になったんだぞ!」
王様に詩を書いた翌朝。
清々しい気持ちで、"言霊館 ver.シルヴィー"を開店した。
相変わらず客は一人もいないけど、あたくしの心は軽い。
昨晩、王様の病気は完全に治ったはずだ。
だって、あんなに素晴らしくて美しい詩を書いたんだもの。
治らないはずがないでしょう。
昨日帰宅した王様は渡した詩を読み、無事に胸の病気が完治。
王太子は至極感動し、あたくしへの想いを募らせる……。
父を救ってくれた令嬢はどんな人なんだろうと。
頭の中で妄想を膨らませていると、ドアベルがカランッと鳴った。
王宮からの迎えが来た!
猛スピードで扉を開ける。
「いらっしゃいませ、王様! その後、お加減は……なんだ、ルシアン様ですか」
「おい、なんでがっかりしてんだよ。せっかく来たやったのに」
「いえ、別に……」
王様も王太子も宮殿の衛兵もおらず、いたのはルシアン様だった。
見飽きた顔にテンションが下がる。
「相変わらず、客が一人もいねぇな」
「……嫌みでしょうかぁ? 減らず口なんて、二度と叩けないようにして差し上げましょうねぇ」
「ち、違うっ! そういうことじゃねえよっ! 王様来ねえかなと思ってさ!」
握りしめた拳を見せつけたら、ルシアン様は怯えた様子で叫んだ。
王様ねぇ……。
きっと、あたくしの活躍に便乗して取り入ろうとしているのだ。
調子の良さに辟易しちゃう。
「王様が来てもあたくしが話しますからね。ルシアン様は後ろで控えてくださいまし」
「ふざけんなよ。俺だって王様と話したいんだから。今度は俺が話す」
「ルシアン様と話すことなんて何もないと思いますわ」
「なんだとっ」
二人でああだ、こうだ言い合っていると、店の外が慌ただしくなった。
窓の外には、白と金の豪勢な馬車が見える。
扉には太陽と月の紋章が……。
「「宮殿の馬車!」」
あたくしとルシアン様は気持ちが昂ぶり、言い争いどころじゃなくなった。
とりあえず、一時休戦ね。
勢いよく扉が開かれ、何人もの衛兵が店に入った。
すかさず、あたくしたちは姿勢を正す。
リーダーと思われる衛兵が叫ぶように言う。
「シルヴィー嬢はいるか!」
「ここにおりますわ」
見ればわかるでしょうが。
ほら、さっさと王太子を出しなさいな。
王様でもいいわよ?
誰もあんたみたいな醜男には用がないのだから
衛兵が放った言葉に、思わず身体の力が抜けそうになった。
「お前が詠んだ詩のせいで、王様は危篤になったんだぞ!」
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