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第73話:王宮にて③
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「……な、なんじゃ、急に胸がスッキリしたぞよ」
今にも死にそうだった王様が、ゆっくりとベッドの上に起き上がった。
医術師や薬師たちが、転びそうな勢いで王様の周りに集まる。
「「王様、お身体は大丈夫ですかっ!」」
「ああ、もう問題ない。あんなに苦しんでいたのが不思議なくらいじゃよ」
王様は静かに微笑みながらお話しされた。
室内を包んでいた緊張感は消えてなくなり、代わりに安堵があふれる。
医術師も薬師も衛兵も、みんな涙ながらに王様の復活を喜んだ。
ルイ様は静かに進み出ると、私を紹介してくれた。
〔こちらがポーラ・オリオール嬢です。類まれな【言霊】スキルで、王様の病気を治してくれました〕
「おおっ、そうじゃったかっ! お主がポーラ嬢とな、ワシの命を救ってくれてありがとうの。感謝してもしきれん」
「王様のご病気が治って良かったです」
私は丁寧にお辞儀をする。
【言霊】スキルがうまく効いてくれて本当に良かった。
シルヴィーの【忌み詞】スキルが主な原因だったからか、私の【言霊】スキルは効果抜群だったのかもしれない。
「ポーラ嬢、お主の詩を読んでもいいかな? ワシの命を救ってくれた詩が、どのような内容なのか確認したいのじゃ」
「はい、どうぞ」
王様に詩を書いた紙を渡す。
しばらく読んだかと思うと、王様は感嘆とした様子でため息交じりに感謝とお褒めの言葉を述べてくれた。
「読んだだけで気持ちが落ち着き、明るくなる素敵な詩じゃ。お主の詩からは人を癒そう、という想いがひしひしと伝わる」
「アキレアには“治癒”という花言葉が、そしてガーベラには“希望”という花言葉があります。シルヴィーの詩にも花が出てきたので、打ち消すよう作りました」
簡単に説明すると、王様は感心したようにうなずいていた。
「本当に素晴らしい詩をありがとう、ポーラ嬢」
「お褒めの言葉をありがとうございます。言葉には人を癒す力もあれば、傷つける力もありますから。その辺りは常に考えるようにしています」
「なるほどの。立派な心掛けじゃ」
たかが言葉だけど、使い方次第では薬にもなるし毒にもなる。
だからこそ、私たちは気をつけて扱わないといけないのだ。
改めてそう思いながら、ふとルイ様を見ると、顔が硬く強張っていた。
まるで何か辛いことを思い出しているかのような、硬くて暗い表情。
今まで一番と言っていいくらい、張りつめた表情だった。
無事に王様が元気になったのに……。
「あ、あの、ルイ様……どうされたんですか?」
〔いや、何でもない。……何でもないんだ。一緒に王様の快復を祝おう〕
打って変わって、ルイ様は笑顔を浮かべる。
その顔には先ほどの暗さは少しもない。
「まさしく、ポーラ嬢は“聖女”と言われてもおかしくない。さっそく、ポーラ嬢を讃える宴を開かなければならないの」
「い、いえ! 聖女だなんてとんでもないです! それより、お身体の快復を優先してください!」
「「そうですよ! ポーラ嬢が素晴らしいのはたしかですが、まずはお身体です!」」
あっという間に、王様は医術師と薬師に寝かされてしまった。
次々とお茶や食べ物、追加のお薬などが運び込まれ、医務室は騒がしくなる。
外からは衛兵の喜ぶ声も聞こえるので、直に王様の快復は王宮中に伝わるだろう。
ルイ様につんつんと肩をつつかれ、手元を見た。
〔王様はああ仰るが、君の力を思えば何もおかしくはないさ。君のことは、私が一番よく知っている〕
私だけに見えるような、小さい魔法文字が浮かぶ。
王様や医術師たちに褒められたときも嬉しかったけど、それ以上の嬉しさで胸がいっぱいになる。
「……ありがとうございます……ルイ様」
私とルイ様は静かな微笑みを交わした。
今にも死にそうだった王様が、ゆっくりとベッドの上に起き上がった。
医術師や薬師たちが、転びそうな勢いで王様の周りに集まる。
「「王様、お身体は大丈夫ですかっ!」」
「ああ、もう問題ない。あんなに苦しんでいたのが不思議なくらいじゃよ」
王様は静かに微笑みながらお話しされた。
室内を包んでいた緊張感は消えてなくなり、代わりに安堵があふれる。
医術師も薬師も衛兵も、みんな涙ながらに王様の復活を喜んだ。
ルイ様は静かに進み出ると、私を紹介してくれた。
〔こちらがポーラ・オリオール嬢です。類まれな【言霊】スキルで、王様の病気を治してくれました〕
「おおっ、そうじゃったかっ! お主がポーラ嬢とな、ワシの命を救ってくれてありがとうの。感謝してもしきれん」
「王様のご病気が治って良かったです」
私は丁寧にお辞儀をする。
【言霊】スキルがうまく効いてくれて本当に良かった。
シルヴィーの【忌み詞】スキルが主な原因だったからか、私の【言霊】スキルは効果抜群だったのかもしれない。
「ポーラ嬢、お主の詩を読んでもいいかな? ワシの命を救ってくれた詩が、どのような内容なのか確認したいのじゃ」
「はい、どうぞ」
王様に詩を書いた紙を渡す。
しばらく読んだかと思うと、王様は感嘆とした様子でため息交じりに感謝とお褒めの言葉を述べてくれた。
「読んだだけで気持ちが落ち着き、明るくなる素敵な詩じゃ。お主の詩からは人を癒そう、という想いがひしひしと伝わる」
「アキレアには“治癒”という花言葉が、そしてガーベラには“希望”という花言葉があります。シルヴィーの詩にも花が出てきたので、打ち消すよう作りました」
簡単に説明すると、王様は感心したようにうなずいていた。
「本当に素晴らしい詩をありがとう、ポーラ嬢」
「お褒めの言葉をありがとうございます。言葉には人を癒す力もあれば、傷つける力もありますから。その辺りは常に考えるようにしています」
「なるほどの。立派な心掛けじゃ」
たかが言葉だけど、使い方次第では薬にもなるし毒にもなる。
だからこそ、私たちは気をつけて扱わないといけないのだ。
改めてそう思いながら、ふとルイ様を見ると、顔が硬く強張っていた。
まるで何か辛いことを思い出しているかのような、硬くて暗い表情。
今まで一番と言っていいくらい、張りつめた表情だった。
無事に王様が元気になったのに……。
「あ、あの、ルイ様……どうされたんですか?」
〔いや、何でもない。……何でもないんだ。一緒に王様の快復を祝おう〕
打って変わって、ルイ様は笑顔を浮かべる。
その顔には先ほどの暗さは少しもない。
「まさしく、ポーラ嬢は“聖女”と言われてもおかしくない。さっそく、ポーラ嬢を讃える宴を開かなければならないの」
「い、いえ! 聖女だなんてとんでもないです! それより、お身体の快復を優先してください!」
「「そうですよ! ポーラ嬢が素晴らしいのはたしかですが、まずはお身体です!」」
あっという間に、王様は医術師と薬師に寝かされてしまった。
次々とお茶や食べ物、追加のお薬などが運び込まれ、医務室は騒がしくなる。
外からは衛兵の喜ぶ声も聞こえるので、直に王様の快復は王宮中に伝わるだろう。
ルイ様につんつんと肩をつつかれ、手元を見た。
〔王様はああ仰るが、君の力を思えば何もおかしくはないさ。君のことは、私が一番よく知っている〕
私だけに見えるような、小さい魔法文字が浮かぶ。
王様や医術師たちに褒められたときも嬉しかったけど、それ以上の嬉しさで胸がいっぱいになる。
「……ありがとうございます……ルイ様」
私とルイ様は静かな微笑みを交わした。
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