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第72話:王宮にて②

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「シルヴィーの詩の力を打ち消し、王様の病気を治す詩をすぐに書きます。机と椅子を拝借してもよろしいでしょうか」
「はい、もちろんです!」

 部屋の隅にあった机と椅子を貸してもらう。
 辞書を開いて言葉を探す。
 シルヴィーの詩を読みながら、医術師と薬師に病気のことを尋ねた

「王様はどのようなご病気だったのでしょうか。あと、できればいつも調薬したお薬についても知りたいのですが……」
「肺病です。患ったのは五年前で、特に朝方と日没時に強い咳が出ます。原因は両肺の力が弱っていることです」
「王様には鎮咳薬として、〈ハハコグサ〉を煎じたお薬やお茶を処方しておりました。よく効くと喜んでらっしゃったのを、今でも覚えています」
「なるほど……わかりました」

 医術師と薬師の話もノートにまとめる。
 いつもより早く正確に言葉を選び、羽ペンを走らす。
 数分も経たぬうちに一遍の詩が完成した。
 ふぅっと小さく息を吐く。

「お待たせしました。詩ができました」
「「ポーラ嬢、よろしくお願いします……。あなたが最後の頼みの綱なのです」」
〔頼む、ポーラ……。王様を救ってくれ〕

 医術師、薬師、衛兵の皆さん、そしてルイ様……みんなの目を見て、私はうなずいた。
 あとはこの詩を詠うだけ。
  王様の病気が治り、無事に目を覚ましますようにと……。
 強い気持ちを込めて詩を詠う。


――
 我らが王国を統べる
 偉大な君王よ
 貴台の良き統治にて
 我らは平和を享受する

 夜明けと日暮れで
 胸に訪れる苦難
 今 この瞬間にて消滅す

 貴台の胸に咲き誇る
 アキレアとガーベラの花によって

 我らは願う
 貴台の健勝
 明朗な笑顔を
――


 詩を詠い終わると、王様の身体、特に胸の部分が白い光に包まれた。
 今回はいつもより少し長く、十秒ほど経ってから消えた。
 王様は目覚めない。

 ――お願い……! 治って……!

 血が出るほど両手を硬く組んで祈る。
 室内が静寂と緊張に包まれたそのとき……。
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