68 / 88
第68話:王様が来た(Side:シルヴィー④)④
しおりを挟む
「でしたら、この王様専用の詩を夜にでもお詠みくださいませぇ。胸の病気などたちまち治ってしまうでしょう」
「しかし……なんだか情緒もへったくれもないのぉ。風情もないし字も汚いし……」
なんですって!?
王様は目を通したかと思うと、つまらなそうに言った。
「さ、さようでございますかぁ。王様のご健康を祈って精一杯書かせていただいたのですけどぉ」
怒りたくなるも必死に抑える。
こんなじいさんだろうが、相手は王様。
不敬罪にでもされたらたまったもんじゃないわ。
この怒りは後でルシアン様にぶつけましょう。
「まぁ、せっかく書いてくれたのだから、ありがたく頂戴しようかの。ご苦労じゃった、シルヴィー嬢。ワシらはお暇するぞよ」
王様たちは馬車に乗り帰る。
ルシアン様と見えなくなるまで見送った。
「クソが……結局、俺とはろくに話さなかったな」
「仕方がないですわぁ。次の機会にお話しできることを祈りましょう」
ルシアン様は王様にアピールできなかったことをずっと悔やんでいる。
反面、あたくしはもうウキウキだ。
王様の病気は完全に治って、あたくしは聖女のように崇め奉られる。
今までの不遇を帳消しにして、王妃に成り上がってやるわ。
今日の夜が楽しみ~。
◆◆◆(三人称視点)
「「王様、お疲れ様でございました」」
「うむ、皆もご苦労じゃった」
宮殿に帰ったメーンレント王は食事を済ませた後、使用人に案内され寝室へ向かう。
やはり、胸の行き苦しさはまだ残っていた。
寝るには少し早いが、今日はもう休息を取ることにする。
メーンレント王は、シルヴィーに渡された詩を読んだ。
「……行く先を暗示する……うっ……!」
詩を詠い終わったとき、彼の胸を鋭い痛みが襲った。
今まで感じたことがない痛みと辛さに、メーンレント王は脂汗を流す。
とても座ってなどいられず、ベッドに崩れ落ちた。
使用人たちは異変に気づくと、悲鳴に近い叫び声を上げた。。
「た……大変だ。王様が倒れられたぞー!」」
宮殿は大騒動に包まれる。
今回のシルヴィーの詩は遅効性だった。
クロユリの花言葉は"呪い”、そしてスノードロップの花言葉は……"あなたの死を望む”。 シルヴィーは言葉の意味も深く知らず、メーンレント王に呪いともいえる詩を書いてしまった。
――国王の危篤。
直属の医術師や薬師が次から次へと寝室に集まり、王宮中は大騒ぎだ。
シルヴィーやルシアンがのんびりとグラスを傾ける裏で、メーンレント王国きっての一大事が起きていた。
「しかし……なんだか情緒もへったくれもないのぉ。風情もないし字も汚いし……」
なんですって!?
王様は目を通したかと思うと、つまらなそうに言った。
「さ、さようでございますかぁ。王様のご健康を祈って精一杯書かせていただいたのですけどぉ」
怒りたくなるも必死に抑える。
こんなじいさんだろうが、相手は王様。
不敬罪にでもされたらたまったもんじゃないわ。
この怒りは後でルシアン様にぶつけましょう。
「まぁ、せっかく書いてくれたのだから、ありがたく頂戴しようかの。ご苦労じゃった、シルヴィー嬢。ワシらはお暇するぞよ」
王様たちは馬車に乗り帰る。
ルシアン様と見えなくなるまで見送った。
「クソが……結局、俺とはろくに話さなかったな」
「仕方がないですわぁ。次の機会にお話しできることを祈りましょう」
ルシアン様は王様にアピールできなかったことをずっと悔やんでいる。
反面、あたくしはもうウキウキだ。
王様の病気は完全に治って、あたくしは聖女のように崇め奉られる。
今までの不遇を帳消しにして、王妃に成り上がってやるわ。
今日の夜が楽しみ~。
◆◆◆(三人称視点)
「「王様、お疲れ様でございました」」
「うむ、皆もご苦労じゃった」
宮殿に帰ったメーンレント王は食事を済ませた後、使用人に案内され寝室へ向かう。
やはり、胸の行き苦しさはまだ残っていた。
寝るには少し早いが、今日はもう休息を取ることにする。
メーンレント王は、シルヴィーに渡された詩を読んだ。
「……行く先を暗示する……うっ……!」
詩を詠い終わったとき、彼の胸を鋭い痛みが襲った。
今まで感じたことがない痛みと辛さに、メーンレント王は脂汗を流す。
とても座ってなどいられず、ベッドに崩れ落ちた。
使用人たちは異変に気づくと、悲鳴に近い叫び声を上げた。。
「た……大変だ。王様が倒れられたぞー!」」
宮殿は大騒動に包まれる。
今回のシルヴィーの詩は遅効性だった。
クロユリの花言葉は"呪い”、そしてスノードロップの花言葉は……"あなたの死を望む”。 シルヴィーは言葉の意味も深く知らず、メーンレント王に呪いともいえる詩を書いてしまった。
――国王の危篤。
直属の医術師や薬師が次から次へと寝室に集まり、王宮中は大騒ぎだ。
シルヴィーやルシアンがのんびりとグラスを傾ける裏で、メーンレント王国きっての一大事が起きていた。
453
お気に入りに追加
1,506
あなたにおすすめの小説

平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。
なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。
そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。
そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。
クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。

お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?
サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。
「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」
リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。

大魔法使いは、人生をやり直す~婚約破棄されなかった未来は最悪だったので、今度は婚約破棄を受け入れて生きてみます~
キョウキョウ
恋愛
歴史に名を残す偉業を数多く成し遂げた、大魔法使いのナディーン王妃。
彼女の活躍のおかげで、アレクグル王国は他国より抜きん出て発展することが出来たと言っても過言ではない。
そんなナディーンは、結婚したリカード王に愛してもらうために魔法の新技術を研究して、アレクグル王国を発展させてきた。役に立って、彼に褒めてほしかった。けれど、リカード王がナディーンを愛することは無かった。
王子だったリカードに言い寄ってくる女達を退け、王になったリカードの愛人になろうと近寄ってくる女達を追い払って、彼に愛してもらおうと必死に頑張ってきた。しかし、ナディーンの努力が実ることはなかったのだ。
彼は、私を愛してくれない。ナディーンは、その事実に気づくまでに随分と時間を無駄にしてしまった。
年老いて死期を悟ったナディーンは、準備に取り掛かった。時間戻しの究極魔法で、一か八か人生をやり直すために。
今度はリカードという男に人生を無駄に捧げない、自由な生き方で生涯を楽しむために。
逆行して、彼と結婚する前の時代に戻ってきたナディーン。前と違ってリカードの恋路を何も邪魔しなかった彼女は、とあるパーティーで婚約破棄を告げられる。
それから紆余曲折あって、他国へ嫁ぐことになったナディーン。
自分が積極的に関わらなくなったことによって変わっていく彼と、アレクグル王国の変化を遠くで眺めて楽しみながら、魔法の研究に夢中になる。良い人と出会って、愛してもらいながら幸せな人生をやり直す。そんな物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる