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第64話:気持ち②

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〔ポーラ、ちょっといいか?〕
「は、はいっ」

 ルイ様だ。
 朝にお話しすることは驚くことでもないのに、どうしたわけか心臓が強く鼓動してしまう。
 心地良いような、もどかしいような……不思議な感覚もまた、私を混乱させる。
 みんなはと言うと、私たちの周りから離れお庭の隅っこに移動していた。
 いつの間に……。
 ワクワクとした瞳でこちらを眺める。
 ガルシオさんだけは前足で顔を隠し、隙間からこちらを見ていた。
 ですから、いかがわしいことは何もしていないのですが……。

〔インクがそろそろ切れそうなので、街に行く機会があったら一緒に買っておいてくれるか?〕
「わかりましたっ。誠心誠意、買わせていただきますっ」
〔ありがとう、よろしく頼む〕

 ただの業務連絡なのに、なぜかドキドキしながら答えてしまった。
 ルイ様は特に何を言うわけでもなく、いつも通りの雰囲気でお屋敷に戻る。
 みんなは私の周りに戻ると、ニヤニヤとした意味深な笑みを浮かべた。

「『いったいどんな話を……!』」
「今度インクを買ってきてほしいという、単なる業務連絡で……」
「『またまた~』」

 事実を伝えても、やっぱり信じてくれなかった。
 まぁ、そのうち平常運転に戻るかな。
 ワクワクするみんなじゃないけど、心の中にフッと疑問が浮かぶ。

 ――私はルイ様に対して……どう思っているのだろう……。

 自分の心と向き合う。
 今までルイ様に対しては、尊敬や憧れ、私をおいてくれた優しさ……などの感情が主に心を占めていた。
 大切な人なのは間違いないはずだ。

 ――でも……それだけじゃない気がする。

 いつからか、尊敬や敬慕といった感情とは、別の気持ちが私の心に根付きだした気がする……。
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