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第60話:古代樹と詩③
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――
古の時より
この地を守護する
北の領主のよき理解者たる
偉大な樹よ
色濃く纏うは
終焉の気配
北の領主が願うは唯一つ
汝は永遠に生きてほしい
汝の不撓不屈な姿を想うたび
北の領主の苦悩は消え去りし
雅な鳶色の樹皮
壮美な翠色の樹葉
胸を打つ
唯一無二の情景を
我らは再び見たし
――
詩を詠い終わると、“久遠の樹”は全体が白い光に包まれた。
地面に見える根っこから枝の先まで、隅から隅まで波動が伝わるように。
いつものように、白い光は十秒も経たずに消えた。
でも、樹には何の変化もない。
相変わらず、痛々しい姿のままだ。
【言霊】スキルが効かなかったのかと不安になる。
思わず顔がこわばると、ルイ様がそっと私の肩に手を乗せ、枝の一部を指した。
〔あれを見なさい〕
目を凝らすと、ぽつり……と小さな芽が見える。
あれ?
さっきまで枝には何もなかったような気がするけど……。
そう疑問に思う間もなく、次から次へと枝に芽が現れた。
ひび割れた樹皮も潤い、生命力に満ちあふれる。
今や、死の気配は完全に消え去った。
「やったー! 樹が治ったよー!」
「元気いっぱいです!」
『お前のスキルはどんな問題も解決しちまうな!』
「ポーラ、あんたはすごい力の持ち主だよ!」
エヴァちゃんたち四人は、大歓声を上げる。
私も一緒に喜びたかったけど、あいにくと言葉が出ない。
「う、嘘……。ルイ様、“久遠の樹”が復活しました!」
〔ああ。だが、どうやらこれだけではないようだ〕
その言葉を証明するかのように、ルイ様が魔法文字を書いた瞬間、芽からいっせいに翠色の葉が芽吹いた。
風に揺れるたび、独りでに美しい光を放つ。
サラサラ……と奏でられる音は、天界の讃美歌を思わせるほど優雅で厳かだった。
あまりのも素敵な光景に、感動を呟くことしかできない。
「こんなに美しい樹を見たのは……生まれて初めてです……」
〔これが、君に見せたかった景色なんだ〕
ルイ様以外のみんなは幹の近くに走り、わいわいと嬉しそうな声を上げる。
「ポーラちゃーん、こっちに来てー!」
「一緒に近くで見ましょー!」
『樹も喜んでいるぞ!』
「撫でておやり!」
もっと近くで見ようと、みんなは私を呼ぶ。
――良かった……うまくいった……。
“久遠の樹”が蘇ってくれて、安心感で胸がいっぱいになる。
ホッとしたとき、ふいに身体の力がかくんと抜けた。
意識も薄れ、体勢を崩す。
視線が上にずれていくのを感じ、後ろに倒れているんだなと思った。
幹の下にいるみんなが、慌ててこちらに駆け寄るのが視界の端っこに見える。
『「ポーラ!」』
「「ポーラちゃん(さん)!」」
きっと、力を使いすぎたんだ。
昨日は“御影の書”の解読を手伝ったし、疲れが残っていたのかもしれない。
連日、古の時代のものに【言霊】スキルを使うのはやっぱり大変だったのだ。
地面にぶつかる……と思ったとき、ふわっと優しく何かに止められた。
ルイ様が私の背中を支えてくれた。
古の時より
この地を守護する
北の領主のよき理解者たる
偉大な樹よ
色濃く纏うは
終焉の気配
北の領主が願うは唯一つ
汝は永遠に生きてほしい
汝の不撓不屈な姿を想うたび
北の領主の苦悩は消え去りし
雅な鳶色の樹皮
壮美な翠色の樹葉
胸を打つ
唯一無二の情景を
我らは再び見たし
――
詩を詠い終わると、“久遠の樹”は全体が白い光に包まれた。
地面に見える根っこから枝の先まで、隅から隅まで波動が伝わるように。
いつものように、白い光は十秒も経たずに消えた。
でも、樹には何の変化もない。
相変わらず、痛々しい姿のままだ。
【言霊】スキルが効かなかったのかと不安になる。
思わず顔がこわばると、ルイ様がそっと私の肩に手を乗せ、枝の一部を指した。
〔あれを見なさい〕
目を凝らすと、ぽつり……と小さな芽が見える。
あれ?
さっきまで枝には何もなかったような気がするけど……。
そう疑問に思う間もなく、次から次へと枝に芽が現れた。
ひび割れた樹皮も潤い、生命力に満ちあふれる。
今や、死の気配は完全に消え去った。
「やったー! 樹が治ったよー!」
「元気いっぱいです!」
『お前のスキルはどんな問題も解決しちまうな!』
「ポーラ、あんたはすごい力の持ち主だよ!」
エヴァちゃんたち四人は、大歓声を上げる。
私も一緒に喜びたかったけど、あいにくと言葉が出ない。
「う、嘘……。ルイ様、“久遠の樹”が復活しました!」
〔ああ。だが、どうやらこれだけではないようだ〕
その言葉を証明するかのように、ルイ様が魔法文字を書いた瞬間、芽からいっせいに翠色の葉が芽吹いた。
風に揺れるたび、独りでに美しい光を放つ。
サラサラ……と奏でられる音は、天界の讃美歌を思わせるほど優雅で厳かだった。
あまりのも素敵な光景に、感動を呟くことしかできない。
「こんなに美しい樹を見たのは……生まれて初めてです……」
〔これが、君に見せたかった景色なんだ〕
ルイ様以外のみんなは幹の近くに走り、わいわいと嬉しそうな声を上げる。
「ポーラちゃーん、こっちに来てー!」
「一緒に近くで見ましょー!」
『樹も喜んでいるぞ!』
「撫でておやり!」
もっと近くで見ようと、みんなは私を呼ぶ。
――良かった……うまくいった……。
“久遠の樹”が蘇ってくれて、安心感で胸がいっぱいになる。
ホッとしたとき、ふいに身体の力がかくんと抜けた。
意識も薄れ、体勢を崩す。
視線が上にずれていくのを感じ、後ろに倒れているんだなと思った。
幹の下にいるみんなが、慌ててこちらに駆け寄るのが視界の端っこに見える。
『「ポーラ!」』
「「ポーラちゃん(さん)!」」
きっと、力を使いすぎたんだ。
昨日は“御影の書”の解読を手伝ったし、疲れが残っていたのかもしれない。
連日、古の時代のものに【言霊】スキルを使うのはやっぱり大変だったのだ。
地面にぶつかる……と思ったとき、ふわっと優しく何かに止められた。
ルイ様が私の背中を支えてくれた。
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