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第48話:地下倉庫①
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〔ポーラ、“御影の書”は屋敷の地下倉庫に保管されている。案内するから着いてきてくれ〕
「わかりました。初めてお邪魔するので、なんだか緊張してきました」
食事が終わった食堂でルイ様に伝えられると、胸がドキッとした。
あの後みんなで朝ごはんを食べ終わり、さっそく魔導書の解読を始めることになった。
まだ入ったことはないけど、お屋敷には地下倉庫があり、アングルヴァン家に伝わる貴重な品や、国から預かった歴史的資料などが保管されているとも聞いた。
〔今伝えた通り、地下倉庫には貴重な品々が多くある。特殊な結界魔法で守っているが、一度に入れるのは二人までなのだ。だから、ポーラ以外の者は屋敷にいてくれ〕
「「承知いたしました、辺境伯様」」
ルイ様の言葉に、エヴァちゃんとロッド君はピシッと返事する。
反面、ガルシオさんはやや不満げな様子で頬を膨らませていた。
『俺も連れて行ってくれよ~。まだ入ったことないんだぞ~』
〔すまない、ガルシオ。フェンリルも人数にカウントされる。ポーラだけは絶対に外せないんだ〕
『ふ~ん、それならまぁしょうがないか。ポーラ、土産話を楽しみにしているからな』
申し訳なさそうにルイ様が魔法文字を書くと、ガルシオさんも納得してくれた。
食堂から出て、エヴァちゃんたち三人と別れる。
「では、辺境伯様。わたしたちは仕事に戻ります。……ポーラちゃん、後でお話聞かせてね。うまくいくよう祈っているよ」
「お二人ともお気をつけください。何かございましたらすぐ駆けつけますので」
『腹が減ったら飯を食いに来い』
バイバイと手を振り、私とルイ様はお屋敷の奥へと進む。
どこに行くのかな、と思っていたら執務室に着いた。
中に入れてもらいながらお尋ねする。
「地下倉庫はルイ様の執務室にあるのですか?」
〔ああ、そうだ。面白いものを見せてあげよう。少し離れていなさい〕
ルイ様はカーテンを閉めると、東側の本棚に手をかざした。
すると、驚くことに静かに横へ移動した。
ずずず……と本棚が動ききると、金属で作られた重厚な扉が現れる。
お屋敷に来て、初めてのことだった。
「まさか、隠し扉があったなんて知りませんでした。たしかに、本棚の後ろなら見つかりそうにないですね」
〔防犯上、必要もなく教えることは避けているんだ。隠していたわけではない」
「なるほど……」
お屋敷から街から離れているけど、いつどこで誰に見られているかはわからない。
ルイ様のご判断は正しいと思った。
〔さて、地下倉庫はこの扉の先にある。今、鍵を開けよう〕
ルイ様が扉に手を当てると、カチャリと軽い音がして独りでに開いた。
まるで、私たちを迎え入れてくれるようだ。
「わかりました。初めてお邪魔するので、なんだか緊張してきました」
食事が終わった食堂でルイ様に伝えられると、胸がドキッとした。
あの後みんなで朝ごはんを食べ終わり、さっそく魔導書の解読を始めることになった。
まだ入ったことはないけど、お屋敷には地下倉庫があり、アングルヴァン家に伝わる貴重な品や、国から預かった歴史的資料などが保管されているとも聞いた。
〔今伝えた通り、地下倉庫には貴重な品々が多くある。特殊な結界魔法で守っているが、一度に入れるのは二人までなのだ。だから、ポーラ以外の者は屋敷にいてくれ〕
「「承知いたしました、辺境伯様」」
ルイ様の言葉に、エヴァちゃんとロッド君はピシッと返事する。
反面、ガルシオさんはやや不満げな様子で頬を膨らませていた。
『俺も連れて行ってくれよ~。まだ入ったことないんだぞ~』
〔すまない、ガルシオ。フェンリルも人数にカウントされる。ポーラだけは絶対に外せないんだ〕
『ふ~ん、それならまぁしょうがないか。ポーラ、土産話を楽しみにしているからな』
申し訳なさそうにルイ様が魔法文字を書くと、ガルシオさんも納得してくれた。
食堂から出て、エヴァちゃんたち三人と別れる。
「では、辺境伯様。わたしたちは仕事に戻ります。……ポーラちゃん、後でお話聞かせてね。うまくいくよう祈っているよ」
「お二人ともお気をつけください。何かございましたらすぐ駆けつけますので」
『腹が減ったら飯を食いに来い』
バイバイと手を振り、私とルイ様はお屋敷の奥へと進む。
どこに行くのかな、と思っていたら執務室に着いた。
中に入れてもらいながらお尋ねする。
「地下倉庫はルイ様の執務室にあるのですか?」
〔ああ、そうだ。面白いものを見せてあげよう。少し離れていなさい〕
ルイ様はカーテンを閉めると、東側の本棚に手をかざした。
すると、驚くことに静かに横へ移動した。
ずずず……と本棚が動ききると、金属で作られた重厚な扉が現れる。
お屋敷に来て、初めてのことだった。
「まさか、隠し扉があったなんて知りませんでした。たしかに、本棚の後ろなら見つかりそうにないですね」
〔防犯上、必要もなく教えることは避けているんだ。隠していたわけではない」
「なるほど……」
お屋敷から街から離れているけど、いつどこで誰に見られているかはわからない。
ルイ様のご判断は正しいと思った。
〔さて、地下倉庫はこの扉の先にある。今、鍵を開けよう〕
ルイ様が扉に手を当てると、カチャリと軽い音がして独りでに開いた。
まるで、私たちを迎え入れてくれるようだ。
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