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第41話:安らかな眠りとのど飴②
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「じゃあ、ポーラちゃん、花瓶を片付けようか。わたしが袋に入れるから、箒で集めてくれる?」
「わかった。気をつけてね」
エヴァちゃんと一緒に花瓶を片付けようとしたら、ルイ様に止められた。
〔待ちなさい。細かい破片が多い。君たちが怪我をするとまずいから、私が片付けよう〕
ルイ様がサッと指を振ると、花瓶の破片と袋の中のお花が宙に浮かぶ。
破片は全部、吸い込まれるように袋へ入ってしまった。
「す、すごい……あっという間に破片が回収されました。ありがとうございます、ルイ様」
「辺境伯様、深く感謝申し上げます」
〔これくらい大したことではない〕
そう書くと、ルイ様は階段を昇り二階に戻る。
私とエヴァちゃんも掃除を再開。
三十分も経ったら水拭きまで完了した。
ルイ様が破片を全て回収してくれたから、ずいぶんと早く終えられた。
「じゃあ、ちょっとルイ様のところに行ってくるね」
「うん。わたしはアレンの様子を見てくる」
掃除用具を脇に置き、ルイ様の執務室へ向かう。
コツコツと扉を叩く。
「ルイ様、失礼いたします。ポーラでございます」
ほどなくして、扉がそっと開いた。
中に入るよう書かれたので、ルイ様に続いて室内にお邪魔する。
執務室は私たち勤め人の部屋より五倍は広い。
家具はルイ様が使われる黒塗りの大きな机と椅子のみで、壁の本棚には難しそうな本がぎっしりと詰まる。
カーテンと窓が開けられていることもあり、柔らかな陽光が温かく差し込んでいた。
〔掃除はもう終わったのか?〕
「はい、これもルイ様が花瓶の破片を片付けてくださったおかげです。ありがとうございました」
お辞儀しながらお礼を言う。
頭を上げると、ちょうど視線の位置に魔法文字が書かれていた。
〔いや、礼を言うのは私の方だ。先ほどは、アレンに【言霊】スキルを使ってくれてありがとう。今夜から彼もよく眠れるだろう〕
「いえ、私は自分にできることをしただけですので……。アレン君のためを思ったら、何かせずにはいられませんでした。私も悪夢を見たとき、苦しかったのを覚えています」
正直な気持ちだった。
アレン君の辛さを思うといても立ってもいられなかったのだ。
私も何度か悪夢を見たことがある。
安らかな眠りのはずが、辛い時間になるのは本当に苦しかった。
ルイ様は私の話を聞くと、静かに書いてくれた。
「わかった。気をつけてね」
エヴァちゃんと一緒に花瓶を片付けようとしたら、ルイ様に止められた。
〔待ちなさい。細かい破片が多い。君たちが怪我をするとまずいから、私が片付けよう〕
ルイ様がサッと指を振ると、花瓶の破片と袋の中のお花が宙に浮かぶ。
破片は全部、吸い込まれるように袋へ入ってしまった。
「す、すごい……あっという間に破片が回収されました。ありがとうございます、ルイ様」
「辺境伯様、深く感謝申し上げます」
〔これくらい大したことではない〕
そう書くと、ルイ様は階段を昇り二階に戻る。
私とエヴァちゃんも掃除を再開。
三十分も経ったら水拭きまで完了した。
ルイ様が破片を全て回収してくれたから、ずいぶんと早く終えられた。
「じゃあ、ちょっとルイ様のところに行ってくるね」
「うん。わたしはアレンの様子を見てくる」
掃除用具を脇に置き、ルイ様の執務室へ向かう。
コツコツと扉を叩く。
「ルイ様、失礼いたします。ポーラでございます」
ほどなくして、扉がそっと開いた。
中に入るよう書かれたので、ルイ様に続いて室内にお邪魔する。
執務室は私たち勤め人の部屋より五倍は広い。
家具はルイ様が使われる黒塗りの大きな机と椅子のみで、壁の本棚には難しそうな本がぎっしりと詰まる。
カーテンと窓が開けられていることもあり、柔らかな陽光が温かく差し込んでいた。
〔掃除はもう終わったのか?〕
「はい、これもルイ様が花瓶の破片を片付けてくださったおかげです。ありがとうございました」
お辞儀しながらお礼を言う。
頭を上げると、ちょうど視線の位置に魔法文字が書かれていた。
〔いや、礼を言うのは私の方だ。先ほどは、アレンに【言霊】スキルを使ってくれてありがとう。今夜から彼もよく眠れるだろう〕
「いえ、私は自分にできることをしただけですので……。アレン君のためを思ったら、何かせずにはいられませんでした。私も悪夢を見たとき、苦しかったのを覚えています」
正直な気持ちだった。
アレン君の辛さを思うといても立ってもいられなかったのだ。
私も何度か悪夢を見たことがある。
安らかな眠りのはずが、辛い時間になるのは本当に苦しかった。
ルイ様は私の話を聞くと、静かに書いてくれた。
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これからも恋愛ジャンルもポチポチと書いて行きたいと思います。また趣味趣向に合うものがありましたら、お読みいただけるととっても嬉しいです!わーいわーい!
【完結】をつけて、完結表記にさせてもらいました!やり遂げた~(*‘ω‘ *)
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