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第31話:ルイ様からの頼み①

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『ルイから聞いたぞ、ポーラ。火事から住民を救ったんだって? すごい活躍だな』

 火事があった日から数日後。
 森で余分な草を刈っていると、ガルシオさんが褒めてくれた。
 どうやらルイ様がお話ししてくれたみたいだ。

「でも、最終的に消化したのはルイ様ですよ。私だけでは時間稼ぎが精いっぱいでした」
『いやいや、それが大事なんだよ。ポーラのおかげでおばさんも救われたんじゃないか。お前はもっと胸を張っていい。ルイも誇りに思っているはずだ』

 ガルシオさんは得意げに言う。
 自分の頑張りは自分が認めてあげないとよくないね。
 そう思ったけど、私の目にはとある光景が焼き付いていた。
 おばさんや店主さん、住民たちがルイ様を怖がって逃げてしまった光景だ。
 魔法文字でお話しすることや、怖そうな見た目が原因なのだろう。
 緊張するのはたしかだけど、本当はとても優しいのに。

 ――ルイ様の優しさをもっとみんなに伝えたいな……。

 私はお屋敷で働くことが多いけど、街に行ったときは少しずつルイ様の誤解を解いていこう。
 心の中で静かに決心したとき、ガルシオさんが私の後ろを見ながら言った。

『おっ、噂をすれば……ってヤツだぞ』
「え?」

 振り向くと、お屋敷の方角から歩いてくる男性が見える。
 ルイ様だ。
 この時間はいつも執務室か、所用でお出かけになられていることが多いけど……。
 何はともあれ、鎌を置いて立ち上がりパンパンと服の汚れを払う。
 汚いと失礼だからね。

〔仕事中すまない。今大丈夫か?〕
「はい、まったく問題ございません。どうぞ、私のことはお気になさらないでください。ルイ様の特等メイドですので」

 ピシッと姿勢を正して答えた。
 私はルイ様の特等メイド。
 お屋敷に置いてくれた恩を毎日返すのだ。
 ルイ様は少しの間私を見たかと思うと魔法文字を書く。

〔君の【言霊】スキルについて確認したいのだが、レイス……悪霊や怨霊の類にも効果はあるか? 具体的には、浄化や弱体化の作用があるか聞きたいのだ〕
「ええ、効果はあります。霊避けの詩を詠ったこともありますし、弱い霊ならば浄化することもできました。強力な霊だと専門の除霊師の方にお任せした方がいいとは思いますが……」

 ‟言霊館‟で働いていたときも、除霊や幽霊避けの依頼を受けたことがある。
 霊は人や魔物が発する、怒りや憎しみ、悲しみなどの負の感情が形を持った魔物で、一般的にレイスと呼ばれた。
 物を浮かべて攻撃してきたり、寝ている人を金縛りにしたり……色々と悪さをしてくる。
 浄化するには除霊師や教会の聖女さんなどに頼むことが多いけど、お金がない人は私を頼ることも多かった。
 個体によって力や見た目が大きく異なるので、実際に見てから詩を詠った方が効果が高い。
 そういった旨をお伝えすると、ルイ様は真剣に聞いていた。
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