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第19話:肩凝り①

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『ポーラはブラッシングもうまいんだなぁ。心地良くて眠ってしまいそうだ』
「ありがとうございます。だいぶ慣れてきたからかもしれませんね」
『きっと、元々才能があったんだろう』

 お庭でガルシオさんの身体にブラシを通す。
 さっさっと腕を動かすたび、もふもふの毛は銀色に煌めく。
 病気を癒してから、もう一週間ほどが経った。
 特等メイドとしての仕事以外に、ガルシオさんご指名で、新たにブラッシングの役割を命じれらたのだ。
 午前中の昼前、日の当たるところで行うのが日課だ。
 エヴァちゃんやアレン君と一緒に、お屋敷の管理を行う日々。
 掃除も洗濯も楽しい。
 お屋敷での生活にも慣れ、豊かな気持ちで仕事をさせていただいている。

「ブラッシングが終わりましたよ。……どうですか? まだ足りないところとかないですか?」
『いや、ないよ。ありがとう、ポーラ。毛がふさふさだと気分もいいな』

 ガルシオさんはぐ~っと背中を伸ばす。
 元気な姿が見られるようになって、私も本当に嬉しい。
 ブラッシングの道具を片付けていたら、お屋敷からエヴァちゃんとアレン君が歩いてきた。

「ポーラちゃんにブラッシングしてもらったんですね。ふさふさで触りたくなっちゃいますよ」
「眩しいくらいの輝きで、お屋敷の中にも光が差し込むようでした」
『ちょっとくらいなら触ってもいいぞ』
「「いいんですか!? うわーい!」」

 ふさふさな毛を触り、エヴァちゃんとアレン君は喜ぶ。
 ガルシオさんもまた、さりげなく得意げな顔となる。
 この光景もすっかり日常となっていた。

『じゃあ、俺はそろそろ森に戻るかな』
「「は~い」」

 “霊気の森”へと、てくてく歩くガルシオさんを見送る。
 お庭もいいけど、森の澄んだ空気がとても好きらしい。

「ポーラちゃん、今日はお花の手入れをしようか」
「はいっ、わかりましたっ」

 エヴァちゃんの言葉に大きな声で返事する。
 同い年でも、彼女は立派な先輩なのだった。

「ブラッシングの道具は僕が片付けておきますよ。また、お屋敷に戻るので」
「ありがとう、アレン君。じゃあ、お願いしようかな」

 お言葉に甘え、アレン君に道具を預ける。
 軽い物ばかりなので安心して渡せた。
 エヴァちゃんと一緒にお庭のお花を手入れする。
 作業をしながら、彼女はお花の種類を説明してくれた。

「この紫のお花は〈夜露チューリップ〉。空気中の水分を集める力が強くて、朝になるとたっぷりの露が溜まっているよ。こっちの黄色い花は〈飛びタンポポ〉。風が吹いていなくても、綿毛は自分で飛んでいくんだよ」

 花壇には森と同じように、多種多様なお花が育っている。
 中には見知ったお花もあったけど、大部分はお屋敷に来て初めて見たものだった。
 自然と気が引き締まる。
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