16 / 88
第16話:フェンリルさんと詩①
しおりを挟む
『【言霊】スキル……?』
「はい、私は言葉に魔力を乗せることができるのです」
ガルシオさんにもスキルについて説明する。
ルイ様と同じように、興味深そうに聞いてくれた。
『へぇ、珍しいスキルだなぁ……』
「私の力でガルシオさんの病気を治せるかもしれません。……どうでしょうか、ルイ様。私に【言霊】スキルを使わせてくれませんか?」
そうお願いすると、ルイ様は何やら考えていた。
しばし考えた後、空中に魔法文字が書かれる。
〔気持ちは嬉しい。だが、同時に危険もある。君の【言霊】は言葉に魔力を乗せると聞いた。ガルシオの病状を考えると、相当の魔力を消費するだろう。君が倒れてしまっては元も子もない〕
ルイ様の気遣いが心に沁みる。
でも、それに甘えるわけにはいかなかった。
私は医術師や薬師ではないけれど、ガルシオさんの具合の悪さはよくわかる。
だって……すごく辛そうだから。
「……ありがとうございます、ルイ様。 ですが……お願いです。私にガルシオさんを癒させてください。このまま見過ごすなんて、絶対にできません。少しでも良くなる可能性があるなら、精一杯頑張りたいのです」
自分の力で困っている人が助かるかもしれないのなら、正面から挑むべきだ。
それに、【言霊】スキルを授かってからの二年間、力を使っても倒れたりしたことは一度もなかった。
今日はまだスキルを使っていないし、体力も魔力も充実している。
その話もルイ様にすると、無表情にほんのわずかな笑みが浮かんだ。
〔……わかった。頼む、彼を救ってほしい〕
「ありがとうございます……ルイ様。このポーラ、全身全霊で誌を書かせていただきます。……では、お疲れのところ悪いですが、ガルシオさんの話を聞かせてくれませんか? 相手について知れば知るほど、【言霊】スキルは強くなるのです」
私がそう言うと、ガルシオさんは顎に前足を当て考える。
『俺とルイが出会ったのは……今から十年前だったかな。……うん、たしかそうだ』
〔もうそんなに経つのか。時の流れは早いものだ〕
『ダンジョンの最深部で強力な魔物の群れに襲われ死にそうになっていたとき、助けてくれたのがルイだ……』
ルイ様とガルシオさんは、二人の出会いや十年の日々を話してくれる。
お屋敷での日々を話しているときだけは、ガルシオさんは元気に見えた。
フェンリルの伝承や本で読んだことを思い出しながら、辞書をめくり、言葉の海から一つずつ言葉を掬い取る。
死の淵に追い込まれてしまったガルシオさんを救うために……。
五分ほど羽ペンを走らせ、詩が完成した。
「お待たせしてすみません。詩ができました。それでは、読ませていただきますね」
『詩を聞くなんて久しぶりだよ……楽しみだ』
深く息を吸い、願いを込めて詩を詠う。
ガルシオさんが元気になってくれますようにと……。
「はい、私は言葉に魔力を乗せることができるのです」
ガルシオさんにもスキルについて説明する。
ルイ様と同じように、興味深そうに聞いてくれた。
『へぇ、珍しいスキルだなぁ……』
「私の力でガルシオさんの病気を治せるかもしれません。……どうでしょうか、ルイ様。私に【言霊】スキルを使わせてくれませんか?」
そうお願いすると、ルイ様は何やら考えていた。
しばし考えた後、空中に魔法文字が書かれる。
〔気持ちは嬉しい。だが、同時に危険もある。君の【言霊】は言葉に魔力を乗せると聞いた。ガルシオの病状を考えると、相当の魔力を消費するだろう。君が倒れてしまっては元も子もない〕
ルイ様の気遣いが心に沁みる。
でも、それに甘えるわけにはいかなかった。
私は医術師や薬師ではないけれど、ガルシオさんの具合の悪さはよくわかる。
だって……すごく辛そうだから。
「……ありがとうございます、ルイ様。 ですが……お願いです。私にガルシオさんを癒させてください。このまま見過ごすなんて、絶対にできません。少しでも良くなる可能性があるなら、精一杯頑張りたいのです」
自分の力で困っている人が助かるかもしれないのなら、正面から挑むべきだ。
それに、【言霊】スキルを授かってからの二年間、力を使っても倒れたりしたことは一度もなかった。
今日はまだスキルを使っていないし、体力も魔力も充実している。
その話もルイ様にすると、無表情にほんのわずかな笑みが浮かんだ。
〔……わかった。頼む、彼を救ってほしい〕
「ありがとうございます……ルイ様。このポーラ、全身全霊で誌を書かせていただきます。……では、お疲れのところ悪いですが、ガルシオさんの話を聞かせてくれませんか? 相手について知れば知るほど、【言霊】スキルは強くなるのです」
私がそう言うと、ガルシオさんは顎に前足を当て考える。
『俺とルイが出会ったのは……今から十年前だったかな。……うん、たしかそうだ』
〔もうそんなに経つのか。時の流れは早いものだ〕
『ダンジョンの最深部で強力な魔物の群れに襲われ死にそうになっていたとき、助けてくれたのがルイだ……』
ルイ様とガルシオさんは、二人の出会いや十年の日々を話してくれる。
お屋敷での日々を話しているときだけは、ガルシオさんは元気に見えた。
フェンリルの伝承や本で読んだことを思い出しながら、辞書をめくり、言葉の海から一つずつ言葉を掬い取る。
死の淵に追い込まれてしまったガルシオさんを救うために……。
五分ほど羽ペンを走らせ、詩が完成した。
「お待たせしてすみません。詩ができました。それでは、読ませていただきますね」
『詩を聞くなんて久しぶりだよ……楽しみだ』
深く息を吸い、願いを込めて詩を詠う。
ガルシオさんが元気になってくれますようにと……。
733
お気に入りに追加
1,515
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。
木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。
時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。
「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」
「ほう?」
これは、ルリアと義理の家族の物語。
※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。
※同じ話を別視点でしている場合があります。
【完結】ライラ~婚約破棄された令嬢は辺境へ嫁ぐ
ariya
恋愛
スワロウテイル家門レジラエ伯爵令嬢ライラは美しい娘ではあるものの、周囲の令嬢に比べると地味で見劣りすると言われていた。
彼女が望むのは平凡な、安穏とした生活であり爵位を持たないが良き婚約者に恵まれ満足していた。
しかし、彼女はある日突然婚約破棄されてしまう。
その後に彼女の元へ訪れた新しい婚約は、遠方の辺境伯クロードが相手であった。
クロードは噂通り英雄なのか、それとも戦狂男なのか。
ライラは思い描いていた平凡な生活とは程遠い新婚生活を送ることになる。
---------------------------
短編・おまけ
https://www.alphapolis.co.jp/novel/532153457/985690833
---------------------------
(注意)
※直接的な性描写はありませんが、彷彿とさせる場面があります。
※暴力的な描写が含まれているます。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
妾の子である公爵令嬢は、何故か公爵家の人々から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
私の名前は、ラルネア・ルーデイン。エルビネア王国に暮らす公爵令嬢である。
といっても、私を公爵令嬢といっていいのかどうかはわからない。なぜなら、私は現当主と浮気相手との間にできた子供であるからだ。
普通に考えて、妾の子というのはいい印象を持たれない。大抵の場合は、兄弟や姉妹から蔑まれるはずの存在であるはずだ。
しかし、何故かルーデイン家の人々はまったく私を蔑まず、むしろ気遣ってくれている。私に何かあれば、とても心配してくれるし、本当の家族のように扱ってくれるのだ。たまに、行き過ぎていることもあるが、それはとてもありがたいことである。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
四度目の正直 ~ 一度目は追放され凍死、二度目は王太子のDVで撲殺、三度目は自害、今世は?
青の雀
恋愛
一度目の人生は、婚約破棄され断罪、国外追放になり野盗に輪姦され凍死。
二度目の人生は、15歳にループしていて、魅了魔法を解除する魔道具を発明し、王太子と結婚するもDVで撲殺。
三度目の人生は、卒業式の前日に前世の記憶を思い出し、手遅れで婚約破棄断罪で自害。
四度目の人生は、3歳で前世の記憶を思い出し、隣国へ留学して聖女覚醒…、というお話。
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。
木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。
それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。
誰にも信じてもらえず、罵倒される。
そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。
実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。
彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。
故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。
彼はミレイナを快く受け入れてくれた。
こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。
そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。
しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。
むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる