孤独の恩送り

西岡咲貴

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あとがき

創作秘話

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こちらの作品「孤独の恩送り」を読んでいただいた方ありがとうございました。



以下【創作秘話】

 最初は「主人公高田颯太が家族を再生しようとする話」として書き始めました。

「家族の大切さ」というテーマを置いたものの、再生させようとする話にするならば......何らかの事件で一回家族関係を壊さないといけないと思いました。

 そこで、交通事故あるいは火災で母親が既に亡くなっているという設定を付け加える事に。


 ミステリーとして描こうとしていたので、後半には火災の真相(何故燃えたのか?)も必要でしたが、ちょうど同時期に別の話として「虐待とネグレクト」を題材にした作品を執筆中だったので、融合させてみてはどうだろうか?という発想にいたり、火災の原因が「虐待を受ける少女を助け出すため」だったと設定しました。

 なので元々は【高田颯太たかだそうたが主人公の話】と【西宮涼香にしみやすずかが主人公の話】は全くの別作品でした。

 この時、ニ視点から描くダブル主人公の作品になります。


 当然ヒューマンドラマには葛藤が必要です。

 主人公の一人高田颯太は、何故母親が亡くならなければならなかったのか?と考え始める訳ですが、母が助けに行かなければ友人涼香が亡くなっていたと知らされます。

 二人とも生きていて欲しかったけれど、そうはならなかった苦しみと戦いながら傷を負って生きていく。


 同じく主人公の一人である西宮涼香も葛藤を抱える。

 彼女は「虐待される少女」を助けたいと強く望み、通報してもどうにもならない現状から行動を起こす。

 だがそれによって二人の死者を出し、そのうち一人は可愛がってくれた友人の母親である事を知る。

 自分が友人の母親を殺したのだと悩み続ける。

 一人の少女を助けるために別の誰かを殺す事が本当に正しかったのか?という疑問と戦い続ける事に。



 作者目線で「家族の大切さ」や「家族愛」を描くにあたり、母未祐みゆはどんな気持ちで火災現場に飛び込んだのか?とかを考え始めると「そちらの視点からも書けば良いじゃないか」とどんどん視点を増やし、最後は6人の視点から物語が繋がっていくオムニバス形式となりました。


 ただ......長編として描くつもりだったので「各登場人物の視点が独立している話」にはどうしてもしたくはなかったと言う点で、別視点で同じシーンを描いてみたり、伏線をふんだんに盛り込んで「各々が別の話ではない事を強調」しました。

 後に編集して、2話になっていますが本来の創作順としては「神様って信じるか?」の部分から書き始めました。

 小ネタになりますが、この作品で一番最初に書いた文章「神様って信じるか?」というセリフは私が現実世界で「しつこい宗教勧誘」を受けていたので(興味がないのに本当にしつこくて)、その皮肉を込めて書いたものでした(笑)

 勿論ストーリーや設定も大切ではありますが、思った事を一言書いてみるだけでも意外と色々アイディアが湧いてくるものですね。




 読者の皆様に楽しんでいただけたら嬉しく思います。

 また、ご意見ご感想いただけると喜びます。

 それではまた次の作品もよろしくお願いします。


    西岡咲貴
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