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エピローグ
最終話 恩送り
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私高田結菜は、母親後藤沙綾香に育てられた事で幼少期をアパートの一室だけで過ごした。
その辛かった記憶は強く心に刻まれ、今でも忘れる事ができない。
でも同時に、その過酷な環境の中で育ったおかげで将来の夢が芽生えた。
師匠である川島真央の様な児童福祉司になって、虐待やネグレクトに苦しむ子供達を助ける事。
自分が経験したからこそ、その苦しさを理解できると言うメリットも持ち合わせている。
あの夜、私は燃え盛るアパートから命を助けられた。
火事によって母を亡くした事で人生は良い方へと変わっていった。
父、弟、妹と言う新たな家族ができ、温かい家庭環境を得たのである。
それまで学校に通った事がなかったせいで学力が極めて低かったが、まわりに追いつく為に血の滲むような努力を重ねた。
そんな必死だった経緯もあって、高校は首席で卒業。
大学は夢であった児童福祉司になる為に心理学を専攻する事にした。
「父さん、今下宿先に着いたよ。
私を大学に行かせてくれてありがとう。
これからも頑張るからちゃんと見ててね……」
「下宿先のアパートに着きました。
私も師匠みたいになれる様にこれから四年間しっかり学んできます。
卒業後は一緒に働けたらなと思っていますので、しばらく待っていてください……」
「お姉ちゃん、結婚おめでとう……。
来月の式にはちゃんと出席するからね。
颯太の事、これからもよろしくお願いします。
あいつはああ見えて真面目で優しいから大丈夫だとは思うけど……」
「式の時に、ゆっくり話そう……。
こんな、ナイフで刺してしまった私の事を姉にしてくれて本当に感謝しているんだ。
ありがとうって言葉では足りないかもしれないけど……」
「いつも相談に乗ってくれてありがとう。
本当に感謝してるよ……。
それにしても、海外でボランティアに参加するんだってね?
人の痛みが分かる麻衣なら絶対大丈夫だよ。
また日本に帰ってくる時には連絡してね」
「まさか誠が蛍ちゃんと付き合う事になるとは意外だったよ。
彼女の事、大切にしてあげなさいよ……。
私も陰ながら応援してるからね」
「蛍ちゃん、勇気を出して告白して良かったね。
応援してるから頑張ってね。
今度ゆっくり話そう」
「未祐さん……一度しかお会いした事はありませんが、命を救っていただいて本当に感謝しているのです。
あなたが居なければ私はもうこの世には居ませんし、家族がこんなにも温かいものだと言う事に気が付く事さえなかったと思います。
恩返しする事はできませんが、あなたから頂いたこの命は人の為に使わせていただこうと思います。
未祐さんの言葉で言うのなら恩送りですね……」
その辛かった記憶は強く心に刻まれ、今でも忘れる事ができない。
でも同時に、その過酷な環境の中で育ったおかげで将来の夢が芽生えた。
師匠である川島真央の様な児童福祉司になって、虐待やネグレクトに苦しむ子供達を助ける事。
自分が経験したからこそ、その苦しさを理解できると言うメリットも持ち合わせている。
あの夜、私は燃え盛るアパートから命を助けられた。
火事によって母を亡くした事で人生は良い方へと変わっていった。
父、弟、妹と言う新たな家族ができ、温かい家庭環境を得たのである。
それまで学校に通った事がなかったせいで学力が極めて低かったが、まわりに追いつく為に血の滲むような努力を重ねた。
そんな必死だった経緯もあって、高校は首席で卒業。
大学は夢であった児童福祉司になる為に心理学を専攻する事にした。
「父さん、今下宿先に着いたよ。
私を大学に行かせてくれてありがとう。
これからも頑張るからちゃんと見ててね……」
「下宿先のアパートに着きました。
私も師匠みたいになれる様にこれから四年間しっかり学んできます。
卒業後は一緒に働けたらなと思っていますので、しばらく待っていてください……」
「お姉ちゃん、結婚おめでとう……。
来月の式にはちゃんと出席するからね。
颯太の事、これからもよろしくお願いします。
あいつはああ見えて真面目で優しいから大丈夫だとは思うけど……」
「式の時に、ゆっくり話そう……。
こんな、ナイフで刺してしまった私の事を姉にしてくれて本当に感謝しているんだ。
ありがとうって言葉では足りないかもしれないけど……」
「いつも相談に乗ってくれてありがとう。
本当に感謝してるよ……。
それにしても、海外でボランティアに参加するんだってね?
人の痛みが分かる麻衣なら絶対大丈夫だよ。
また日本に帰ってくる時には連絡してね」
「まさか誠が蛍ちゃんと付き合う事になるとは意外だったよ。
彼女の事、大切にしてあげなさいよ……。
私も陰ながら応援してるからね」
「蛍ちゃん、勇気を出して告白して良かったね。
応援してるから頑張ってね。
今度ゆっくり話そう」
「未祐さん……一度しかお会いした事はありませんが、命を救っていただいて本当に感謝しているのです。
あなたが居なければ私はもうこの世には居ませんし、家族がこんなにも温かいものだと言う事に気が付く事さえなかったと思います。
恩返しする事はできませんが、あなたから頂いたこの命は人の為に使わせていただこうと思います。
未祐さんの言葉で言うのなら恩送りですね……」
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