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8章 学生の恋事情
67話 失恋の痛み
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「沙綾香……元気ないけど、どうしたの?」
意識が何処かへ行ってしまっていた。
「おーい……大丈夫?」
入学して直ぐに仲良くなった同じ学部の友人に話しかけられているのだと気が付いたのは少し後の事だ。
「え?……ごめん、何だっけ?」
彼女の話を全く聞いていなかった。
「どうしたの、ぼーっとして?」
ああ、やっぱり私の心は表情に出ていたのだろうか?
「あ、いや……何でもないよ?」
付き合いがそんなに長くないのに分かってしまうのだから、よほど酷い顔をしていたに違いない。
「何でもない訳ないでしょ?
あんたの好きなカツカレーだって全然すすんでないのに……」
テーブルを確認すると学食で注文した昼食のソレは全く減っていなかった。
何だかあまり食欲が湧かない。
「ほら……話聞いてあげるから、言ってみなよ?
人に話すと少しは気も楽になると思うしさ……」
食べ終えたカツ丼の器を横によける。
「美穂……」
友人の名前を口に出してみると、お互い呼び捨てにするくらいには仲が良いのだと気が付く。
この子になら話しても良いのかもしれない。
「彼氏と喧嘩でもしたの?」
カンの良い子だなあ……。
「いや、喧嘩したって言うか……振られたんだ……」
彼女はため息をついた後私の首についたネックレスに手をかけると、思い切り引っ張った。
「痛!」
接合部が切れて、割れた部品が飛び散る。
安物だったけど、私にとっては大切なものなのだ。
「ちょっと!何するのよ」
引きちぎられたソレを取り返すと彼女を睨み、私は凄く怒っているんだぞと言う顔をしてみせた。
「沙綾香ってさ……
予定は彼氏最優先だったし、興味のない話だって全てその人に合わそうとするじゃない……。
付き合って直ぐに料理を振る舞うし、味も全部彼好み。
その上毎日手作りでお弁当……。
何て言うか、重すぎなんだよね……。
依存しすぎじゃないの?」
かなり酷い事を言われている気がする。
傷をえぐるのはやめて欲しい。
「そんな事……」
言葉を遮られた。
「あるよ!これだって、呪いのネックレスだし」
一応言葉では否定しようとしてみたものの、他者から見ればそんなイメージだったのかもしれない。
「呪いって何よ?」
彼女の言葉はキツく、もう少し言い方ってものがあるのではないだろうかとは思う。
「自分を捨てた男にもらったものでしょうが!
誕生日かクリスマスのプレゼントでしょ……。
こんな物をいつまでも身につけているから忘れられないんだよ?
それは、もはや呪い以外の何だって言うの?」
言われている事は分かるし、ほぼ事実だ。
「アドバイスありがとう……」
残すのはもったいないので、カツカレーを一気に口に放り込む。
やけ食いだったのかもしれない。
「私、もう行くね……午後も講義あるし……」
席を立ち、食べ終わった食器を返却口に返す。
美穂はまだ何か言いたそうな顔をしていたけど、気が付かないふりをして立ち去った。
ああ、私って嫌な女だな……。
午後は休講になっていたので本当は急いでいなかったけど、彼女の話を聞いているのが辛かった。
恋をすると周りが見えなくなる性格な事も、そのせいで人に迷惑をかけている事も自分では分かっているつもりだ。
しかし人に言われたからと言って、そんな直ぐには変われないし、指摘されると凄くモヤモヤする。
「お疲れ様です」
守衛さんに挨拶をして、正門から大学を出た。
意識が何処かへ行ってしまっていた。
「おーい……大丈夫?」
入学して直ぐに仲良くなった同じ学部の友人に話しかけられているのだと気が付いたのは少し後の事だ。
「え?……ごめん、何だっけ?」
彼女の話を全く聞いていなかった。
「どうしたの、ぼーっとして?」
ああ、やっぱり私の心は表情に出ていたのだろうか?
「あ、いや……何でもないよ?」
付き合いがそんなに長くないのに分かってしまうのだから、よほど酷い顔をしていたに違いない。
「何でもない訳ないでしょ?
あんたの好きなカツカレーだって全然すすんでないのに……」
テーブルを確認すると学食で注文した昼食のソレは全く減っていなかった。
何だかあまり食欲が湧かない。
「ほら……話聞いてあげるから、言ってみなよ?
人に話すと少しは気も楽になると思うしさ……」
食べ終えたカツ丼の器を横によける。
「美穂……」
友人の名前を口に出してみると、お互い呼び捨てにするくらいには仲が良いのだと気が付く。
この子になら話しても良いのかもしれない。
「彼氏と喧嘩でもしたの?」
カンの良い子だなあ……。
「いや、喧嘩したって言うか……振られたんだ……」
彼女はため息をついた後私の首についたネックレスに手をかけると、思い切り引っ張った。
「痛!」
接合部が切れて、割れた部品が飛び散る。
安物だったけど、私にとっては大切なものなのだ。
「ちょっと!何するのよ」
引きちぎられたソレを取り返すと彼女を睨み、私は凄く怒っているんだぞと言う顔をしてみせた。
「沙綾香ってさ……
予定は彼氏最優先だったし、興味のない話だって全てその人に合わそうとするじゃない……。
付き合って直ぐに料理を振る舞うし、味も全部彼好み。
その上毎日手作りでお弁当……。
何て言うか、重すぎなんだよね……。
依存しすぎじゃないの?」
かなり酷い事を言われている気がする。
傷をえぐるのはやめて欲しい。
「そんな事……」
言葉を遮られた。
「あるよ!これだって、呪いのネックレスだし」
一応言葉では否定しようとしてみたものの、他者から見ればそんなイメージだったのかもしれない。
「呪いって何よ?」
彼女の言葉はキツく、もう少し言い方ってものがあるのではないだろうかとは思う。
「自分を捨てた男にもらったものでしょうが!
誕生日かクリスマスのプレゼントでしょ……。
こんな物をいつまでも身につけているから忘れられないんだよ?
それは、もはや呪い以外の何だって言うの?」
言われている事は分かるし、ほぼ事実だ。
「アドバイスありがとう……」
残すのはもったいないので、カツカレーを一気に口に放り込む。
やけ食いだったのかもしれない。
「私、もう行くね……午後も講義あるし……」
席を立ち、食べ終わった食器を返却口に返す。
美穂はまだ何か言いたそうな顔をしていたけど、気が付かないふりをして立ち去った。
ああ、私って嫌な女だな……。
午後は休講になっていたので本当は急いでいなかったけど、彼女の話を聞いているのが辛かった。
恋をすると周りが見えなくなる性格な事も、そのせいで人に迷惑をかけている事も自分では分かっているつもりだ。
しかし人に言われたからと言って、そんな直ぐには変われないし、指摘されると凄くモヤモヤする。
「お疲れ様です」
守衛さんに挨拶をして、正門から大学を出た。
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