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6章 殺傷事件
58話 彼女達のその後
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ペットボトルのお茶を少し飲むと、再び真剣な顔で話し始めた。
「放火の罪を世間に告白したわ……。
法律関係の事は詳しくないから分からないけど、色んな手続きが必要みたい……」
虐待されていた女の子を救う為だったと言う事と、殺すつもりなど無かったという事が人の目にどう映るかだ。
あのアパートは二部屋しか使用されていなかったので、被害が小さく済んだのが救いだろう。
彼女の事だから、それを分かった上で二人を助け出す事が可能なのだと言う判断に至ったのかもしれない。
「でも……あの火事の原因が涼香ちゃんだったなんて……」
仮に火を付けたのが涼香ちゃんだったとしても、他人事では済まされない。
僕達は友人で、彼女が善悪の分かる倫理的な人物である事をよく知っている。
しかし分かっていても、そうさせてしまったのだから責任の一端は僕にもある。
「僕のせいだよ……。
毎日一緒に居たのに涼香ちゃんがあんなに悩んでいたなんて知らなかった……。
もっと早く気付いてあげられたら何かが変わったかもしれないと、凄く悔しい。
それなのに、母さんが亡くなった事の責任を押し付けた……僕はいったい何がしたかったんだ……。
何が恩送りだ?
彼女を傷付けて、追い詰めただけじゃないか……」
麻衣は僕の手を握った。
「お兄ちゃんの責任なんかじゃないよ。
私だって毎日一緒に居た……。
涼香ちゃんを助けて友達になりたかっただけ……。
こんな重荷を背負わせたかった訳じゃない」
僕達にとって大切な友人だった彼女が救いたかった結菜と言う少女はどんな人物だったのだろうか?
「じゃあ、もう一人のあの子は?」
また答えにくそうな質問だった様だ。
「それが……行方不明なんだよ……。
火事の後、母親に虐待されていた事実が明らかになって、保護されたらしいけど度々施設を抜け出していたらしい。
お兄ちゃんが刺されたあの夜から行方が分からなくなっているって聞いた。
今までずっと家から出た事がなかったらしいし、もしかしたらもう何処かで死んでいるかもしれないって言われているみたいだよ……」
やっと辛かった生活から解放されたと言うのに家族の温かみも知らないまま、誰にも愛されず死んでいくなんて寂しすぎるじゃないか……。
仮にそうだとしたら、涼香ちゃんは何の為にあんな事をしたのか分からない。
だから、そんな事があってはならない。
僕は彼女の為に何かできる事はないのだろうか?
「放火の罪を世間に告白したわ……。
法律関係の事は詳しくないから分からないけど、色んな手続きが必要みたい……」
虐待されていた女の子を救う為だったと言う事と、殺すつもりなど無かったという事が人の目にどう映るかだ。
あのアパートは二部屋しか使用されていなかったので、被害が小さく済んだのが救いだろう。
彼女の事だから、それを分かった上で二人を助け出す事が可能なのだと言う判断に至ったのかもしれない。
「でも……あの火事の原因が涼香ちゃんだったなんて……」
仮に火を付けたのが涼香ちゃんだったとしても、他人事では済まされない。
僕達は友人で、彼女が善悪の分かる倫理的な人物である事をよく知っている。
しかし分かっていても、そうさせてしまったのだから責任の一端は僕にもある。
「僕のせいだよ……。
毎日一緒に居たのに涼香ちゃんがあんなに悩んでいたなんて知らなかった……。
もっと早く気付いてあげられたら何かが変わったかもしれないと、凄く悔しい。
それなのに、母さんが亡くなった事の責任を押し付けた……僕はいったい何がしたかったんだ……。
何が恩送りだ?
彼女を傷付けて、追い詰めただけじゃないか……」
麻衣は僕の手を握った。
「お兄ちゃんの責任なんかじゃないよ。
私だって毎日一緒に居た……。
涼香ちゃんを助けて友達になりたかっただけ……。
こんな重荷を背負わせたかった訳じゃない」
僕達にとって大切な友人だった彼女が救いたかった結菜と言う少女はどんな人物だったのだろうか?
「じゃあ、もう一人のあの子は?」
また答えにくそうな質問だった様だ。
「それが……行方不明なんだよ……。
火事の後、母親に虐待されていた事実が明らかになって、保護されたらしいけど度々施設を抜け出していたらしい。
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今までずっと家から出た事がなかったらしいし、もしかしたらもう何処かで死んでいるかもしれないって言われているみたいだよ……」
やっと辛かった生活から解放されたと言うのに家族の温かみも知らないまま、誰にも愛されず死んでいくなんて寂しすぎるじゃないか……。
仮にそうだとしたら、涼香ちゃんは何の為にあんな事をしたのか分からない。
だから、そんな事があってはならない。
僕は彼女の為に何かできる事はないのだろうか?
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