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5章 火事の裏側
50話 子供への想い
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「颯太、麻衣―」
私はそれぞれの自室で勉強をしている二人を呼んだ。
「ご飯できたよー」
夕食は颯太と麻衣の好物であるハンバーグを作ったのだが正直言って、もう限界なのだと思う。
おそらくハンバーグはこれが最後になるのではないだろうか?
お肉をこねる事すらままならない程に握力がなくなってきているのだ。
「はーい、今行くよー」
そんな颯太の元気な声が聞こえてくると、どうしても彼等の迷惑になりたくないと言う気持ちが強くなっている事が分かる。
今日の所は何とか無事に夕食を作る事ができたが、明日も家族の食事を用意できると言う保証はどこにもない。
体重は落ちておらず、健康そうには見えているので、かろうじて家族にはまだ悟られていない。
実際はまだ余裕があるのかもしれないが、気持ちが病気に負けているのだと思う。
そろそろ、家族にも検査結果を伝えないといけない時期なのかもしれない。
「お兄ちゃん、ちょっといい?」
「どうしたんだよ?」
二階の廊下からそんな声が聞こえてくると、仲の良い兄妹で微笑ましく思う。
「この問題が分からないんだけど……教えてくれない……?」
勉強で分からない所を聞く妹と、それを教える兄は我が子ながら実に素敵だ。
是非いつまでも仲良く育って欲しいと願い続けている。
颯太が麻衣に捕まって部屋に連れ込まれたので、声が聞こえなくなってしまった。
「おーい、ご飯冷めちゃうよー、いらないのー?」
なかなか降りてこない息子たちを再度呼ぶ。
「はーい、今行くからもうちょっとだけ待ってー」
母親が作る最後のハンバーグなのだから、できるなら冷める前に食べて欲しい。
「ねー、まだー?
本当にご飯冷めるよー?
せっかく作ったんだから、温かいうちに食べなさいよー?」
しかしそんな事は、まだ彼等に話していないのだから知ってくれと言う方が無理な話だろう。
病気の事を言えなくてごめんね……。
「良かったな、今日は麻衣の好きなハンバーグだぞ」
「やったー」
二人とも実に嬉しそうだ……。
「お兄ちゃんも好きでしょ、母さんのハンバーグ?」
そんなに喜んでくれるなら、もっと頻繁に作ってやればよかったと今になって反省している。
「母さんも待っているだろうし、早く行こう」
まさか私の病気がここまで進行しているとは思っても居ないだろうが、残念ながらもう時間はそれほど残されていないだろう。
家族に迷惑をかけながら無理に延命し、生き続けるのか?
あるいは、家族の幸せの為にここで終わらせるべきなのか?
その決断の時も迫っている。
電気を消す音が聞こえたので、炊飯器を開けてお茶碗にご飯をよそい、ハンバーグとサラダをお皿に盛り付ける。
「お兄ちゃん、あの光何かな?」
「え?」
「あのアパートって……」
二人の声が二階の廊下から聞こえているが、なかなか降りてこない。
何かあったのだろうか?
「火事だー」
は?
「母さん……涼香ちゃんちが火事だ……」
そう言いながら、颯太が慌てて階段を駆け降りてきた。
私はそれぞれの自室で勉強をしている二人を呼んだ。
「ご飯できたよー」
夕食は颯太と麻衣の好物であるハンバーグを作ったのだが正直言って、もう限界なのだと思う。
おそらくハンバーグはこれが最後になるのではないだろうか?
お肉をこねる事すらままならない程に握力がなくなってきているのだ。
「はーい、今行くよー」
そんな颯太の元気な声が聞こえてくると、どうしても彼等の迷惑になりたくないと言う気持ちが強くなっている事が分かる。
今日の所は何とか無事に夕食を作る事ができたが、明日も家族の食事を用意できると言う保証はどこにもない。
体重は落ちておらず、健康そうには見えているので、かろうじて家族にはまだ悟られていない。
実際はまだ余裕があるのかもしれないが、気持ちが病気に負けているのだと思う。
そろそろ、家族にも検査結果を伝えないといけない時期なのかもしれない。
「お兄ちゃん、ちょっといい?」
「どうしたんだよ?」
二階の廊下からそんな声が聞こえてくると、仲の良い兄妹で微笑ましく思う。
「この問題が分からないんだけど……教えてくれない……?」
勉強で分からない所を聞く妹と、それを教える兄は我が子ながら実に素敵だ。
是非いつまでも仲良く育って欲しいと願い続けている。
颯太が麻衣に捕まって部屋に連れ込まれたので、声が聞こえなくなってしまった。
「おーい、ご飯冷めちゃうよー、いらないのー?」
なかなか降りてこない息子たちを再度呼ぶ。
「はーい、今行くからもうちょっとだけ待ってー」
母親が作る最後のハンバーグなのだから、できるなら冷める前に食べて欲しい。
「ねー、まだー?
本当にご飯冷めるよー?
せっかく作ったんだから、温かいうちに食べなさいよー?」
しかしそんな事は、まだ彼等に話していないのだから知ってくれと言う方が無理な話だろう。
病気の事を言えなくてごめんね……。
「良かったな、今日は麻衣の好きなハンバーグだぞ」
「やったー」
二人とも実に嬉しそうだ……。
「お兄ちゃんも好きでしょ、母さんのハンバーグ?」
そんなに喜んでくれるなら、もっと頻繁に作ってやればよかったと今になって反省している。
「母さんも待っているだろうし、早く行こう」
まさか私の病気がここまで進行しているとは思っても居ないだろうが、残念ながらもう時間はそれほど残されていないだろう。
家族に迷惑をかけながら無理に延命し、生き続けるのか?
あるいは、家族の幸せの為にここで終わらせるべきなのか?
その決断の時も迫っている。
電気を消す音が聞こえたので、炊飯器を開けてお茶碗にご飯をよそい、ハンバーグとサラダをお皿に盛り付ける。
「お兄ちゃん、あの光何かな?」
「え?」
「あのアパートって……」
二人の声が二階の廊下から聞こえているが、なかなか降りてこない。
何かあったのだろうか?
「火事だー」
は?
「母さん……涼香ちゃんちが火事だ……」
そう言いながら、颯太が慌てて階段を駆け降りてきた。
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