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4章 友情の崩壊
42話 洞窟の発見
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かなりの時間が経った様に感じてしまう。
坂道も多かったせいか、息が切れてゼーハー言っているのが自分でも分かる。
この海岸は昔三人でよく遊んだ場所ではあったが、来たのは久しい。
関係を修復するにはどうすればいいのだろうかと考えながら、海岸を一望できる高台に急いだ。
どうやら彼女の予想は当たっていたらしい。
颯太なのかは分からないが、遠くに人影が見える。
自転車を止めて、砂浜に寝転がっている姿を見る限りでは彼に間違いない。
「おーい!」
ここから手を振ってみても反応はなく、声は聞こえない事が分かる。
かなりのスピードで走ってきた事もあってか、喉が渇いていたので高台にある自販機で缶珈琲を二本買った。
片方をグイっと一気に飲んで横のごみ箱に入れ、もう一本はポケットにしまう。
昼食代と言って今朝母にもらった千円札は学校に行く途中のライザで二百三十円のサンドイッチを二つ買い、その残りで今、百二十円を二本。
現在ポケットに残っているのは百円玉が三枚だ。
少し休んで息を整えてから彼の方に近付くと、向こうも俺に気が付いた。
「ああ、誠か……。
よく僕がここに居るって分かったな?」
砂浜に寝転がったまま、顔だけをこちらに向ける。
「麻衣に、ここだろうって聞いて来たんだ。
颯太とちゃんと話したくてさ」
ポケットから出した缶珈琲を彼に投げて渡す。
「おお、ありがとう」
受け取ると、座って缶を開けた。
「お前が持っている錆びたアクセサリーみたいなものはなんだ?」
彼は手を開いてこちらにそれを見せる。
「ああ、これか?
さっきそこで拾ったネックレスだよ……ハートの形みたいなんだけど真っ二つに割れていて、半分だけなんだ。
見た感じボロボロだし、かなり古い……。
ハートが心の事なら、何だか傷付いている僕みたいだなと思って眺めていたんだよ。
きっとさ、持ち主だった人は失恋して無理やり引きちぎったんじゃないかな?
それを川にでも捨てたら海まで流れ着いたんだ……。
そう考えると、何だかこんなボロボロの錆びたネックレスにも歴史を感じられるだろ?」
想像するのは勝手だが、現実味はない。
「確かに形状はネックレスだけど、切れたから捨てただけかもよ?
歴史はあるかもしれないけど、それを俺達が知る術なんてないじゃないか……」
そんな事を考えてどうするって言うんだ。
「夢がないなあ……」
俺は彼を背に向けて海を眺める。
付き合いが長いので分かっていた事ではあるが、こいつは少しそう言うロマンチストっぽい所がある。
「くだらない……」
そんな事より、もっと重要な問題があるじゃないかと彼を睨む。
「ところで、何故僕を探しに来たんだ?
あんな事を言って関係を壊したんだから放っておけばいいじゃないか」
そういう訳にも行かない。
こいつの一言で、俺も麻衣も涼香も皆困っているのだ。
「お前はこのままで良いと、本当にそう思っているのか?
あの火事は涼香のせいじゃない。
死にかけたあの子はどんな気持ちだったと思うんだ?」
あぁダメだな……。
偉そうに説教していていると言うのに、実際に感情的になっているのは自分じゃないか……。
麻衣に「颯太とちゃんと話す」などと言ったのに、こんなんじゃ関係を修復なんてできる訳がない。
人と話す時は言葉を選ぼうと決めた筈なのに、すぐには変われない。
「そんな事を言いに来ただけなら、帰ってくれ。
僕の事はもう放っておいてさ……」
確かに言い方は悪かったし、彼にこんな話し方をすべきではなかったと反省した。
涼香の立場に立って颯太を非難するだけでは解決する訳がない。
そんな事は分かっていた筈なのに、どうしてこんな事しか言えなかったのだろう。
「すまん、俺も言い過ぎ……」
彼の方に振り返って、謝ろうとした時だった。
遠くに、かなり大きい洞窟の様な穴が見える。
高台からは死角になっている場所なので、今まで気が付かなかったのは分かるが、昔よく遊びに来ていた時にもこんな場所があったと言う記憶はない……。
坂道も多かったせいか、息が切れてゼーハー言っているのが自分でも分かる。
この海岸は昔三人でよく遊んだ場所ではあったが、来たのは久しい。
関係を修復するにはどうすればいいのだろうかと考えながら、海岸を一望できる高台に急いだ。
どうやら彼女の予想は当たっていたらしい。
颯太なのかは分からないが、遠くに人影が見える。
自転車を止めて、砂浜に寝転がっている姿を見る限りでは彼に間違いない。
「おーい!」
ここから手を振ってみても反応はなく、声は聞こえない事が分かる。
かなりのスピードで走ってきた事もあってか、喉が渇いていたので高台にある自販機で缶珈琲を二本買った。
片方をグイっと一気に飲んで横のごみ箱に入れ、もう一本はポケットにしまう。
昼食代と言って今朝母にもらった千円札は学校に行く途中のライザで二百三十円のサンドイッチを二つ買い、その残りで今、百二十円を二本。
現在ポケットに残っているのは百円玉が三枚だ。
少し休んで息を整えてから彼の方に近付くと、向こうも俺に気が付いた。
「ああ、誠か……。
よく僕がここに居るって分かったな?」
砂浜に寝転がったまま、顔だけをこちらに向ける。
「麻衣に、ここだろうって聞いて来たんだ。
颯太とちゃんと話したくてさ」
ポケットから出した缶珈琲を彼に投げて渡す。
「おお、ありがとう」
受け取ると、座って缶を開けた。
「お前が持っている錆びたアクセサリーみたいなものはなんだ?」
彼は手を開いてこちらにそれを見せる。
「ああ、これか?
さっきそこで拾ったネックレスだよ……ハートの形みたいなんだけど真っ二つに割れていて、半分だけなんだ。
見た感じボロボロだし、かなり古い……。
ハートが心の事なら、何だか傷付いている僕みたいだなと思って眺めていたんだよ。
きっとさ、持ち主だった人は失恋して無理やり引きちぎったんじゃないかな?
それを川にでも捨てたら海まで流れ着いたんだ……。
そう考えると、何だかこんなボロボロの錆びたネックレスにも歴史を感じられるだろ?」
想像するのは勝手だが、現実味はない。
「確かに形状はネックレスだけど、切れたから捨てただけかもよ?
歴史はあるかもしれないけど、それを俺達が知る術なんてないじゃないか……」
そんな事を考えてどうするって言うんだ。
「夢がないなあ……」
俺は彼を背に向けて海を眺める。
付き合いが長いので分かっていた事ではあるが、こいつは少しそう言うロマンチストっぽい所がある。
「くだらない……」
そんな事より、もっと重要な問題があるじゃないかと彼を睨む。
「ところで、何故僕を探しに来たんだ?
あんな事を言って関係を壊したんだから放っておけばいいじゃないか」
そういう訳にも行かない。
こいつの一言で、俺も麻衣も涼香も皆困っているのだ。
「お前はこのままで良いと、本当にそう思っているのか?
あの火事は涼香のせいじゃない。
死にかけたあの子はどんな気持ちだったと思うんだ?」
あぁダメだな……。
偉そうに説教していていると言うのに、実際に感情的になっているのは自分じゃないか……。
麻衣に「颯太とちゃんと話す」などと言ったのに、こんなんじゃ関係を修復なんてできる訳がない。
人と話す時は言葉を選ぼうと決めた筈なのに、すぐには変われない。
「そんな事を言いに来ただけなら、帰ってくれ。
僕の事はもう放っておいてさ……」
確かに言い方は悪かったし、彼にこんな話し方をすべきではなかったと反省した。
涼香の立場に立って颯太を非難するだけでは解決する訳がない。
そんな事は分かっていた筈なのに、どうしてこんな事しか言えなかったのだろう。
「すまん、俺も言い過ぎ……」
彼の方に振り返って、謝ろうとした時だった。
遠くに、かなり大きい洞窟の様な穴が見える。
高台からは死角になっている場所なので、今まで気が付かなかったのは分かるが、昔よく遊びに来ていた時にもこんな場所があったと言う記憶はない……。
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