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4章 友情の崩壊
38話 あの子の欠席
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涼香が学校に来なくなって少し経つ……。
彼女の住んでいたアパートは無くなってしまったので、退院した後は母方の祖母の家でお世話になっているとの事だった。
しかし、火事の後は未祐さんの葬儀があっったり色々大変な事が続き、彼女とはゆっくり話せる時間がなかった事もあって居場所を聞けていない。
その為、涼香と話したくても会いに行けないのが現状である。
颯太も麻衣も授業が終わると直ぐに姿を消す様になり、一人で登下校する日々が続いている。
正直な所、涼香にあんな酷い事を言うとは思わなかったが、彼も母親を亡くした事で心に相当な傷を負っていた事は分かる。
彼女が悪い訳ではない事は当然なのだが、だからと言って颯太を悪く言うのも可哀想に思えてくる。
心無い一言で、今まで丁寧に築き上げてきた友達関係は音を立てて崩れかけているのだ。
それでも俺は彼等が好きだったし、できる事ならまた四人で元の友達に戻る事を望んでいる。
「先生、さようなら……」
授業が終わると、それぞれが仲の良い友達同士で集まってガヤガヤと話し始める。
「はい、さようなら。また明日ね……。
皆、気を付けて帰ってね」
そう言って担任は教室から出て行く。
「今日、お前んちでゲームやろうぜ」
「こんな量の宿題終わる訳ないじゃん」
「鞄置いたら、例の公園で待ち合わせだからな」
あちこちで各々が会話をするのは、いつもの光景である。
そんな少しうるさい放課後が始まる中、誰とも話す事なく教室を出た。
いつもなら、麻衣が俺たちの所にやってきて四人で話しながらライザの交差点まで一緒に帰ると言うのが日課だったのだが、それももう過去の話になってしまった。
「さようなら……」
廊下ですれ違う先生達が挨拶してくるので、さようならとそれに返事をする。
チャイムが校内に鳴り響き、生徒達が一斉に下校を始める頃は、いつもなら居る筈の颯太も麻衣も涼香も居ない孤独な時間となっていく。
何だか、いつになく寂しさと虚しさだけが残っている。
校門を出て少し歩くと、やはりこのままではダメだと思い始めてきて、二人の家に向かう事にした。
麻衣は普段から冷静に人を見ていて感心する程だったが、今回ばかりは色んなことが一気に起こった事で、立ち直るのにかなりの時間がかかりそうだ。
俺も三人の為に何かできる事はないだろうかと思うものの現実的にはかなり難しい。
それでもまずは颯太と話さなければならない筈だ。
彼女の住んでいたアパートは無くなってしまったので、退院した後は母方の祖母の家でお世話になっているとの事だった。
しかし、火事の後は未祐さんの葬儀があっったり色々大変な事が続き、彼女とはゆっくり話せる時間がなかった事もあって居場所を聞けていない。
その為、涼香と話したくても会いに行けないのが現状である。
颯太も麻衣も授業が終わると直ぐに姿を消す様になり、一人で登下校する日々が続いている。
正直な所、涼香にあんな酷い事を言うとは思わなかったが、彼も母親を亡くした事で心に相当な傷を負っていた事は分かる。
彼女が悪い訳ではない事は当然なのだが、だからと言って颯太を悪く言うのも可哀想に思えてくる。
心無い一言で、今まで丁寧に築き上げてきた友達関係は音を立てて崩れかけているのだ。
それでも俺は彼等が好きだったし、できる事ならまた四人で元の友達に戻る事を望んでいる。
「先生、さようなら……」
授業が終わると、それぞれが仲の良い友達同士で集まってガヤガヤと話し始める。
「はい、さようなら。また明日ね……。
皆、気を付けて帰ってね」
そう言って担任は教室から出て行く。
「今日、お前んちでゲームやろうぜ」
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「鞄置いたら、例の公園で待ち合わせだからな」
あちこちで各々が会話をするのは、いつもの光景である。
そんな少しうるさい放課後が始まる中、誰とも話す事なく教室を出た。
いつもなら、麻衣が俺たちの所にやってきて四人で話しながらライザの交差点まで一緒に帰ると言うのが日課だったのだが、それももう過去の話になってしまった。
「さようなら……」
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チャイムが校内に鳴り響き、生徒達が一斉に下校を始める頃は、いつもなら居る筈の颯太も麻衣も涼香も居ない孤独な時間となっていく。
何だか、いつになく寂しさと虚しさだけが残っている。
校門を出て少し歩くと、やはりこのままではダメだと思い始めてきて、二人の家に向かう事にした。
麻衣は普段から冷静に人を見ていて感心する程だったが、今回ばかりは色んなことが一気に起こった事で、立ち直るのにかなりの時間がかかりそうだ。
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それでもまずは颯太と話さなければならない筈だ。
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