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2章 アパートの二人
34話 理不尽な政治
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「違う……そうじゃない。
ねえ、聞いてよ。ちゃんと話そう……」
相手にはその気がない様だ。
「もういい……」
そう言って彼女は部屋から出て行った。
「結菜?」
沙綾香さんはかなり焦っていた様だったけど、彼女がこんなに早く帰ってきた事は一度もなかったので、油断していたと思う。
追いかけて廊下に出ると、結菜ちゃんは沙綾香さんに強く抱きしめられていた。
勿論この子が私の部屋から出てきた所をバッチリ見られているので、言い逃れできる感じはしない。
「良かった……」
娘の無事を確認して泣いていた。
今までのパターンだと結菜ちゃんを怒鳴りつけるだろうけど、私はこの子の為に何ができると言うのだろうか?
ある程度落ち着くと、彼女は結菜ちゃんの左頬を平手でかなり強く叩いた。
「あなたも私を裏切るの……?」
あれほど「女は顔」と言っていたこの人が、お構いなしに叩くのだからよほど怒っているに違いない。
「ごめんなさい……」
食事も与えられなくて虐待を受けていたのだから、家から出なければこの子は死んでいただろう。
彼女の言う「あなたも」とはどういう事だろうか?
「やはり、あの男の娘だから私を捨てて出て行ってしまうのは仕方のない事なのかもしれないわね……」
この子の父親がどんな人なのかを聞いた事はなかったので知らなかったけど、彼も沙綾香さんを捨てて出て行ってしまったという事なのか?
「ところで涼香ちゃん、説明してくれる?
どうして結菜があなたの部屋に行っているのか……」
当然そういう疑問になるとは思うけど、こたえを間違えれば私も彼女も身が危なくなる可能性が高い。
さぁどうこたえたものか?
「ママ、もう止めて……。お姉ちゃんは悪くない……。
私が空腹に耐えられなくて、お願いして食べさせてもらったの……」
待ってよ、そこまで言ってしまったら結菜ちゃんが怒られるよ?
「えぇ知っているわ、これ程長期で食事を与えていないのにあなたは元気過ぎたから、どうにかして食べているんだろうなと思っていた……」
この人は母親失格ではないか……。
「娘を何だと思っているんですか?
ちゃんとご飯をあげて、お風呂にも入れてあげてくださいよ。
人並みの生活をさせてあげてくれませんか?」
苦笑いしながら、私に言う。
「涼香ちゃんは何を言っているの?
この子は私が生んだのだから、あなたには関係のない事でしょ?
どう育てるのかも私の勝手だわ……」
いつも外で会った時に話す沙綾香さんはこんな人ではなかった筈だと思い出すと、全くの別人ではないだろうかと思う程に人格が違っていた。
もはや説得できないかもしれないけど、どうにかして結菜ちゃんを助けたい。
「あなたこそ何を言っているんですか!
彼女が可哀そうだとは思わないんですか?」
正直言うと何をされるか分からなくて、かなりビビっていた。
「私だって、生みたくて生んだ訳じゃないのよ……。
今考えれば、娘なんて生まなければ良かったわ……。
この子が居なければ、私はもっと自由でいられた筈」
そんな事を言われて、何だか凄く怒りが込み上げてきた。
この人の考え方は今更変わらないし、心を入れ替えるつもりもないだろう。
私は拳を強く握りしめる。
「シングルマザーは涼香ちゃんが思っている程簡単なものじゃない!
昔は国も少子化対策と言って子供に支援をしていたけれど、財源を確保する為などと言って社会保険料の引き上げを決めた。
そのせいで、寧ろ生活は余計に苦しくなったの。
新型感染症のパンデミックで経済は疲弊していると言うのに、物価は高騰。
個人への増税はどんどんと酷くなって、生活していく事さえも厳しくなっていった。
その上、「女だから」とか「シングルマザーは子供が熱を出したらすぐに休むから使い物にならない」などと言われ、ろくな仕事にも就けなかった……。
朝から晩まで身を粉にして働いているのに収入は微々たるもので、それでもこの子の事を想えばストレスも我慢して働き続ける事ができた……。
インボイス制度の導入で小規模な会社は大幅に収益が下がり、次々倒産。
娘の為だけに、いつ潰れるかも分からない小さい会社で必死に働くだけの生活が長く続いた。
結局私がストレスによる双極性障害と診断されると、それまで勤めていた会社は解雇。
幼いあなたに、この苦しみが分かると言うの?」
そういう問題があるのは事実かもしれないし、そこに関しては否定する気もない。
「確かに今の政治は歪で、問題だらけだとは思います……。
でもだからと言って、子供を雑に扱ったり、暴力を振るって良い理由にはならないでしょ?」
彼女はため息をつき、私を睨みつける。
「じゃあどうすれば良かったと言うの?
あなたは当事者でないからそんな綺麗な事が言えるのよ……」
確かに私にとって直接的には関係のない話ではあるし、ここで言っている様な国の政策に巻き込まれた被害者でもない。
「養育費の請求や生活保護の申請だってできた筈では?」
そんな疑問に対して、彼女は真顔でこたえてきた。
「あなたの頭で考えられそうな事は一通り全部試したわ……。
でも、ダメだった……。
生活保護の捕捉率って知ってる?
いろいろな言い方はあるけど、簡単に言えば困ってる人の内、どれくらいが実際に受給できるかと言う数値。日本だと、だいたい何パ―セントくらいだと思う?」
全く想像もできない質問だった。
一〇〇パーセントまでは行かなくても、最低でも半分くらいはもらえるのではないだろうか?
いや待て、彼女の口調から考えるとそれよりも少ないのだろう。
「三〇パーセントくらいですか……?」
低過ぎる数字だっただろうか?
しかしそんな少ない人しか受給できないと言うのならば、システムは機能していないといっても過言ではないし、経済大国である日本がそんなに問題視していない訳もないだろうとも思う。
彼女は私を小バカにする様に笑っていた。
「一六パーセント前後よ……。
仮に一〇〇人申請しても、八〇~八五人は受けられないのが現状なの……」
は?
イメージしたよりも遥かに小さい数字で、そんなにもらえないのならそりゃ貧困社会が加速したって仕方がないんじゃないかとさえ思ってしまう。
「私だって申請はした。
けれど「まだ働けるでしょ」と言われて追い返されたわ……。
そんなものを、どうやってもらえと言うの?
何も知らないあなただからこそ、そんな綺麗な事が言えるのよ……」
確かにそれに関しては彼女の言う通りで、反論できない。
ニュースで話題になる政治や政策は、以前から本当に狂っていると感じながら見ていた所はあった。
「でも……」
生活が厳しい事も彼女が精神疾患で悩んでいる事も分かったけど、それで結菜ちゃんが痛い思いをするのはどうしても納得できる話ではなかった。
沙綾香さんの方も私に何を言おうかと考えている様に見える。
「そんなに言うのなら、この子をあなたにあげるわ。
ちゃんと育ててみなさいよ……」
この人は何を言っているんだ?
自分の娘をただアパートの隣に住んでいただけの同世代くらいの子供に託すと言うのか?
馬鹿げた話だ。
母親が育児を放棄し、自分の子供を他人にあげてしまおうと言っているのだ。
「それってどう言う……?」
当然直ぐにイエスとこたえられる様な話ではない。
それどころか、私には無理な話だという事がよく分かっていた。
「言葉通りの意味よ……。
私の教育方針が不満だと言うのなら、この子を救ってみなさい……」
そんな提案をするこの母親が如何に狂っているかなど論議するまでもない。
数回ご飯をあげて、お風呂に入れてあげただけの私が彼女を救っていた気になっていた事は、考えが浅かったのではないかと思い直していた。
子供を育てていく事はそんなにも簡単な話ではない。
私は結菜ちゃんが言った通り、惨めな子を見て、自分の方がマシだと感じたかったのかもしれない。
優しくしてあげる自分に酔って、気持ちよくなっていただけなのかもしれない。
「そんな事が本当に可能だと思うの?」
それは母親である事の放棄ではないのか?
と思った所で、私は彼女を助ける事ができない。
「その気がないなら、あなたにできる事は何もない。
私達の事はもう放っておいて。
これ以上、この子に近付かないで!」
彼女は結菜ちゃんの腕を力強く引っ張ったかと思うと、扉は物凄い音を立てて、勢い良く閉まってしまった。
十分ほど経った後、また隣の部屋から彼女の叫ぶ声と結菜ちゃんが叩かれたり蹴られたりしている音がアパート内に響いていた。
それはしばらくの時間続いたけど、どうする事もできなかった。
私は自分の無力さを悔いた。
ねえ、聞いてよ。ちゃんと話そう……」
相手にはその気がない様だ。
「もういい……」
そう言って彼女は部屋から出て行った。
「結菜?」
沙綾香さんはかなり焦っていた様だったけど、彼女がこんなに早く帰ってきた事は一度もなかったので、油断していたと思う。
追いかけて廊下に出ると、結菜ちゃんは沙綾香さんに強く抱きしめられていた。
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「良かった……」
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あれほど「女は顔」と言っていたこの人が、お構いなしに叩くのだからよほど怒っているに違いない。
「ごめんなさい……」
食事も与えられなくて虐待を受けていたのだから、家から出なければこの子は死んでいただろう。
彼女の言う「あなたも」とはどういう事だろうか?
「やはり、あの男の娘だから私を捨てて出て行ってしまうのは仕方のない事なのかもしれないわね……」
この子の父親がどんな人なのかを聞いた事はなかったので知らなかったけど、彼も沙綾香さんを捨てて出て行ってしまったという事なのか?
「ところで涼香ちゃん、説明してくれる?
どうして結菜があなたの部屋に行っているのか……」
当然そういう疑問になるとは思うけど、こたえを間違えれば私も彼女も身が危なくなる可能性が高い。
さぁどうこたえたものか?
「ママ、もう止めて……。お姉ちゃんは悪くない……。
私が空腹に耐えられなくて、お願いして食べさせてもらったの……」
待ってよ、そこまで言ってしまったら結菜ちゃんが怒られるよ?
「えぇ知っているわ、これ程長期で食事を与えていないのにあなたは元気過ぎたから、どうにかして食べているんだろうなと思っていた……」
この人は母親失格ではないか……。
「娘を何だと思っているんですか?
ちゃんとご飯をあげて、お風呂にも入れてあげてくださいよ。
人並みの生活をさせてあげてくれませんか?」
苦笑いしながら、私に言う。
「涼香ちゃんは何を言っているの?
この子は私が生んだのだから、あなたには関係のない事でしょ?
どう育てるのかも私の勝手だわ……」
いつも外で会った時に話す沙綾香さんはこんな人ではなかった筈だと思い出すと、全くの別人ではないだろうかと思う程に人格が違っていた。
もはや説得できないかもしれないけど、どうにかして結菜ちゃんを助けたい。
「あなたこそ何を言っているんですか!
彼女が可哀そうだとは思わないんですか?」
正直言うと何をされるか分からなくて、かなりビビっていた。
「私だって、生みたくて生んだ訳じゃないのよ……。
今考えれば、娘なんて生まなければ良かったわ……。
この子が居なければ、私はもっと自由でいられた筈」
そんな事を言われて、何だか凄く怒りが込み上げてきた。
この人の考え方は今更変わらないし、心を入れ替えるつもりもないだろう。
私は拳を強く握りしめる。
「シングルマザーは涼香ちゃんが思っている程簡単なものじゃない!
昔は国も少子化対策と言って子供に支援をしていたけれど、財源を確保する為などと言って社会保険料の引き上げを決めた。
そのせいで、寧ろ生活は余計に苦しくなったの。
新型感染症のパンデミックで経済は疲弊していると言うのに、物価は高騰。
個人への増税はどんどんと酷くなって、生活していく事さえも厳しくなっていった。
その上、「女だから」とか「シングルマザーは子供が熱を出したらすぐに休むから使い物にならない」などと言われ、ろくな仕事にも就けなかった……。
朝から晩まで身を粉にして働いているのに収入は微々たるもので、それでもこの子の事を想えばストレスも我慢して働き続ける事ができた……。
インボイス制度の導入で小規模な会社は大幅に収益が下がり、次々倒産。
娘の為だけに、いつ潰れるかも分からない小さい会社で必死に働くだけの生活が長く続いた。
結局私がストレスによる双極性障害と診断されると、それまで勤めていた会社は解雇。
幼いあなたに、この苦しみが分かると言うの?」
そういう問題があるのは事実かもしれないし、そこに関しては否定する気もない。
「確かに今の政治は歪で、問題だらけだとは思います……。
でもだからと言って、子供を雑に扱ったり、暴力を振るって良い理由にはならないでしょ?」
彼女はため息をつき、私を睨みつける。
「じゃあどうすれば良かったと言うの?
あなたは当事者でないからそんな綺麗な事が言えるのよ……」
確かに私にとって直接的には関係のない話ではあるし、ここで言っている様な国の政策に巻き込まれた被害者でもない。
「養育費の請求や生活保護の申請だってできた筈では?」
そんな疑問に対して、彼女は真顔でこたえてきた。
「あなたの頭で考えられそうな事は一通り全部試したわ……。
でも、ダメだった……。
生活保護の捕捉率って知ってる?
いろいろな言い方はあるけど、簡単に言えば困ってる人の内、どれくらいが実際に受給できるかと言う数値。日本だと、だいたい何パ―セントくらいだと思う?」
全く想像もできない質問だった。
一〇〇パーセントまでは行かなくても、最低でも半分くらいはもらえるのではないだろうか?
いや待て、彼女の口調から考えるとそれよりも少ないのだろう。
「三〇パーセントくらいですか……?」
低過ぎる数字だっただろうか?
しかしそんな少ない人しか受給できないと言うのならば、システムは機能していないといっても過言ではないし、経済大国である日本がそんなに問題視していない訳もないだろうとも思う。
彼女は私を小バカにする様に笑っていた。
「一六パーセント前後よ……。
仮に一〇〇人申請しても、八〇~八五人は受けられないのが現状なの……」
は?
イメージしたよりも遥かに小さい数字で、そんなにもらえないのならそりゃ貧困社会が加速したって仕方がないんじゃないかとさえ思ってしまう。
「私だって申請はした。
けれど「まだ働けるでしょ」と言われて追い返されたわ……。
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確かにそれに関しては彼女の言う通りで、反論できない。
ニュースで話題になる政治や政策は、以前から本当に狂っていると感じながら見ていた所はあった。
「でも……」
生活が厳しい事も彼女が精神疾患で悩んでいる事も分かったけど、それで結菜ちゃんが痛い思いをするのはどうしても納得できる話ではなかった。
沙綾香さんの方も私に何を言おうかと考えている様に見える。
「そんなに言うのなら、この子をあなたにあげるわ。
ちゃんと育ててみなさいよ……」
この人は何を言っているんだ?
自分の娘をただアパートの隣に住んでいただけの同世代くらいの子供に託すと言うのか?
馬鹿げた話だ。
母親が育児を放棄し、自分の子供を他人にあげてしまおうと言っているのだ。
「それってどう言う……?」
当然直ぐにイエスとこたえられる様な話ではない。
それどころか、私には無理な話だという事がよく分かっていた。
「言葉通りの意味よ……。
私の教育方針が不満だと言うのなら、この子を救ってみなさい……」
そんな提案をするこの母親が如何に狂っているかなど論議するまでもない。
数回ご飯をあげて、お風呂に入れてあげただけの私が彼女を救っていた気になっていた事は、考えが浅かったのではないかと思い直していた。
子供を育てていく事はそんなにも簡単な話ではない。
私は結菜ちゃんが言った通り、惨めな子を見て、自分の方がマシだと感じたかったのかもしれない。
優しくしてあげる自分に酔って、気持ちよくなっていただけなのかもしれない。
「そんな事が本当に可能だと思うの?」
それは母親である事の放棄ではないのか?
と思った所で、私は彼女を助ける事ができない。
「その気がないなら、あなたにできる事は何もない。
私達の事はもう放っておいて。
これ以上、この子に近付かないで!」
彼女は結菜ちゃんの腕を力強く引っ張ったかと思うと、扉は物凄い音を立てて、勢い良く閉まってしまった。
十分ほど経った後、また隣の部屋から彼女の叫ぶ声と結菜ちゃんが叩かれたり蹴られたりしている音がアパート内に響いていた。
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