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2章 アパートの二人
31話 母親の帰宅
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「私も練習すれば、こんな美味しい料理が作れる様になるかな……?」
盛り付けられた分をパクパクと一気に食べてしまうと、空になったパスタのお皿の上に重ねる。
「ご馳走様。お腹いっぱいだよ」
食べ終わった食器を流し台にいれる。
「結菜ちゃんなら、すぐに上手になると思う。
それは私が保証するよ」
そう言われると、勉強してみようかなと思えてくる。
「私にも教えてくれる?」
お姉ちゃんは黙り込んで少しの間考え込んでいる様だった。
教えたくないのだろうか?
「せっかく褒めてもらったけど、これは私の知識じゃないんだ。
友達のお母さんにもらったレシピに書いてあった方法をそのまま使って、作ってるだけ……。
まぁ料理が上手くなる様に練習中ではあるけどね」
そう言って笑った。
「それは違う!」
大きな声で反論してしまった。
「お姉ちゃんは私からしたら、プロの料理人さんだよ。
こんなにも美味しい料理をいつもいっぱい作ってくれるのに、凄くない訳がないじゃない!」
その上、孤独だった私にこんな素敵な居場所までくれたのがとても嬉しかった。
ずっと一緒に居てくれて、感謝してもしきれない。
「ありがとう……」
微笑みながら軽く私の頭に手を乗せ、触れてくれた。
何だか心がざわつく。
この気持ちが何なのかは分からなかったけど、少なくともママと二人で居た時には感じた事のない感情だったと思う。
「本当のお姉ちゃんだったら良かったのに……」
それが本音だ。
児童相談所の職員がここに何度か来たと言う事はママと一緒に居られる時間も、もうそんなに長くは残されていないのかもしれない。
そう言う意味では、ここを出て行かなければならないかもしれないし、大好きなお姉ちゃんともお別れしなければダメなのかもしれない。
そんな風に考えると余計に息苦しく感じた。
せっかく出会えたのに……。
「どうしたの?ごめん……嫌だったかな?」
撫でてくれていた手を私の頭から離した。
「ごめんね、そうじゃないの……。
色々考えていたら、何だか寂しくなって……」
ママの事も大切だけど、もっとこの人と一緒に居たいと感じる様になっていた。
「大丈夫だよ……私もずっとここに居るから、寂しくないでしょ?」
こんな優しいお姉ちゃんなのに、何で話す事を迷っていたのだろうか?
理由は分からないけど、私の事は殆ど知っているような気がする。
でも仮に話を聞いてもらった上で、避けられたり、嫌われると言うのなら、それはそれで仕方がない事なのだとさえ思えてきた。
お姉ちゃんには私の考えや、思っている事を知っていて欲しいので、頑張って話してみようと決めた。
深呼吸をして心の準備を整えた。
「お姉ちゃんに聞いて欲しい事があるの……。
前々からずっと言おうかどうしようか、迷ってた話なんだけど、どう思われるか分からないから言うのが怖くて……。嫌われたらどうしよって考えたら……言えなかった」
そんな風に話を切り出そうとした時、お姉ちゃんは私を強く抱きしめてくれた。
「私の事を信用してそう言ってくれているんだと思うけど、本当に無理して言いたくない事は言わなくて大丈夫だからね?
それでも言いたくなったと言ってくれるのなら、話はちゃんと聞くよ。
どんな内容でも嫌いになったりしないし、笑ったりもしないから安心して。
だから、そんなに緊張しなくても大丈夫……。
焦らなくて良いし、ゆっくり結菜ちゃんのスピードで話して……ね?」
そう言ってもらえて凄く安心できたし、この人なら信頼できると思った。
「私……」
丁度話し始めた時、階段を上ってくる誰かの足音が聞こえた。
「結菜―ただいま……」
隣の部屋から声がした。
え?
まだ十六時半だったし、ママが帰ってくる様な時間ではない筈だ。
「あれ?結菜―」
隣の部屋から凄い音と大きな声が聞こえている。
「結菜―、結菜―何処―?」
それで気付いた、お姉ちゃんには話が筒抜けだったのだと……。
だからこの人は私の名前も状況も全部知っていたのか……。
「お姉ちゃんは状況を全部知っていて、可哀そうな子だと馬鹿にしてたの?」
涙が止まらない。
「ちがっ……」
信じていたのに……。
「何が違うの?私を見て笑っていたんでしょ?
殴られて、蹴られて、痛がっているのを聞いて楽しんでいたの?
ご飯を食べさせてくれたのも、惨めな子を見て、自分の方がマシだと感じたかったから?」
どちらにしても、ママにバレてしまった以上私は地獄の生活に戻るしかない。
「違う……そうじゃない。
ねえ、聞いてよ。ちゃんと話そう……」
お姉ちゃんの事を信じたいと言う気持ちも少しはあったけど、それよりも「裏切られた」とか「騙された」と言う考えに支配されていて、頭の中はぐちゃぐちゃだった。
「もういい……」
お姉ちゃんの部屋を出た。
「結菜?」
私は何を信じれば良いのか分からなくなっていた。
盛り付けられた分をパクパクと一気に食べてしまうと、空になったパスタのお皿の上に重ねる。
「ご馳走様。お腹いっぱいだよ」
食べ終わった食器を流し台にいれる。
「結菜ちゃんなら、すぐに上手になると思う。
それは私が保証するよ」
そう言われると、勉強してみようかなと思えてくる。
「私にも教えてくれる?」
お姉ちゃんは黙り込んで少しの間考え込んでいる様だった。
教えたくないのだろうか?
「せっかく褒めてもらったけど、これは私の知識じゃないんだ。
友達のお母さんにもらったレシピに書いてあった方法をそのまま使って、作ってるだけ……。
まぁ料理が上手くなる様に練習中ではあるけどね」
そう言って笑った。
「それは違う!」
大きな声で反論してしまった。
「お姉ちゃんは私からしたら、プロの料理人さんだよ。
こんなにも美味しい料理をいつもいっぱい作ってくれるのに、凄くない訳がないじゃない!」
その上、孤独だった私にこんな素敵な居場所までくれたのがとても嬉しかった。
ずっと一緒に居てくれて、感謝してもしきれない。
「ありがとう……」
微笑みながら軽く私の頭に手を乗せ、触れてくれた。
何だか心がざわつく。
この気持ちが何なのかは分からなかったけど、少なくともママと二人で居た時には感じた事のない感情だったと思う。
「本当のお姉ちゃんだったら良かったのに……」
それが本音だ。
児童相談所の職員がここに何度か来たと言う事はママと一緒に居られる時間も、もうそんなに長くは残されていないのかもしれない。
そう言う意味では、ここを出て行かなければならないかもしれないし、大好きなお姉ちゃんともお別れしなければダメなのかもしれない。
そんな風に考えると余計に息苦しく感じた。
せっかく出会えたのに……。
「どうしたの?ごめん……嫌だったかな?」
撫でてくれていた手を私の頭から離した。
「ごめんね、そうじゃないの……。
色々考えていたら、何だか寂しくなって……」
ママの事も大切だけど、もっとこの人と一緒に居たいと感じる様になっていた。
「大丈夫だよ……私もずっとここに居るから、寂しくないでしょ?」
こんな優しいお姉ちゃんなのに、何で話す事を迷っていたのだろうか?
理由は分からないけど、私の事は殆ど知っているような気がする。
でも仮に話を聞いてもらった上で、避けられたり、嫌われると言うのなら、それはそれで仕方がない事なのだとさえ思えてきた。
お姉ちゃんには私の考えや、思っている事を知っていて欲しいので、頑張って話してみようと決めた。
深呼吸をして心の準備を整えた。
「お姉ちゃんに聞いて欲しい事があるの……。
前々からずっと言おうかどうしようか、迷ってた話なんだけど、どう思われるか分からないから言うのが怖くて……。嫌われたらどうしよって考えたら……言えなかった」
そんな風に話を切り出そうとした時、お姉ちゃんは私を強く抱きしめてくれた。
「私の事を信用してそう言ってくれているんだと思うけど、本当に無理して言いたくない事は言わなくて大丈夫だからね?
それでも言いたくなったと言ってくれるのなら、話はちゃんと聞くよ。
どんな内容でも嫌いになったりしないし、笑ったりもしないから安心して。
だから、そんなに緊張しなくても大丈夫……。
焦らなくて良いし、ゆっくり結菜ちゃんのスピードで話して……ね?」
そう言ってもらえて凄く安心できたし、この人なら信頼できると思った。
「私……」
丁度話し始めた時、階段を上ってくる誰かの足音が聞こえた。
「結菜―ただいま……」
隣の部屋から声がした。
え?
まだ十六時半だったし、ママが帰ってくる様な時間ではない筈だ。
「あれ?結菜―」
隣の部屋から凄い音と大きな声が聞こえている。
「結菜―、結菜―何処―?」
それで気付いた、お姉ちゃんには話が筒抜けだったのだと……。
だからこの人は私の名前も状況も全部知っていたのか……。
「お姉ちゃんは状況を全部知っていて、可哀そうな子だと馬鹿にしてたの?」
涙が止まらない。
「ちがっ……」
信じていたのに……。
「何が違うの?私を見て笑っていたんでしょ?
殴られて、蹴られて、痛がっているのを聞いて楽しんでいたの?
ご飯を食べさせてくれたのも、惨めな子を見て、自分の方がマシだと感じたかったから?」
どちらにしても、ママにバレてしまった以上私は地獄の生活に戻るしかない。
「違う……そうじゃない。
ねえ、聞いてよ。ちゃんと話そう……」
お姉ちゃんの事を信じたいと言う気持ちも少しはあったけど、それよりも「裏切られた」とか「騙された」と言う考えに支配されていて、頭の中はぐちゃぐちゃだった。
「もういい……」
お姉ちゃんの部屋を出た。
「結菜?」
私は何を信じれば良いのか分からなくなっていた。
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