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2章 アパートの二人
26話 久しぶりのお風呂
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「お腹いっぱいになったなら良かったよ。
じゃあ次はこっちきて……」
そう言われてお風呂場に連れて行かれる。
自分の体臭なんて分からないけど、かなり汗臭いのだと思う。
「それはいいよ……」
何日も入っていないし、ヨレヨレの服を着て、髪も油でベタベタだ。
知らないお姉ちゃんに裸を見られるのが恥ずかしいと言うよりも、身体中のアザを見られたくないという気持ちの方が強かった。
私の名前が分かった上で、ご飯に誘ってくれるのだから、だいたいの事情は知られている筈だ。
でも、この傷やアザは他人が見て気持ちの良いものでない事は、世間知らずの私にだって分かる。
普通の人間なら、目をそらし、見たくはないものの筈だ。
こんな身体を見ても尚、優しく接してくれると言うのなら相当なお人好しで、かなりのお節介焼きだろう。
この人なら、そんな汚く醜い私をしっかりと直視し、全てを受け入れてくれるかもしれないと思う所はある。
そんな風に思わされた時には既に、強引に服を脱がされ、着ていたそれらは洗濯機で回されていた。
私の家から石鹸を持ってきた様だけど、このお風呂に石鹸はないのだろうか?
「かゆい所はないですか?」等という事を聞かれながら、頭をゴシゴシと洗われる。
お風呂に入るのは嫌だと拒んだはずだったけど、そんな抵抗もむなしく、裸で椅子に座らされている。
背後から髪に触れるこの人の手は、心地よくて何だかとても安心する。
「右上の方がかゆいよ、お姉ちゃん」
こんな幸せなひと時が夢でなくて何だと言うのだろうか?
「かしこまりました。
少々お待ちくださいませ……」
聞かれた事に返事をしてみると、かゆかったところを念入りにゴシゴシと強く洗ってくれた。
お腹が満たされていて、こんな風に優しくしてもらえる事が本当の幸せなのかもしれない。
「ありがとう……」
こんな傷やアザだらけの汚くてボロボロな身体を見ても、何も聞かずにいてくれて、普通に接してくれる事が嬉しかった。
「えっと、それで……聞きたいんだけど……」
お姉ちゃんは、言いにくそうな感じで何かを質問しようとしている。
あぁ、やっぱり私の事が気になるのかな?
このアザの事か、それともママの事か?
「何かな?」
こんな風に優しくしてくれても結局は汚い私を哀れんで、見くだしているのかな?
そう思うと何だか涙が出てくる気がした。
「さっきのハンバーグ……どうだったかな?
と思ってさ……」
何を聞かれているのか分からなかった。
「ハンバーグ?」
私の口に合ったのかと聞いているの?
それとも遠回しに、普段はどんなものを食べているのかと馬鹿にされている?
「あれは、友達のお母さんに教えてもらったレシピでね、まだあんまり作った事がないから………その……自信が無くて……」
あんな素敵なご飯は食べた事がなかった。
「美味しかったに決まってるよ!」
でもよくよく考えてみたら、お腹がすいて死にそうだった私が「美味しい」なんて言っても説得力なんてある筈がない。
「そっか……なら、良かった」
疑ってごめんなさい。
やっぱりお姉ちゃんは素敵な人だった。
それなのに「馬鹿にされている」なんて……。
私は相当嫌な子だ。
そう思っていると、後ろからそっと抱きしめられる。
「ありがとう……」
何だかとても嬉しそうだったけど、それが何故なのかは分からない。
「それは私の台詞だよ、お姉ちゃん」
ママ以外にこんな優しくしてもらった事なんてないのだから……。
後ろから回される腕を強く抱きしめ返した。
ああ、人肌がこんなにも温かかったなんて知らなかったな……。
こうやって心を許せる人と時間を共にできる事を幸せというのかな?
ママの事は好きだけど、昼間はお仕事に出かけていて、いつも一人なのだと考えると、私は孤独だったのだと思う。
ストレス発散の道具と言う意味で必要とされていたとしても、やっぱり痛いのは嫌だし、自分が惨めでずっと苦しかった。
でもお姉ちゃんは「こんな私でも生きていて良いんだ」と教えてくれた。
「シャワーかけるから、目を閉じていてね。
熱かったり冷たかったりしたら言ってね」
頭からシャワーのお湯をかけられる。
かなり長く頭も身体も洗っていなかったので、流れていくお湯は濁った茶色だった。
「ほら、髪綺麗になったね」
お風呂を汚していると言うのに何も言わないこの人は、どこまで良い人なのだろうか?
こんなにも汚い私が本当に嫌ではないのか?
少し優しすぎるのではないだろうか?
「今から身体洗うけど、痛かったら行ってね」
タオルを泡立たせると、身体にこすり付けてくる。
くすぐったくはあるけれど、嫌な気はしないし、どちらかと言えば気持ちが良かった。
「はい、腕上げて!」
もはや逆らう事は出来ず、言われた通りにするしかない。
両腕を上げると、脇から腰のあたりまでしっかりとごしごし洗ってくれる。
くすぐったいけど、何だか凄く気持ちが良い。
知らない人に、裸も身体のアザや傷も全部見られていると言うのに不思議と恥ずかしさは消えてしまっている。
身体の泡を流すシャワーのお湯はやっぱり茶色く濁っていたけど、お姉ちゃんは「綺麗になったね」と言って微笑んでくれるだけだった。
頭も身体も綺麗に洗ってもらうと、二人で一緒に湯船に浸かる。
この人は、こんなアザだらけで凄く汚い私と同じお湯に浸かる事が嫌ではないのだろうか?
そんな考えが頭から離れなかったけど、今までの言動を見てきた感じで言えば、たぶん気にしなくても大丈夫なのだろうと思う。
私の為にわざわざ沸かしてもらったお湯だったのではないかと思っていたが、最初から一緒に入ってくれるつもりだったとしたら、気は楽だ。
シャワーだって、かなりの間まともに浴びていなかったのだから、当然いつから湯船に浸かっていないのかも分からない。
ママの機嫌を如何に損ねないかという事と、どうやって空腹と痛みに耐えるか、という事で精一杯だった事もあって、お風呂の事を考えている余裕などなかった。
そもそも部屋から出る事も、知らない人と会う事も禁じられていたのだから、汚かろうが汗臭かろうが私には関係のない事だったのだ。
「狭くてごめんね、二人一緒に入るサイズのお風呂じゃないよね……」
そう言われて、首を横に振った。
「そんな事ない。
狭くたって構わないよ……。
上手くは言えないけど、その……今日はありがとう」
何も持っていない私の精一杯のお礼だった。
「気にしなくて良いよ。
お姉ちゃんは、結菜ちゃんの味方だから、困った事があったら、いつでもおいでよ」
私にとって、その言葉がどれ程元気と勇気を与えてくれたことだろうか……。
「着替えは何処にあるの?
とってくるよ……」
え?
あぁ、そう言えば私の服はお姉ちゃんが洗濯してくれたんだった。
「え?
今着ていたのしか持ってないよ?」
どうしよう、外に出る事がなかったので服なんて必要はなかったし、着替えなんて持っていない。
一着で事足りたし、たまに洗濯と部屋干しをしても乾くまでは裸で、寒い時は毛布にくるまっていたのだ。
基本的に暑い日は服を脱いで下着で過ごし、普通の日と寒い日は長袖長ズボンで過ごす。
家には誰も来ないし、誰にも見られる事は無いので、それで良かった。
「そうなの?
じゃあ、乾くまでは私の下着と服を貸すから、それを着ていてね?」
バスタオルで頭と身体を拭いてもらった後は、服を着せてくれた。
「こんな可愛いスカートなんて履いた事ないよ」
お姉ちゃんは何処までも私に優しかった。
「そこに座って……」
そう言って私を鏡の前に座らせるとドライヤーで髪を乾かしてくれた。
じゃあ次はこっちきて……」
そう言われてお風呂場に連れて行かれる。
自分の体臭なんて分からないけど、かなり汗臭いのだと思う。
「それはいいよ……」
何日も入っていないし、ヨレヨレの服を着て、髪も油でベタベタだ。
知らないお姉ちゃんに裸を見られるのが恥ずかしいと言うよりも、身体中のアザを見られたくないという気持ちの方が強かった。
私の名前が分かった上で、ご飯に誘ってくれるのだから、だいたいの事情は知られている筈だ。
でも、この傷やアザは他人が見て気持ちの良いものでない事は、世間知らずの私にだって分かる。
普通の人間なら、目をそらし、見たくはないものの筈だ。
こんな身体を見ても尚、優しく接してくれると言うのなら相当なお人好しで、かなりのお節介焼きだろう。
この人なら、そんな汚く醜い私をしっかりと直視し、全てを受け入れてくれるかもしれないと思う所はある。
そんな風に思わされた時には既に、強引に服を脱がされ、着ていたそれらは洗濯機で回されていた。
私の家から石鹸を持ってきた様だけど、このお風呂に石鹸はないのだろうか?
「かゆい所はないですか?」等という事を聞かれながら、頭をゴシゴシと洗われる。
お風呂に入るのは嫌だと拒んだはずだったけど、そんな抵抗もむなしく、裸で椅子に座らされている。
背後から髪に触れるこの人の手は、心地よくて何だかとても安心する。
「右上の方がかゆいよ、お姉ちゃん」
こんな幸せなひと時が夢でなくて何だと言うのだろうか?
「かしこまりました。
少々お待ちくださいませ……」
聞かれた事に返事をしてみると、かゆかったところを念入りにゴシゴシと強く洗ってくれた。
お腹が満たされていて、こんな風に優しくしてもらえる事が本当の幸せなのかもしれない。
「ありがとう……」
こんな傷やアザだらけの汚くてボロボロな身体を見ても、何も聞かずにいてくれて、普通に接してくれる事が嬉しかった。
「えっと、それで……聞きたいんだけど……」
お姉ちゃんは、言いにくそうな感じで何かを質問しようとしている。
あぁ、やっぱり私の事が気になるのかな?
このアザの事か、それともママの事か?
「何かな?」
こんな風に優しくしてくれても結局は汚い私を哀れんで、見くだしているのかな?
そう思うと何だか涙が出てくる気がした。
「さっきのハンバーグ……どうだったかな?
と思ってさ……」
何を聞かれているのか分からなかった。
「ハンバーグ?」
私の口に合ったのかと聞いているの?
それとも遠回しに、普段はどんなものを食べているのかと馬鹿にされている?
「あれは、友達のお母さんに教えてもらったレシピでね、まだあんまり作った事がないから………その……自信が無くて……」
あんな素敵なご飯は食べた事がなかった。
「美味しかったに決まってるよ!」
でもよくよく考えてみたら、お腹がすいて死にそうだった私が「美味しい」なんて言っても説得力なんてある筈がない。
「そっか……なら、良かった」
疑ってごめんなさい。
やっぱりお姉ちゃんは素敵な人だった。
それなのに「馬鹿にされている」なんて……。
私は相当嫌な子だ。
そう思っていると、後ろからそっと抱きしめられる。
「ありがとう……」
何だかとても嬉しそうだったけど、それが何故なのかは分からない。
「それは私の台詞だよ、お姉ちゃん」
ママ以外にこんな優しくしてもらった事なんてないのだから……。
後ろから回される腕を強く抱きしめ返した。
ああ、人肌がこんなにも温かかったなんて知らなかったな……。
こうやって心を許せる人と時間を共にできる事を幸せというのかな?
ママの事は好きだけど、昼間はお仕事に出かけていて、いつも一人なのだと考えると、私は孤独だったのだと思う。
ストレス発散の道具と言う意味で必要とされていたとしても、やっぱり痛いのは嫌だし、自分が惨めでずっと苦しかった。
でもお姉ちゃんは「こんな私でも生きていて良いんだ」と教えてくれた。
「シャワーかけるから、目を閉じていてね。
熱かったり冷たかったりしたら言ってね」
頭からシャワーのお湯をかけられる。
かなり長く頭も身体も洗っていなかったので、流れていくお湯は濁った茶色だった。
「ほら、髪綺麗になったね」
お風呂を汚していると言うのに何も言わないこの人は、どこまで良い人なのだろうか?
こんなにも汚い私が本当に嫌ではないのか?
少し優しすぎるのではないだろうか?
「今から身体洗うけど、痛かったら行ってね」
タオルを泡立たせると、身体にこすり付けてくる。
くすぐったくはあるけれど、嫌な気はしないし、どちらかと言えば気持ちが良かった。
「はい、腕上げて!」
もはや逆らう事は出来ず、言われた通りにするしかない。
両腕を上げると、脇から腰のあたりまでしっかりとごしごし洗ってくれる。
くすぐったいけど、何だか凄く気持ちが良い。
知らない人に、裸も身体のアザや傷も全部見られていると言うのに不思議と恥ずかしさは消えてしまっている。
身体の泡を流すシャワーのお湯はやっぱり茶色く濁っていたけど、お姉ちゃんは「綺麗になったね」と言って微笑んでくれるだけだった。
頭も身体も綺麗に洗ってもらうと、二人で一緒に湯船に浸かる。
この人は、こんなアザだらけで凄く汚い私と同じお湯に浸かる事が嫌ではないのだろうか?
そんな考えが頭から離れなかったけど、今までの言動を見てきた感じで言えば、たぶん気にしなくても大丈夫なのだろうと思う。
私の為にわざわざ沸かしてもらったお湯だったのではないかと思っていたが、最初から一緒に入ってくれるつもりだったとしたら、気は楽だ。
シャワーだって、かなりの間まともに浴びていなかったのだから、当然いつから湯船に浸かっていないのかも分からない。
ママの機嫌を如何に損ねないかという事と、どうやって空腹と痛みに耐えるか、という事で精一杯だった事もあって、お風呂の事を考えている余裕などなかった。
そもそも部屋から出る事も、知らない人と会う事も禁じられていたのだから、汚かろうが汗臭かろうが私には関係のない事だったのだ。
「狭くてごめんね、二人一緒に入るサイズのお風呂じゃないよね……」
そう言われて、首を横に振った。
「そんな事ない。
狭くたって構わないよ……。
上手くは言えないけど、その……今日はありがとう」
何も持っていない私の精一杯のお礼だった。
「気にしなくて良いよ。
お姉ちゃんは、結菜ちゃんの味方だから、困った事があったら、いつでもおいでよ」
私にとって、その言葉がどれ程元気と勇気を与えてくれたことだろうか……。
「着替えは何処にあるの?
とってくるよ……」
え?
あぁ、そう言えば私の服はお姉ちゃんが洗濯してくれたんだった。
「え?
今着ていたのしか持ってないよ?」
どうしよう、外に出る事がなかったので服なんて必要はなかったし、着替えなんて持っていない。
一着で事足りたし、たまに洗濯と部屋干しをしても乾くまでは裸で、寒い時は毛布にくるまっていたのだ。
基本的に暑い日は服を脱いで下着で過ごし、普通の日と寒い日は長袖長ズボンで過ごす。
家には誰も来ないし、誰にも見られる事は無いので、それで良かった。
「そうなの?
じゃあ、乾くまでは私の下着と服を貸すから、それを着ていてね?」
バスタオルで頭と身体を拭いてもらった後は、服を着せてくれた。
「こんな可愛いスカートなんて履いた事ないよ」
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