孤独の恩送り

西岡咲貴

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2章 アパートの二人

22話 女は顔、絶対に傷付けてはダメ

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「ごめんなさい……。
 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……」

 真夜中の出来事だった、寝ていた私はママに怒鳴り起こされた。

 何に腹を立てているのかは分からなかったけど、機嫌が悪い事だけは読み取れた。

 病気だから仕方がないと思って耐えていても、私だって痛いのは嫌だ。

 そう思うと無意識に謝ってしまう。

 それでもママの暴力は止まらず、私を傷付けた。

 しかし「女は顔よ、絶対に傷付けるのはダメ……本当に惨めになるから……」と少し前によく聞かされ、そのせいか顔だけには絶対に傷を付けなかった。

 殴ったり蹴ったりするのはいつもそれ以外の場所。

 昔何かがあったに違いないけど、「顔に傷付けてはダメ」という思想のおかげで私は綺麗なままで、服を着ていれば普通の少女でいられた。

 テレビで見る「親に愛されなかった子供達」はもっと酷い子が多く、場合によっては亡くなってしまうケースすらある中で私はまだ恵まれているのだと実感できた。
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