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1章 神様を信じますか?
5話 火事
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「颯太、麻衣―」
母さんの声が下から聞こえる。
「ご飯できたよー」
二階の自室にいた僕は、まだ少し残る宿題を途中で止めてノートを閉じた。
「はーい、今行くよー」
ドアを開けると廊下には美味しそうな匂いが充満している。
「お兄ちゃん、ちょっといい?」
呼ばれて隣の部屋に入る。
「どうしたんだよ?」
彼女は机の上に開けたノートを指さした。
「この問題が分からないんだけど……教えてくれない……?」
「ご飯食べてからでいいだろ?
もうお腹すいたよ……」
嫌な顔をされる。
「いや、ダメだよ!
謎を残したままだと、せっかくのご飯が美味しく食べられないよ……」
正直面倒だった。
「真面目だなぁ……」
ため息をついて、ノートを覗き込む。
「どれだよ?」
再び、問題を指でおさえる。
「コレだよ。コレ……」
麻衣は僕より一つ年下なので、質問された内容は去年勉強した範囲になる。
「おーい、ご飯冷めちゃうよー、いらないのー?」
母さんは、なかなか降りてこない僕達をもう一度呼ぶ。
お腹がすいていると言うのに、麻衣の変な真面目さのせいでこうなっている。
「はーい、今行くからもうちょっとだけ待ってー」
ノートを手に取って、言われた問題に目を通す。
「あぁ、コレだよ……。
途中式で簡単な計算間違いしてる。
だから、答えが合わないんだ……」
僕が言った所を直して、再び計算し始める。
結果、答えが合っていた様で質問した問題は解決した。
「ありがとう、お兄ちゃん」
彼女はお礼を言ってノートを閉じる。
「ねー、まだー?
本当にご飯冷めるよー?
せっかく作ったんだから、温かいうちに食べなさいよー?」
母さんの催促が何だか面白くて、二人でクスッと笑った。
「はーい、今行くよー」
再び部屋を出ると廊下には美味しそうな匂いが広がっている。
「良かったな、今日は麻衣の好きなハンバーグだぞ」
嬉しそうな妹の顔を見ていると何だかとても幸せな気持ちになれた。
家族仲良く過ごせるのだから、お腹がすいているのに手伝わされる妹の宿題も大した問題ではないとさえ思えた。
「やったー」
好物のハンバーグと分かればヨダレが出そうだ。
「お兄ちゃんも好きでしょ、母さんのハンバーグ?」
勿論好きだ、と頷く。
何気ない兄と妹の会話が少しの間続いた。
「母さんも待っているだろうし、早く行こう」
そう言って電気を消して廊下が暗くなると、窓からチラチラと赤いモノがこちらを照らしているのが見える。
「お兄ちゃん、あの光何かな?」
先程までは電気がついていたせいか全く気が付かなかったが、少し気になって窓を開けてみると熱風が入ってきた。
「え?」
近所のよく知っているアパートが炎に包まれ、物凄い勢いで燃えているのが分かる。
「あのアパートって……」
妹は不安そうな顔でこちらを見た。
少し距離はあると言うのに熱が伝わってくる。
「火事だー」
集まる近隣住民と野次馬達。
仲の良い友達の住むアパートだった事もあって凄く慌てた。
「母さん……涼香ちゃんちが火事だ……」
慌てて階段を駆け降りる。
彼女も驚いた様子で聞き返す。
「え……?
ちょっと様子を見てくるから、あなた達は家で待っていなさい」
そう言って母さんは玄関へ走る。
「母さん……行かないで……」
僕達は心配そうに呼び止めた。
「大丈夫よ、すぐに帰ってくるから二人とも家でおとなしくしていてね……」
そう言われてから十分がたち、二十分が過ぎても彼女は帰ってこなかった。
流石に遅くはないだろうかと思っていた頃、玄関の扉が開く音に少し安心する。
「ただいま……近くで凄い火事があったみたいだけど……」
仕事から帰ってきた父さんだ。
「母さんと会った?」
僕の問いに彼は冷静に聞き返した。
「どうかしたのか?」
嫌な予感がして外に出ると、消防隊員や野次馬だらけで如何に大きい火事なのかが分かる。
「母さん!母さん!」
様子を見てくると言った彼女を僕達は必死に探したが、簡単には見つける事ができなかった。
「颯太?麻衣?……母さんは?」
慌てる僕達を追ってきた父さんが問う。
「父さんが帰ってくる少し前に、様子を見てくると言って出て行ったの。
探しても何処にもいなくて……。
母さん、大丈夫だよね?」
それを聞いた父さんも彼女を探し始める。
「未祐―、何処だー」
母さんの声が下から聞こえる。
「ご飯できたよー」
二階の自室にいた僕は、まだ少し残る宿題を途中で止めてノートを閉じた。
「はーい、今行くよー」
ドアを開けると廊下には美味しそうな匂いが充満している。
「お兄ちゃん、ちょっといい?」
呼ばれて隣の部屋に入る。
「どうしたんだよ?」
彼女は机の上に開けたノートを指さした。
「この問題が分からないんだけど……教えてくれない……?」
「ご飯食べてからでいいだろ?
もうお腹すいたよ……」
嫌な顔をされる。
「いや、ダメだよ!
謎を残したままだと、せっかくのご飯が美味しく食べられないよ……」
正直面倒だった。
「真面目だなぁ……」
ため息をついて、ノートを覗き込む。
「どれだよ?」
再び、問題を指でおさえる。
「コレだよ。コレ……」
麻衣は僕より一つ年下なので、質問された内容は去年勉強した範囲になる。
「おーい、ご飯冷めちゃうよー、いらないのー?」
母さんは、なかなか降りてこない僕達をもう一度呼ぶ。
お腹がすいていると言うのに、麻衣の変な真面目さのせいでこうなっている。
「はーい、今行くからもうちょっとだけ待ってー」
ノートを手に取って、言われた問題に目を通す。
「あぁ、コレだよ……。
途中式で簡単な計算間違いしてる。
だから、答えが合わないんだ……」
僕が言った所を直して、再び計算し始める。
結果、答えが合っていた様で質問した問題は解決した。
「ありがとう、お兄ちゃん」
彼女はお礼を言ってノートを閉じる。
「ねー、まだー?
本当にご飯冷めるよー?
せっかく作ったんだから、温かいうちに食べなさいよー?」
母さんの催促が何だか面白くて、二人でクスッと笑った。
「はーい、今行くよー」
再び部屋を出ると廊下には美味しそうな匂いが広がっている。
「良かったな、今日は麻衣の好きなハンバーグだぞ」
嬉しそうな妹の顔を見ていると何だかとても幸せな気持ちになれた。
家族仲良く過ごせるのだから、お腹がすいているのに手伝わされる妹の宿題も大した問題ではないとさえ思えた。
「やったー」
好物のハンバーグと分かればヨダレが出そうだ。
「お兄ちゃんも好きでしょ、母さんのハンバーグ?」
勿論好きだ、と頷く。
何気ない兄と妹の会話が少しの間続いた。
「母さんも待っているだろうし、早く行こう」
そう言って電気を消して廊下が暗くなると、窓からチラチラと赤いモノがこちらを照らしているのが見える。
「お兄ちゃん、あの光何かな?」
先程までは電気がついていたせいか全く気が付かなかったが、少し気になって窓を開けてみると熱風が入ってきた。
「え?」
近所のよく知っているアパートが炎に包まれ、物凄い勢いで燃えているのが分かる。
「あのアパートって……」
妹は不安そうな顔でこちらを見た。
少し距離はあると言うのに熱が伝わってくる。
「火事だー」
集まる近隣住民と野次馬達。
仲の良い友達の住むアパートだった事もあって凄く慌てた。
「母さん……涼香ちゃんちが火事だ……」
慌てて階段を駆け降りる。
彼女も驚いた様子で聞き返す。
「え……?
ちょっと様子を見てくるから、あなた達は家で待っていなさい」
そう言って母さんは玄関へ走る。
「母さん……行かないで……」
僕達は心配そうに呼び止めた。
「大丈夫よ、すぐに帰ってくるから二人とも家でおとなしくしていてね……」
そう言われてから十分がたち、二十分が過ぎても彼女は帰ってこなかった。
流石に遅くはないだろうかと思っていた頃、玄関の扉が開く音に少し安心する。
「ただいま……近くで凄い火事があったみたいだけど……」
仕事から帰ってきた父さんだ。
「母さんと会った?」
僕の問いに彼は冷静に聞き返した。
「どうかしたのか?」
嫌な予感がして外に出ると、消防隊員や野次馬だらけで如何に大きい火事なのかが分かる。
「母さん!母さん!」
様子を見てくると言った彼女を僕達は必死に探したが、簡単には見つける事ができなかった。
「颯太?麻衣?……母さんは?」
慌てる僕達を追ってきた父さんが問う。
「父さんが帰ってくる少し前に、様子を見てくると言って出て行ったの。
探しても何処にもいなくて……。
母さん、大丈夫だよね?」
それを聞いた父さんも彼女を探し始める。
「未祐―、何処だー」
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