1ページ劇場①

ルカ(聖夜月ルカ)

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(あと少し……)


カレンダーには赤い丸。
 明日がその日だ。


 (大丈夫よね…うん、もう見落としはないはず)



さして広くはない部屋の中を見渡して、私はひとり頷いた。


元々几帳面な性格だから、普段から整理整頓はなされていた。
でも、ここのところは特にそれを頑張って、いらないものは徹底的に処分した。
だから、とてもすっきりして居心地が良い。
借りっぱなしになってるものはなかったか、頼まれてたことはなかったか、いろんなことをリストに書いて、すべてチェックした。
大丈夫…問題はない。


やり残したことは何もないと思えるまで、しっかりと確認して……
そのせいか、今の私にはそれほど大きな感情の揺さぶりはない。


だけど……後悔のようなものは確かにあった。
これで良かったんだろうか?という後悔……


私には、子供頃からおかしな能力があった。
人の死期がわかるというもの。
それも、はっきりとした日にちがわかるのだ。
それを口にしたら、皆に嫌がられるということがわかるようになってからは、一切誰にも言わなくなった。
私のその能力は一度もはずれたことはない。
死因こそわからないものの、亡くなる日は間違いなく当たってしまう。
もちろん、私自身の死期もわかっていた。
私は一般的な人よりもずっと早い。
だから、それまでの計画を立てた。
出来るだけ悔いが残らないように、やりたいことはなんでもやっておこうと考えた。
そして、好きな人は作らないと決めた。
当然、結婚なんてしないし、子供も作らない。
親兄弟とも疎遠にしてきたし、友達とも表面的なつきあいを心がけた。
別れが辛くなるからだ。
私は綿密に計画を立て、それをすべて順調にこなして来た。
だから、悔いはないはずだったのに、今、私の心の中には後悔が大きく渦巻く。



 誰のことも本気で愛さなかった。
 誰からも本気で愛されなかった。



そのことが、自分でも驚く程、大きな後悔となった。



でも、もう遅い……明日、私は死んでしまうのだから……
今はなんともないから、きっと、突発的な病気や事故だろう。


 (さぁ、寝ようっと…)


 私はベッドに横になった。
 神経が高ぶって眠れるはずもなかったけれど、無理矢理目をつぶった。


壁の赤い丸印……
カレンダーのあの印を皆は何だと思うだろう…?

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