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海の彼方に

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それからの俺は、見知らぬ町に着く度に真面目に働き金を稼いだ。
 俺のいた町とは違い、大きな町には職もいろいろあったし、賃金も良かった。
 金は確実にたまっていったが、それはわずかなものだった。
それに、家を出てもう何年も経ったというのに地図の場所もわからない。
 以前、父さんと話合って、見当をつけた所は、いざ行ってみるとまるで見当外れだったことがわかった。
やっぱり、海に出なくては……
そんな時、たまたま買った富くじで、俺は大金を手にした。
これは天の恵みだ。
 今まで真面目に頑張って来た俺へのご褒美なんだと思った。
 俺はその金で早速中古の小さな船を買った。
だが、船だけ買っても、その先どうすれば……
そんな時、知りあったのがジョニーという若い男だった。
ジョニーは俺よりも年下だったが、漁師の息子で、船の操縦も出来れば海の事にも詳しい。
 俺は、ジョニーを誘い、宝さがしの旅へ繰り出した。



それから瞬く間に月日は流れた。
 気が付けば、船は立派な帆船となり、乗組員も大勢いる。
 俺は、いつの間にか海賊と言われる者になっていて、髪や髭には白いものが目立つようになっていた。
 確か、初めてそういうことをしたのは、海に出て二年ちょっとした頃だった。
あちこち調子が悪くなった船のことを案じていたら、ジョニーが「俺に良い考えがある」と言い出した。
にこやかな顔で出会った船に乗り込み、奴はその船を奪った。
その時の怖さと罪悪感は今でも忘れちゃいない。
なのに、そんなことを繰り返すうちに、俺は何とも感じなくなって……



時折、俺は考える。
 俺は、間違った生き方をしてしまったんじゃないか…と。
 家族を捨て、ありもしない宝探しを何十年も続け、家庭を築くこともなく、人の金品を奪うことを生業として……
あぁ、完全に間違っている。
じいちゃんの地図にさえ出会わなければ、こんなことにはならなかっただろうに……



だが、そんな後悔もあと少しで消えてなくなることだろう。
 俺は、ようやく宝のありかを見つけたんだ。
 宝に執着があるわけじゃない。
ただ、それを手にすることで、俺は、間違ってはいただろうが、一生懸命生きて来た証を手に入れるんだ。
 宝をみつけたら、それをみんなに分けて、俺はもう引退しよう……
船はジョニーに託そう。
ジョニーにはたいそう世話になったから……
若い頃からずっと行動を共にしてきた、かけがえのない親友だから……

そんな考え事をしているうちに、島は間近に迫っていた。



 「おい、ジョニー…」

 振り向いたと同時に俺は違和感を感じた。
なにか、熱いものが押し当てられたような…酷く不快な……



「ジョ…ニー……」

 俺はその場に倒れ、生温かいものが次第に身体を包みこむ。
 最後に見たのは、ジョニーのふてぶてしい笑みと、奴が手に持った赤いナイフだった。



 ~fin. 
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