184 / 239
蛍舞う夜に
1
しおりを挟む
(ほたる…いないよ……)
彼と来るはずだったほたる狩り。
私は、彼と一緒にここで初めてのほたるを見て…
多分、もう少ししたら花火や夜景を見に行って、暑い夏を楽しく過ごし…
そして、秋には彼の妻になるはずだった……
だけど、突然の事故がその予定をすべて白紙に戻した。
あの日から、もう三年……
泣いて泣いて気が狂う程泣いて……
忘れよう、前に進もうともがき苦しむ日々が続いた。
ようやく、ほたる狩りにいくことを決意した私に、友達が言った。
「良かった。やっと乗り越えられたんだね!」
あの日着るはずだった浴衣を来て、久しぶりに美容院にも行ってきた。
「ほ、ほ、ほたる、来い…」
誰にも聞こえないように歌を口ずさむ。
まだ少し早いせいか、ほたるの姿もほたるを目当てに来たような人影もない。
あたりは闇に塗りつぶされていた……
(……あ)
その時、1匹のほたるが闇の中に浮かび上がった。
私は吸い寄せられるようにその小さな灯りについていった。
進んでいく度に、ほたるの数は増えていき、気付くとあたりはこの世のものとは思えないほどのほたるの群れに囲まれていた。
「……有美……」
「浩ちゃん!」
そこには浴衣を着た彼が、ごく自然に立っていた。
声も微笑みもそのままに……
「あ~あ、とうとう来ちゃったんだ。」
「だって…私、もう無理だから……」
涙が込み上げて、それだけ話すのがやっとだった。
「一緒に行こうか。」
私は差し出された彼の手をしっかりと握り締めた。
浩ちゃんにはバレていた。
私がこの先の川に向かっていたことを。
とても怖かったけど、浩ちゃんと一緒なら何も怖くない。
浩ちゃんは、鼻歌を歌いながら、私と一緒に歩いていく……
「有美……僕はずっと君の傍にいたこと気付かなかった?」
「だ、だって、私には見えないもの。」
「酷いな。見えないだけで気付かないなんて……僕は有美がもう良いって言うまで、ずっと一緒にいるよ。
……信じてくれる?」
「う、うん。信じる。」
「絶対だよ!」
「う、うん。」
「じゃ、指切りしよう。」
*
次の日の朝、私は川岸に倒れてる所を保護された。
私の小指には赤い跡が残っていた。
溢れだす涙は止まらない。
ずっと傍にいるよ……
そんな彼の声が耳をかすめた気がした。
彼と来るはずだったほたる狩り。
私は、彼と一緒にここで初めてのほたるを見て…
多分、もう少ししたら花火や夜景を見に行って、暑い夏を楽しく過ごし…
そして、秋には彼の妻になるはずだった……
だけど、突然の事故がその予定をすべて白紙に戻した。
あの日から、もう三年……
泣いて泣いて気が狂う程泣いて……
忘れよう、前に進もうともがき苦しむ日々が続いた。
ようやく、ほたる狩りにいくことを決意した私に、友達が言った。
「良かった。やっと乗り越えられたんだね!」
あの日着るはずだった浴衣を来て、久しぶりに美容院にも行ってきた。
「ほ、ほ、ほたる、来い…」
誰にも聞こえないように歌を口ずさむ。
まだ少し早いせいか、ほたるの姿もほたるを目当てに来たような人影もない。
あたりは闇に塗りつぶされていた……
(……あ)
その時、1匹のほたるが闇の中に浮かび上がった。
私は吸い寄せられるようにその小さな灯りについていった。
進んでいく度に、ほたるの数は増えていき、気付くとあたりはこの世のものとは思えないほどのほたるの群れに囲まれていた。
「……有美……」
「浩ちゃん!」
そこには浴衣を着た彼が、ごく自然に立っていた。
声も微笑みもそのままに……
「あ~あ、とうとう来ちゃったんだ。」
「だって…私、もう無理だから……」
涙が込み上げて、それだけ話すのがやっとだった。
「一緒に行こうか。」
私は差し出された彼の手をしっかりと握り締めた。
浩ちゃんにはバレていた。
私がこの先の川に向かっていたことを。
とても怖かったけど、浩ちゃんと一緒なら何も怖くない。
浩ちゃんは、鼻歌を歌いながら、私と一緒に歩いていく……
「有美……僕はずっと君の傍にいたこと気付かなかった?」
「だ、だって、私には見えないもの。」
「酷いな。見えないだけで気付かないなんて……僕は有美がもう良いって言うまで、ずっと一緒にいるよ。
……信じてくれる?」
「う、うん。信じる。」
「絶対だよ!」
「う、うん。」
「じゃ、指切りしよう。」
*
次の日の朝、私は川岸に倒れてる所を保護された。
私の小指には赤い跡が残っていた。
溢れだす涙は止まらない。
ずっと傍にいるよ……
そんな彼の声が耳をかすめた気がした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる