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残花
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「あの~……」
背中からかけられた声に振り向くと、そこには若い爽やかな青年が立っていた。
久しぶりのことに、私は必要以上に緊張して……
「は、はいっ。何でしょうか?」
「このあたりに●●っていうお店があると思うんですが……」
「あぁ……●●でしたら……」
期待から落胆に変わるのはほんの一瞬の出来事だった。
うまく説明出来たかどうかもわからない。
(私って、なんて馬鹿なんだろう……)
こんなおばさんになってしまった私に、あんな若い子が声をかけてくるはずがない。
そんなことはわかってるはずなのに、なのに、まだ私は心の中に小さな期待を抱えている。
若い頃の私は出掛ける度に男性達に声をかけられた。
皆が私にちやほやしてくれて、誰もが私と一緒にいたがった。
なのに……年をとっていく度に、私の周りからはまるで潮がひいていくかのように取り巻きが少なくなっていった。
四十路を目前にする今では、もう私に声をかけてくる人も、もてはやしてくれる人もいない。
(私はただのおばさんなんだ……)
ショーウィンドウに映る姿は、確かにどこかぱっとしない。
以前は、ミスコンにもいくつか出たことがあって、スカウトされたこともあって……
なのに、今は結婚はおろか、彼氏さえいない。
こうなったことには自分でも思い当たることもあるし、後悔することもある。
だけど、そんなことを言っても過去が変えられるはずもない。
「あ、あの……」
今日はえらく道を聞かれる日だ。
「はい。」
立っていたのは冴えない感じの男性。
「こ、こんにちは。」
「え?こ、こんにちは。」
良く見ると、確かにその顔にはなんとなく見覚えがあった。
「あ、あの…コンビニで何度か…」
私がわかってないことに気付いたのか、男性は自分のことを簡単に説明した。
「コンビニ……あっ!」
思い出した。
何度かコンビニで会い、その度に会釈をする男性だ。
いつものスーツと違うから、気付かなかった。
「お、お買い物ですか?」
「え?えぇ、まぁ…」
「あ、あの……」
男性は落ち着かない様子で俯いた。
「あの、何か?」
「よ、良かったらお茶でも飲みませんか?」
「……え?」
「ま、前から素敵な人だなって……その……」
「わ、私……」
若い頃の私ならきっと話も聞かなかっただろう。
どこにでもいそうな冴えない男性からの誘いに、なぜ、こんなにドキドキするのか自分でもわからない。
「す、すみません!失礼なことを言って……僕みたいな男、あなたには……」
「……ちょうど、今、お茶でも飲みたいなって思ってたんです。」
「え…!?」
心底驚いたようなその顔は、よくよく見れば、それほど悪くもない。
私をまだ素敵だと思ってくれる人がいるのなら、私はまだ咲いていられるかもしれない…
背中からかけられた声に振り向くと、そこには若い爽やかな青年が立っていた。
久しぶりのことに、私は必要以上に緊張して……
「は、はいっ。何でしょうか?」
「このあたりに●●っていうお店があると思うんですが……」
「あぁ……●●でしたら……」
期待から落胆に変わるのはほんの一瞬の出来事だった。
うまく説明出来たかどうかもわからない。
(私って、なんて馬鹿なんだろう……)
こんなおばさんになってしまった私に、あんな若い子が声をかけてくるはずがない。
そんなことはわかってるはずなのに、なのに、まだ私は心の中に小さな期待を抱えている。
若い頃の私は出掛ける度に男性達に声をかけられた。
皆が私にちやほやしてくれて、誰もが私と一緒にいたがった。
なのに……年をとっていく度に、私の周りからはまるで潮がひいていくかのように取り巻きが少なくなっていった。
四十路を目前にする今では、もう私に声をかけてくる人も、もてはやしてくれる人もいない。
(私はただのおばさんなんだ……)
ショーウィンドウに映る姿は、確かにどこかぱっとしない。
以前は、ミスコンにもいくつか出たことがあって、スカウトされたこともあって……
なのに、今は結婚はおろか、彼氏さえいない。
こうなったことには自分でも思い当たることもあるし、後悔することもある。
だけど、そんなことを言っても過去が変えられるはずもない。
「あ、あの……」
今日はえらく道を聞かれる日だ。
「はい。」
立っていたのは冴えない感じの男性。
「こ、こんにちは。」
「え?こ、こんにちは。」
良く見ると、確かにその顔にはなんとなく見覚えがあった。
「あ、あの…コンビニで何度か…」
私がわかってないことに気付いたのか、男性は自分のことを簡単に説明した。
「コンビニ……あっ!」
思い出した。
何度かコンビニで会い、その度に会釈をする男性だ。
いつものスーツと違うから、気付かなかった。
「お、お買い物ですか?」
「え?えぇ、まぁ…」
「あ、あの……」
男性は落ち着かない様子で俯いた。
「あの、何か?」
「よ、良かったらお茶でも飲みませんか?」
「……え?」
「ま、前から素敵な人だなって……その……」
「わ、私……」
若い頃の私ならきっと話も聞かなかっただろう。
どこにでもいそうな冴えない男性からの誘いに、なぜ、こんなにドキドキするのか自分でもわからない。
「す、すみません!失礼なことを言って……僕みたいな男、あなたには……」
「……ちょうど、今、お茶でも飲みたいなって思ってたんです。」
「え…!?」
心底驚いたようなその顔は、よくよく見れば、それほど悪くもない。
私をまだ素敵だと思ってくれる人がいるのなら、私はまだ咲いていられるかもしれない…
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