1ページ劇場①

ルカ(聖夜月ルカ)

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タイムカプセル

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「それじゃあ、そろそろ埋めてくれ。」

「心配だなぁ…」

「大丈夫だって。
それじゃあ、トシ、頼むわ。」

「オッケー!」



少年の一人がホースの先端を持ち、穴の縁に上がって、土を戻し始めた。
小柄な二人の少年は、収納ケースに足を折り曲げ横になっている。



それは、少年達のちょっとした冗談だった。
卒業を数ヵ月後に控えたある日、三人の話題は次の日に埋めることになっているタイムカプセルのことばかりだった。

さんざん話しているうちに、三人は最悪のおふざけを思い付いたのだ。
それは、前夜から土の中に潜んでいて、みんながタイムカプセルを埋めるために土を掘り出したらそこから飛び出し、みんなを驚かせるというものだった。

収納ケースに潜むのは、小柄な充と健太に決まった。
空気を通すためのホースを伸ばし、念のため、缶入りの酸素も用意した。



「それにしても、おむつはいやだなぁ…」

「仕方ないだろ!しばらくトイレには行けないんだから。
漏らすよりはマシじゃないか。」



タイムカプセルを埋めるのは朝からだ。
少年達は真夜中に行動を実行した。
土の中に潜むのは数時間だ。



汗を流しながら、トシは二人に土を被せた。
ホースの先端を埋めてしまわないように気を付けながら…



三人がかりで掘った穴を埋め終えた頃、トシは全身汗まみれになっていた。



「大丈夫か?」

「あぁ、大丈夫だ。
だけど、かなり恐い雰囲気だな。」

ホースから伝わる充の小さな声を聞いて、トシも一安心した。



「携帯は?」

「やっぱりだめだ。」

「そうか……」

「あ、トシ…今、何時だ?」

「4時過ぎ。じゃ、あと4時間後にな!」



トシは、ランタンや荷物を手に取ると、もう一度あたりを懐中電灯で照らした。 
忘れ物のないことを確認すると、トシは自転車をこぎ始めた。







「えーーっ!!」


教師の告げた一言に、クラス中にざわめきが広がった。
それは、トシが早朝ひき逃げ事故に遭い、亡くなったという知らせだった。



その日、予定されていたタイムカプセルは延期された。
トシと仲の良かった充と健太も姿を消していることから、三人は事件に巻き込まれたのではないかと考えられたが、情報はなかなか集まらなかった。



やがて、数ヵ月後…卒業間近になって、タイムカプセルは埋められた。
それは、充と健太のいる場所からほんの数メートルの場所だった。



彼らが卒業した年の初夏、ひき逃げの犯人が捕まった。
だが、彼はトシの件は認めたが、充と健太のことは知らないと言うばかりだった。



5年の月日が流れ、彼らが成人したある日…ようやく、充と健太が発見された。



少年達の思い付いた冗談に、誰もまだ気付くことはなかった。 
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