1ページ劇場①

ルカ(聖夜月ルカ)

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にゃんにゃんにゃん

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「ねぇ、翼君、あの白い……あれ?」

良く晴れた日曜日、私は翼君とショッピングに出掛けた。
翼君が夏物のシャツがほしいというので探してたんだけど、翼君はいつの間にかいなくなってて……



(あ、いた…!)


来た道をゆっくりと引き返しながらあたりを見回していると、一軒の雑貨屋さんで翼君をみつけた。



「翼君!」

「あ、カナ!見て見て!これ、めちゃめちゃ可愛い!」

翼君はぬいぐるみの前で、とても幸せそうに微笑んでいた。



「れんた君とりんこさんね。」

「えっ!カナ、この子達のこと知ってるの?」

「え…う、うん。人気の漫画でね、確か、もうじきアニメが始まるらしいよ。」

「そうなんだぁ。」

翼君は、当然、その二体のぬいぐるみを買い、シャツのこと等忘れたみたいに上機嫌になっていた。







「はい、カナにはりんこさんをあげるね。」

「あ、ありがとう!」

立ち寄ったコーヒーショップで、翼君はピンクのりんこさんのぬいぐるみを私にくれた。



「この子達、アニメではどんな声になるんだろうね?」

「マンガでは割りとりんこさんはクールで、れんたくんは甘えん坊で…」

「りんこさん、遊びに行こうにゃん。」

翼君は青いれんたくんを持ち出して、ぴょこぴょこ動かしながら高い声でそう言った。



(……え?)



「ほら、カナもりんこさん、やってよ。」

「え、えぇっと……」

「もうっ!…りんこさんはクールなんでしょ?だったら……」

翼君はもたもたしてる私からりんこさんを奪って、れんたくんと向かいあわせにし……


「仕方ないわね。つきあってあげるにゃん。」



「こんな感じじゃない?」

自信満々のスマイルで翼君は笑った。 



「りんこさんは何を飲むにゃん?
僕はブラックにするにゃん。」

「じゃ、私はメロンソーダにしようかな……」

「もぅ~…ちゃんとりんこさんになりきって話さなきゃ!」



って、翼君……
さっきから、にゃん、にゃん言ってるけど……まさか、りんこさん達を猫だなんて思ってないよね?
ほら、良く見て!
猫とは顔も体つきも違うよ。
だって、彼らはフェレットなんだもん。



「はいっ!もう一回やり直し!」

「え……」



私…一体どうすれば……



「カナ!早く!」

「わ、私はメロンソーダにする…にゃん。」



……私にはやっぱりそう言うしかなかった。 
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