１ページ劇場①

さよならの向こう側

１

「ユキ…ユキーーー！」



夢だと思いたかった。
だけど、それはあまりにも残酷な現実で……



「あんた、よく来れたものね！」



葬儀の後、僕は暴言と共に背中を突かれた。
振り返って見たその人の顔に、僕は見覚えがあった。
確か、以前、一度だけ会ったことがある。
ユキの友達の……そう、沙織っていったっけ。
彼女は潤んだ赤い目で僕を睨みつけ、ぷいと顔を逸らして去って行った。



「あの…田村様ですか？」

「はい。」

「喪主様から伝言です。今夜、ゆきえ様のお家でお会いしたいとのことです。」

「わかりました。」



＊



彼女が火葬場に運ばれて行ってから、暗くなるまでの間、僕はどこで何をしていたのか覚えていない。
出来る事なら、そんなつまらないことじゃなくこの辛い現実を忘れてしまいたい。
だけど、彼女の家に着くなり、胸が熱くなりどっと涙が溢れ出た。
……忘れることなんて出来る筈ないんだ。



「どうぞ…」



数年ぶりに訪れた彼女の部屋はほとんど変わりなく…
そこにいるのが彼女の母親と妹だけだということと…部屋の片隅に置かれた白い包みが、大きく違ってた。



「す、すみませんでした…！」

僕は、挨拶もしないうちに頭を床にこすりつけて泣き崩れた。
押し寄せる後悔の念に、僕の心は今にも張り裂けそうだった。



「馬鹿馬鹿馬鹿！」

妹の泣き声と共に、僕の背中に痛みが走る。



「やめなさい。」

「いえ、もっと…もっと殴って下さい。
気の済むまで僕を殴って下さい！」

正直言って、僕は今すぐ殺してほしいような気持ちだった。
謝りたかった相手は…ユキはもういないのだから……



「そんなことより、田村さん……
どうか、話を聞かせて下さい。」

穏やかなお母さんの声に、僕はゆっくりと顔を上げて頷いた。