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梅林の花は咲き乱れて
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「うっわー、広い!
さすがに香りも良いね!」
「……そうだね。」
「えーーっと……スイーツのお店はどこなんだろう?
確か、梅林を突き抜けた向こうだって話だけど…
ちょっと見て来るね。」
私が返事をするのも待たずに、絵美はさっさと歩き出してしまった。
私はそんな絵美の後ろ姿をみつめながら、これからどうしたものかとその場に立ち尽す。
(……なんで来ちゃったんだろう?)
目の前に広がる数え切れない程の梅の木には、薄桃色の花が咲きほこり、その光景は圧巻だ。
まだこんなに寒いというのに、花を咲かせるなんて、梅の花って変わってる……
私の手が自然に梅の枝に伸び、力を入れそうになった所ではっと気付いた。
(だめじゃない、枝を折るなんて……)
苦笑しながら私はゆっくりと梅林に足を踏み入れた。
梅の花に囲まれていると、なんだか落ちつく。
そのことが奇妙に感じられた。
実は私は梅の花にいやなイメージがあった。
若い頃から何度も見た夢……
まわりは梅の花…そして、そこにいるのは着物を着た人々。
平安時代みたいな感じ。
みんな楽しそうにして、梅の枝を髪に挿してる人が目立つ。
突然の怒号と悲鳴にそんな和やかな雰囲気が一転。
そして、目の前が赤に塗り潰されて………
私は飛び起きる。
全身が汗にまみれ、飛び出しそうな心臓……
そして、恐怖と絶望感……
友達に話したらそれは前世の記憶なんじゃないかって言われたけど、前世なんてよくわからないもの、そう言われてもピンと来ない。
とにかく、そんなことから梅の花が怖くなった。
近付くとなにか悪いことでも起きそうな…そんなことを考えてしまって……
なのに今日は来てしまった。
絵美と一緒にここに来るのは、本当はゆかりのはずだったんだけど、ゆかりに急な用が出来て、泣き付かれた私が代わりに来てしまったというわけだ。
(普段なら、それでも断るんだけど……
でも、不思議と今日はそこまで頑なに断る気がしなかった。
つまらないことにこだわるなってことだったのかもしれないな。
だって…ここ、けっこう気持ち良い場所だもん。)
そんなことを考えながら歩いていると、下を向いて落ち付かない素振りで動き回ってる人がいた。
何かを落としたような様子だ。
「あの……」
「え……?」
顔を上げた男性の顔に、私はずっと忘れてたときめきを感じた。
特別な美男子というわけじゃないのに、まるで一目惚れでもしてしまったようなドキドキ感。
「あ…あの、も、もしかして落とし物ですか?」
「は、はい、そうなんです。
携帯をどこかでおとしてしまったようで……」
さすがに香りも良いね!」
「……そうだね。」
「えーーっと……スイーツのお店はどこなんだろう?
確か、梅林を突き抜けた向こうだって話だけど…
ちょっと見て来るね。」
私が返事をするのも待たずに、絵美はさっさと歩き出してしまった。
私はそんな絵美の後ろ姿をみつめながら、これからどうしたものかとその場に立ち尽す。
(……なんで来ちゃったんだろう?)
目の前に広がる数え切れない程の梅の木には、薄桃色の花が咲きほこり、その光景は圧巻だ。
まだこんなに寒いというのに、花を咲かせるなんて、梅の花って変わってる……
私の手が自然に梅の枝に伸び、力を入れそうになった所ではっと気付いた。
(だめじゃない、枝を折るなんて……)
苦笑しながら私はゆっくりと梅林に足を踏み入れた。
梅の花に囲まれていると、なんだか落ちつく。
そのことが奇妙に感じられた。
実は私は梅の花にいやなイメージがあった。
若い頃から何度も見た夢……
まわりは梅の花…そして、そこにいるのは着物を着た人々。
平安時代みたいな感じ。
みんな楽しそうにして、梅の枝を髪に挿してる人が目立つ。
突然の怒号と悲鳴にそんな和やかな雰囲気が一転。
そして、目の前が赤に塗り潰されて………
私は飛び起きる。
全身が汗にまみれ、飛び出しそうな心臓……
そして、恐怖と絶望感……
友達に話したらそれは前世の記憶なんじゃないかって言われたけど、前世なんてよくわからないもの、そう言われてもピンと来ない。
とにかく、そんなことから梅の花が怖くなった。
近付くとなにか悪いことでも起きそうな…そんなことを考えてしまって……
なのに今日は来てしまった。
絵美と一緒にここに来るのは、本当はゆかりのはずだったんだけど、ゆかりに急な用が出来て、泣き付かれた私が代わりに来てしまったというわけだ。
(普段なら、それでも断るんだけど……
でも、不思議と今日はそこまで頑なに断る気がしなかった。
つまらないことにこだわるなってことだったのかもしれないな。
だって…ここ、けっこう気持ち良い場所だもん。)
そんなことを考えながら歩いていると、下を向いて落ち付かない素振りで動き回ってる人がいた。
何かを落としたような様子だ。
「あの……」
「え……?」
顔を上げた男性の顔に、私はずっと忘れてたときめきを感じた。
特別な美男子というわけじゃないのに、まるで一目惚れでもしてしまったようなドキドキ感。
「あ…あの、も、もしかして落とし物ですか?」
「は、はい、そうなんです。
携帯をどこかでおとしてしまったようで……」
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