273 / 761
side 野々村美咲
4
しおりを挟む
*
「本当にこんな所でええのか?」
「え、ええ……
ここだと遅くまで開いてますし、長居しやすいですから……」
お店を出る時、こっそりとKEN-Gさんにお話したいことがあると言って、いつものファミレスで落ち合うように頼んだ。
私は帰るふりをして一人で先にファミレスに向かい、KEN-Gさんは美幸さんとお家が近いから、美幸さんを送り届けてからまた戻って来られることになった。
「それで……
話というのはあの指輪のことじゃな?」
「そうなんです!
KEN-Gさん、あれをどう思われましたか?」
「あれは、シュウがひかりにプレゼントしたものに間違いない。
ひかりとシュウが出会ってから五周年のパーティをした時に、シュウがひかりにプレゼントをしてな……」
「それは、シュウさんがここあさんに頼んで選んでもらったもんなんですよね?
ここあさんもそれを気に入って…ひかりさんと仲良くなれるようにとの想いを込めて、ご自分は同じデザインのルビーの指輪を買われた……」
「野々村さん……さすがに詳しいのう……
その通りじゃ。」
KEN-Gさんは私の言葉に目を丸くしながら、大きく頷かれた。
「それで、あの指輪は…シュウさんがひかりさんにプレゼントされたものに間違いないんですね?
私は文章で読んだだけで、実物を見たわけじゃないですが、見た瞬間にそのことが思い出されて……」
「あぁ、まさにあの指輪じゃったよ。」
「やっぱり……!」
実物をご覧になったことのあるKEN-Gさんがそう仰るんだから、間違いない。
私の身体の中を、ぞくぞくするような感動が駆け巡った。
「でも……どうしてあの指輪が……
ひかりさんは、ある時、ポケットに入ってるのに気付いたものの、どういう経緯で手に入れたものかは記憶がないようでした。」
「……おそらく、二人の愛の強さがそんな奇蹟をもたらしたんじゃろうなぁ……
そうとしか考えられん。
二人の記憶は、門を開くエネルギーに変換されて消えてなくなった。
それでも、シュウとひかりは本能的になにかを感じている。
いや、二人が巡り会えたこと自体がその証なのかもしれん。
二人の間には、それほど深い絆があるんじゃ。
二人の心は記憶を失う時にも必死でそれに抗ったのかもしれん。
その強い力が、あの指輪をこの世界に引き寄せたのかもしれんな……
野々村さん!二人をまたあの頃のようにしてやろうな!
協力を頼むぞ!」
「は、はいっ!」
KEN-Gさんに突然手を握り締められ、私はびっくりしながら頷いた。
「本当にこんな所でええのか?」
「え、ええ……
ここだと遅くまで開いてますし、長居しやすいですから……」
お店を出る時、こっそりとKEN-Gさんにお話したいことがあると言って、いつものファミレスで落ち合うように頼んだ。
私は帰るふりをして一人で先にファミレスに向かい、KEN-Gさんは美幸さんとお家が近いから、美幸さんを送り届けてからまた戻って来られることになった。
「それで……
話というのはあの指輪のことじゃな?」
「そうなんです!
KEN-Gさん、あれをどう思われましたか?」
「あれは、シュウがひかりにプレゼントしたものに間違いない。
ひかりとシュウが出会ってから五周年のパーティをした時に、シュウがひかりにプレゼントをしてな……」
「それは、シュウさんがここあさんに頼んで選んでもらったもんなんですよね?
ここあさんもそれを気に入って…ひかりさんと仲良くなれるようにとの想いを込めて、ご自分は同じデザインのルビーの指輪を買われた……」
「野々村さん……さすがに詳しいのう……
その通りじゃ。」
KEN-Gさんは私の言葉に目を丸くしながら、大きく頷かれた。
「それで、あの指輪は…シュウさんがひかりさんにプレゼントされたものに間違いないんですね?
私は文章で読んだだけで、実物を見たわけじゃないですが、見た瞬間にそのことが思い出されて……」
「あぁ、まさにあの指輪じゃったよ。」
「やっぱり……!」
実物をご覧になったことのあるKEN-Gさんがそう仰るんだから、間違いない。
私の身体の中を、ぞくぞくするような感動が駆け巡った。
「でも……どうしてあの指輪が……
ひかりさんは、ある時、ポケットに入ってるのに気付いたものの、どういう経緯で手に入れたものかは記憶がないようでした。」
「……おそらく、二人の愛の強さがそんな奇蹟をもたらしたんじゃろうなぁ……
そうとしか考えられん。
二人の記憶は、門を開くエネルギーに変換されて消えてなくなった。
それでも、シュウとひかりは本能的になにかを感じている。
いや、二人が巡り会えたこと自体がその証なのかもしれん。
二人の間には、それほど深い絆があるんじゃ。
二人の心は記憶を失う時にも必死でそれに抗ったのかもしれん。
その強い力が、あの指輪をこの世界に引き寄せたのかもしれんな……
野々村さん!二人をまたあの頃のようにしてやろうな!
協力を頼むぞ!」
「は、はいっ!」
KEN-Gさんに突然手を握り締められ、私はびっくりしながら頷いた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜
甲殻類パエリア
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。
秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。
——パンである。
異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。
というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。
そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。

果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

王命って何ですか?
まるまる⭐️
恋愛
その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。
貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。
現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。
人々の関心を集めないはずがない。
裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。
「私には婚約者がいました…。
彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。
そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。
ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」
裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。
だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。
彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。
次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。
裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。
「王命って何ですか?」と。
✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。

明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる