267 / 761
side シュウ
1
しおりを挟む
*
「今日は、大河内さんの予約が入った。
……席には、ジョーと……慎二に入ってもらう。」
「えっ!お、俺ですか!?」
突然の指名に、慎二は目を丸くして聞き返した。
「あぁ、そうだ。」
「あ、あの…シュウさん……僕は……」
当然といえば当然の事だが……純平が不安そうな顔つきで俺をみつめる。
「純平……おまえには昨日から裕輔の指導を頼んだはずだ。
しっかり頼むぞ。」
「……わかりました。」
口ではそう言いながらも、純平が本心から納得していないのは、その顔を見ればすぐにわかる。
しかし、客を好き嫌いで選べないことくらい、純平にもわかっているだろうし、なによりも、ひかりにはこれ以上深入りしないのが純平のためだ。
「シュウさん、ほんまに俺が大河内さんのテーブルに?」
「あぁ…
よろしく頼んだぞ。
大河内さんだからといって緊張することはない。
いつも通りで良いからな。」
「は、はい!
頑張ります!」
慎二はこっちに来てから雇った奴で、ホスト歴もまだそれほど長くはない。
そんな奴が、自分の代わりに入るとなれば、純平が面白くないのも理解出来る。
だが、慎二は新しいとはいえ売上げは純平よりも上だ。
ちょうど、昨日新人が入って来たから、そいつの指導を純平に任せるということで、俺は二人の関係がまずくならないように気を配ったつもりだった。
*
「シュウ……」
ミーティング後、俺はジョーに声をかけられた。
「どうした?」
「純平のことなんだが…なにかあったのか?」
「あぁ……特にたいしたことじゃないんだが、大河内さんがちょっとな……」
俺は、ジョーに事情を話した。
「そういうことだったか……でも、ちょっと残念だな……」
「残念って……どういうことだ?」
「シュウ…気付いてないはずないだろ?
あいつ…ひかりちゃんのこと気に入っててさ……
なんだか、最近明るくなっただろ?
積極性も出て来たし……良い傾向だと思ってたんだ。」
「……ジョー……
それは別にひかりのおかげじゃないだろ?
あいつが仕事に目覚めただけじゃないか?」
「……え?」
「純平には期待してる。
だから、俺も裕輔のことを任せたんだ。」
そう言い残して、俺は足早に歩き去った。
これ以上、ジョーと話していると、言いたくない事まで話すことになってしまいそうだったから。
「今日は、大河内さんの予約が入った。
……席には、ジョーと……慎二に入ってもらう。」
「えっ!お、俺ですか!?」
突然の指名に、慎二は目を丸くして聞き返した。
「あぁ、そうだ。」
「あ、あの…シュウさん……僕は……」
当然といえば当然の事だが……純平が不安そうな顔つきで俺をみつめる。
「純平……おまえには昨日から裕輔の指導を頼んだはずだ。
しっかり頼むぞ。」
「……わかりました。」
口ではそう言いながらも、純平が本心から納得していないのは、その顔を見ればすぐにわかる。
しかし、客を好き嫌いで選べないことくらい、純平にもわかっているだろうし、なによりも、ひかりにはこれ以上深入りしないのが純平のためだ。
「シュウさん、ほんまに俺が大河内さんのテーブルに?」
「あぁ…
よろしく頼んだぞ。
大河内さんだからといって緊張することはない。
いつも通りで良いからな。」
「は、はい!
頑張ります!」
慎二はこっちに来てから雇った奴で、ホスト歴もまだそれほど長くはない。
そんな奴が、自分の代わりに入るとなれば、純平が面白くないのも理解出来る。
だが、慎二は新しいとはいえ売上げは純平よりも上だ。
ちょうど、昨日新人が入って来たから、そいつの指導を純平に任せるということで、俺は二人の関係がまずくならないように気を配ったつもりだった。
*
「シュウ……」
ミーティング後、俺はジョーに声をかけられた。
「どうした?」
「純平のことなんだが…なにかあったのか?」
「あぁ……特にたいしたことじゃないんだが、大河内さんがちょっとな……」
俺は、ジョーに事情を話した。
「そういうことだったか……でも、ちょっと残念だな……」
「残念って……どういうことだ?」
「シュウ…気付いてないはずないだろ?
あいつ…ひかりちゃんのこと気に入っててさ……
なんだか、最近明るくなっただろ?
積極性も出て来たし……良い傾向だと思ってたんだ。」
「……ジョー……
それは別にひかりのおかげじゃないだろ?
あいつが仕事に目覚めただけじゃないか?」
「……え?」
「純平には期待してる。
だから、俺も裕輔のことを任せたんだ。」
そう言い残して、俺は足早に歩き去った。
これ以上、ジョーと話していると、言いたくない事まで話すことになってしまいそうだったから。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎
sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。
遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら
自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に
スカウトされて異世界召喚に応じる。
その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に
第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に
かまい倒されながら癒し子任務をする話。
時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。
初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。
2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。

モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる