220 / 761
side シュウ
2
しおりを挟む
*
「おまえ…良い所知ってるんだな。」
「そうでしょう?
ここは、けっこう穴場なんですよ。
地元の知り合いに聞いたんです。」
「へぇ……」
眼下に広がる煌びやかな夜景をみつめながら、ふと、頭をよぎるのはあいつの顔……
おどおどしたようなひかりの顔だ。
(俺がそんなに怖いのか?)
あいつを苛めたこともなければ、それほど親しく話したこともないっていうのに、どうしてあいつはあんな怯えた目をする…?
いつもなら気持ちがほっとする夜景をみながら一服しても、俺の気持ちはなかなかまとまらなかった。
(……今夜の俺は、やっぱりどうかしてる。)
「……良太。
そろそろ戻ろう。」
「はい。」
*
「……そうか…」
店に戻ると、ついさっき皆帰ったとのことだった。
ひかりが帰ったすぐ後で、美咲さんがやっぱり自分も帰ると言い出し、それなら…と大河内さんも帰ると言い出して、高見沢大輔だけが俺を待つといっていたらしいが、迷惑だと思ったのか、大河内さんが説得して連れて帰ったとのことだった。
「ずいぶん遅かったけど、どこ行ってたんですか?」
純平はどこか不機嫌な顔つきで、俺にそう訊ねた。
「あぁ…あの子を送りに行って、それからちょっと時間を潰してた。」
「どうして、わざわざひかりちゃんを送ってなんて……」
「純平…わからないのか?
タカミーさん…ずっと、俺の右腕にへばりついてただろ?」
「……あ……
そういうことだったんですか……」
純平がほっとしたような笑みをのぞかせた。
「……純平……おまえ、あの子のことが好きなのか?」
「好きって……そんなんじゃないですよ。
ただ、気の合うお客さんっていうか……」
純平は俺から目を逸らし、落ちつきをなくして口篭もる。
本当にわかりやすい奴だ。
純平があの子にひかれてることなんて、丸わかりだ。
ふと、数年前、初めて出会った時の純平を思い出した。
あの時のあいつは、今とはまるで違ってて……そして、俺が話しかけた時にもこんな風に目を逸らし、俯いて小さな声で答えた。
(あの時のおまえなら、あの子とぴったりだったかもしれないな…)
俺の心に小さな苛立ちと悪意のようなものを感じ、そのことがさらに俺を苛立たせた。
「おまえ…良い所知ってるんだな。」
「そうでしょう?
ここは、けっこう穴場なんですよ。
地元の知り合いに聞いたんです。」
「へぇ……」
眼下に広がる煌びやかな夜景をみつめながら、ふと、頭をよぎるのはあいつの顔……
おどおどしたようなひかりの顔だ。
(俺がそんなに怖いのか?)
あいつを苛めたこともなければ、それほど親しく話したこともないっていうのに、どうしてあいつはあんな怯えた目をする…?
いつもなら気持ちがほっとする夜景をみながら一服しても、俺の気持ちはなかなかまとまらなかった。
(……今夜の俺は、やっぱりどうかしてる。)
「……良太。
そろそろ戻ろう。」
「はい。」
*
「……そうか…」
店に戻ると、ついさっき皆帰ったとのことだった。
ひかりが帰ったすぐ後で、美咲さんがやっぱり自分も帰ると言い出し、それなら…と大河内さんも帰ると言い出して、高見沢大輔だけが俺を待つといっていたらしいが、迷惑だと思ったのか、大河内さんが説得して連れて帰ったとのことだった。
「ずいぶん遅かったけど、どこ行ってたんですか?」
純平はどこか不機嫌な顔つきで、俺にそう訊ねた。
「あぁ…あの子を送りに行って、それからちょっと時間を潰してた。」
「どうして、わざわざひかりちゃんを送ってなんて……」
「純平…わからないのか?
タカミーさん…ずっと、俺の右腕にへばりついてただろ?」
「……あ……
そういうことだったんですか……」
純平がほっとしたような笑みをのぞかせた。
「……純平……おまえ、あの子のことが好きなのか?」
「好きって……そんなんじゃないですよ。
ただ、気の合うお客さんっていうか……」
純平は俺から目を逸らし、落ちつきをなくして口篭もる。
本当にわかりやすい奴だ。
純平があの子にひかれてることなんて、丸わかりだ。
ふと、数年前、初めて出会った時の純平を思い出した。
あの時のあいつは、今とはまるで違ってて……そして、俺が話しかけた時にもこんな風に目を逸らし、俯いて小さな声で答えた。
(あの時のおまえなら、あの子とぴったりだったかもしれないな…)
俺の心に小さな苛立ちと悪意のようなものを感じ、そのことがさらに俺を苛立たせた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜
甲殻類パエリア
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。
秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。
——パンである。
異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。
というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。
そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる