赤い流れ星3

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
179 / 761
side 和彦

しおりを挟む




 「や~だ!
アッシュったら!」

 高見沢大輔は、飲み会をしようと言い出した割には酒にはとても弱かった。
 美幸や野々村さんと変わらない程度だ。
 彼の頬はすぐに赤くなり、声は大きくなるしやたらと笑い、そして、やたらと俺にべたべたする。
さっきからは、腕を組んで俺の隣から離れない。



 「……タカミーよ。
 今日はえらくご機嫌じゃないか。」

 「あったりまえじゃない!
 女は好きな男の傍にいられることが、一番幸せなんだから。」

そう言うと、高見沢大輔は焦点の少しおかしくなった瞳で、俺をじっとみつめた。



 「えーーっ!ま、まさか……
タカミーさん、兄さんのことが好きなの!?」

 「そうよ、大好き!
わざわざこっちにお店出したのだって、いつかカズに会えるかもしれないって思ったからなんだもの。」

 「そ、そんな……だ、だって、兄さんは……男だし……」

 「そうよ。
カズが男で,私が女。
だから、問題ないじゃない!?」

 「え……あ、そ、そっか……」

 美幸は心配そうな顔で、俺の方をちらりと見た。
あいつは真面目だから、本気で心配しているのかもしれない……



「美幸ちゃんも早く好きな人をみつけなさいよ!
 恋は素敵なものよ!
 女をどんどん綺麗にしてくれるわ。」

 「なぁ~るほど…!
だから、野々村さんはそんなに綺麗になったんだね!」

アッシュが,そう言って意味ありげな笑みを浮かべた。



 「なに?
 野々村さんも好きな人がおるのか?」

 「えっ!?わ、私…そんな……」

 慌てて俯く野々村さんとは裏腹に、大河内さんは顔色一つ変えずにそう言った。



とんだたぬきおやじだ。
 俺達は,皆、野々村さんとのことを知っているというのに……
なんだか、その一言が無性に俺の癇に障った。



 「それは残念だなぁ…
野々村さんに好きな方がいらっしゃらないなら、俺が立候補しようかと思ってたのに……」

 俺がそう言うと、野々村さんは驚きに満ちた顔を上げ、丸い目をまっすぐ俺に向けた。



 「まぁーーっ!
 私という者がありながら、よくもそんなことをぬけぬけと…!」

 「い、いたっ!」

タカミーに思いっきり腕をつねられ、俺は思わず声を上げた。
ふと移した視線の先に、大河内さんの驚いたような顔を見た途端、俺はその痛みを忘れて思わずほくそ笑んだ。

 
しおりを挟む

処理中です...