赤い流れ星3

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
176 / 761
side 和彦

しおりを挟む




 「へへ……」

しばらくすると、照れ臭そうな顔をして、おかしな笑い声を漏らした美幸が居間に戻って来た。



 「おぉ、美幸、可愛いじゃないか。
とてもよく似合っておる!」

 「そうだね。
うん、良いよ。
 美幸ちゃん、これからはそういう格好してた方が良いよ。」

 皆、美幸の服装を誉めてくれた。
それは、お世辞ではないとは思う。
いつもの美幸に比べたらずっと良い感じだ。

ただ、順番が悪かった。
 別人化した野々村さんを見た後だから、それほど大きな驚きはない。
これが逆だったら、皆、もっと驚いただろうに……



「美幸、良いじゃないか。
そういう明るい色の方がずっと良いぞ。」
  
 俺も兄として一言誉めてやった。



 「本当!?」

 「あぁ、本当だ。
そういう服を着るなら、あと何着か買ってやろう。」

 「えっ!マジ…!?」

 美幸はそう言って、滅多に見せることのないような明るい笑顔を見せた。



 (……現金な奴だ…)

 呆れてしまったが、妹の嬉しそうな顔を見たら、やっぱり悪い気はしない。
 近々、美幸を買い物に連れて行ってやろうと俺は考えた。




 「あ、タカミーさんかも…!」

その時、また玄関のチャイムが響き、美幸は素早く走り出した。
ふと時計を見ると、ちょうど高見沢大輔と約束した時間だった。



 「こんばんは~!」

 野太い声と共に、目がちかちかしそうな原色の服をまとった高見沢大輔が部屋に入って来た。



 「いらっしゃい。」

 「カズ~!今日はお招きありがとう~!!」

 「わっ!」

 突然感じた力強いハグに、俺は思わず短い声を出してしまった。
その様子をアッシュとマイケルはにやにやしながら…そして、他の三人は驚いたような顔でみつめている。



 「は、ははっ……
こちらこそ、お忙しい中、こんな所まで来て下さってどうもありがとうございます。
あ、高見沢さんはそこへどうぞ。」

 俺は出来るだけ冷静に、なおかつよそよそしく応対した。



 「もうっ!
 私のことは、タカミーって呼んでちょうだい!」

 「あ…はい、では、タカミーさん…」

 「『さん』はいらないの!
タカミー!」

 「……タカミー…」



……俺は苦笑するしかなかった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

処理中です...